経営する運送会社が破産手続きに入る直前に、会社の資産およそ1800万円を隠した疑いで社長と取締役が逮捕された。
借金を帳消しにして出直すために、全ての資産を差し出すはずの破産手続きを妨害した、容疑者のあきれた言い訳とは…
【動画】容疑者直撃「一切ないです。本当に」破産手続き前に資産1800万円隠したか 隠した金で再起を図るために犯行か
■約1800万の資産隠しか 厳罰が科される「詐欺破産」

7月25日、破産法違反の疑いで逮捕されたのは、大阪府高槻市の運送会社「グッドビリーヴ」の社長・小野良信容疑者(54)と取締役・関 靖彦容疑者(48)。
小野容疑者と関容疑者は2022年、経営する「グッドビリーヴ」が破産手続きをする前に、会社の資産およそ1800万円を隠した疑いがもたれている。
2人はなぜ、破産手続きの前に財産を隠したのか。
関 靖彦容疑者:小野(容疑者)と2人で、そろそろ(会社が)つぶれるなって時に、新しい会社で生きていこうということで、小野がお金を用意してくれた。そのお金が会社(グッドビリーヴ)のお金だった。
この行為は「詐欺破産」と呼ばれる悪質な犯罪で、厳しい刑事罰を科している。
※10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、または併科(破産法 第265条)
今ある資産を債権者に分配することで、払いきれない借金を帳消しにする破産手続きは、何よりも公平さが求められ、破産者、破産法人が得をすることは許されないのだ。

容疑者2人は逮捕される前、関西テレビの取材に対し、こう話していた。
Q.財産隠しの疑惑がありますが事実ですか?
小野良信容疑者:いや、違います。(会社が)つぶれるとは思っていなかった上でお金をいろいろなもので動かしたりとか。決して、自分の中に入れようとしたのではなくて。
関 靖彦容疑者:グッドビリーヴの金だとは思っていないので、新しい会社のお金だと思っていました。財産隠しとは当時、思っていなかったので。
60億円近い借金を踏み倒して、刑事事件に発展した中堅企業の倒産劇。
その当事者が語った背景と“わが身良ければ”の思惑とは。
■“架空の取引”をでっちあげ…隠した資産の行方は

小野良信容疑者:僕は僕なりの制裁を受けて、あの時の僕とは全く違う人生を生きているので、できればみんな、許してもらえないけど、そっとしてほしいなと。
こう話すのは、25日に破産法違反の疑いで逮捕された小野良信容疑者。
事件の舞台となったのは、小野容疑者が社長を務め、全国にビジネスを展開していた中堅の運送会社「グッドビリーヴ」。
ピーク時の年間売り上げ高は100億円を超えていたものの、経営はうまくいかず赤字続きで、銀行融資の返済が滞るようになったのだ。
そんな中、小野容疑者は2022年8月、大阪地裁へ会社の破産手続きを申し立てた。
破産すると債務が帳消しになる代わりに、会社が保有する財産を全て差し出し、債権者に等しく分配するのが大原則。
そんな大原則を無視するような資産隠し。手口はこうだ。
まず、グッドビリーヴの金を関容疑者が経営する別の会社に送る。
この会社が事情を知らない第三者の運送会社を通して、小野容疑者が実質的に経営するまた別の会社との間に“架空の取引”をでっちあげる。
そして、この架空取引の支払いについて、最終的に小野容疑者の会社に支払われる際、現金で受け取ることで金の流れをうやむやにして、隠したのだ。
そして、隠した資産は、2人が設立した会社で新しい事業を立ち上げるのに使っていた。自分たちだけが再出発を図ろうとしていたということだ。
関西テレビの取材に対し、逮捕前の小野容疑者は何を語ったのか。
小野良信容疑者:財産隠しというか…隠してない。現実、僕はお金を持ってないし、見ての通り高級なものも身に着けてないですし。当時はなんかぐちゃぐちゃすぎて何か分からなかったんです。正直、いろいろなことが起こりすぎて。自分たちでも、どうにもならなかったです。
経営が悪化した混乱状態の中のことで、隠すつもりはなかったと主張。
金融機関などからの借金を少しでも減らすことより、自分たちだけがやり直すことを優先させた浅はかなたくらみについては…。

小野良信容疑者:その時に会社がまだ本当に破産するなんて決まってなかった時。現実、(金を)送った時は決まっていたかもしれないですけど、僕にしたら、最後のギリギリまで手があると思っていたので。
資産隠しは、破産申し立ての直前にもかかわらず、破産を避ける道があったかのような言い訳。
そして、小野容疑者に手を貸した関容疑者は…。
Q.破産法の詐欺破産に当たるという認識はありましたか?
関 靖彦容疑者:当時はなかったです。当時は自分もだめな話と思っていなかったんですけど、小野が用意したお金で事業を回すというスキームだったので。セーフだと思っていたんですけど。
「グッドビリーヴ」の資産だとは知らなかったと言うものの、関容疑者も役員だったはず。
結果的に、グッドビリーヴの資産を調査していた破産管財人に資産隠しが暴かれ、2人は25日に逮捕された。
警察は、2人が容疑を認めたかどうかについては明らかにしていないが、他にも財産を隠していないか、余罪についても捜査している。
グッドビリーヴが抱える負債60億円近くは、いまだに返済の目途が立っていない。
(関西テレビ「newsランナー」2024年7月25日放送)