幕末の福井藩士・橋本左内が2024年で生誕190年を迎えました。中学校で行われている立志式などで、左内が記した啓発録を唱和した人も多いのではないでしょうか。この啓発録を海外にも広めたいと、県内在住の大学教授が英訳本を完成させました。「英訳 橋本左内『啓発録』~自分を高める5つの心得~」この本に込められた思いを聞きました。
 
幕末の福井藩士・橋本左内は1834年に福井市で生まれました。左内は幼少期より学問に秀で、その広い視野が西郷隆盛にも影響を与え、明治維新から現在に至るまで、日本に大きな功績を残しました。
 
そんな左内の代名詞ともいえるのが、数え15歳の時に自らを戒めるために書いた「啓発録」です。そこには「稚心を去る」「志を立てる」など5つの柱となる心得が記されていて、今も多くの人の心に刻まれています。
  
この啓発録を海外に広めたいと英訳本を完成させたのは、福井県立大学学術教養センターの森英樹教授です。
 
福井県立大学学術教養センター・森英樹教授:
「初めて読んだのが高校の時だったんですね。これはすごいなと思いまして。14歳の少年がここまで書けるのかと驚きがあり、いつか訳して海外の人にも知っていただきたいなと」
 
言語学と英語学を専門とする森教授は、高校の頃に読んで感銘を受けた啓発録がずっと心の中にあり、2020年頃、満を持して啓発録の英訳に着手しました。
 
福井県立大学学術教養センター・森英樹教授:
「日本語の古文と英語の構造の言語的な違いを、どのように調和させるかが一番苦労したところですね」

また、日本語と英語のニュアンスの違いにも苦戦したといいます。海外の出版社に英訳を見せたところ「稚心を去る」の英訳で勧められたのは「Act your age(年齢にあった振る舞いをせよ)」。日常会話ではこの言い方が普通ですが、森教授が訳したのは、「Eliminate immaturity(未熟さを捨てる)」です。原文の格調高さを残すため、あえて少し硬い表現にしました。
  
福井県立大学学術教養センター・森英樹教授:
「こだわりだすと一日そのことで頭がいっぱいになっていました。悩んでいて、ある瞬間に、ふとこれしかないっていうフレーズが頭に浮かぶことがあったんですね、そういった瞬間が楽しくて」
  
一番こだわったのはタイトルで、「KEIHATSUROKU」としました。森教授は「橋本左内が後世に残した日本語の古典ですので、それをタイトルとして残したかったというか、残すべきだと思った」とその思いを語ります。
 
また、表紙から中身が分かるように、サブタイトルには「自分を高める五つの心得」と付け加えました。森教授は、この英訳本を通して、橋本左内あるいは啓発録の存在が世界に知れ渡るようになればと願っています。
 
最後に、森教授はこんなことも…「左内は(英語にも)非常に優れていたと思いますので、私の拙い英語を読んだ時に、どのように指導してくださるかも気になるところです」と楽し気に話していました。

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