私たちの生活にも大きな影響を与える物流の「2024年問題」。4月1日からトラックドライバーの残業時間に「年間960時間」という上限が設けられた。労働環境の改善が目的だが、さまざまな影響が懸念されている。

物流の「2024年問題」とは?

トラックドライバーの労働時間が短くなるため、運べる荷物が減ってしまう。
また、残業時間が減れば残業手当が減るため、収入が減ることによるドライバーの離職が起こり、それによってドライバー不足に拍車がかかかる、安定的に荷物が運べなくなる…という悪循環が起こるのが「2024年問題」だ。

懸念される今後の輸送能力の不足
懸念される今後の輸送能力の不足
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政府は、何も対策しなければ輸送能力が2024年に14%、2030年には34%不足すると試算している。

1日からの長時間労働の規制強化を見据えて、県内の運送会社は、ドライバーの残業時間の削減や荷主との交渉を進めてきた。

天童市の企業が取り組む「2つの対応策」

山形・天童市に本社を置く村山運送。1日から残業規制の対象となるドライバーは320人いるが、この年度替わりに、さっそく「規制強化の影響」があった。

村山運送 運輸事業部・後藤健一さん:
この3月末に退職した人がいる。退職して違う業界にいった。「給料が下がってしまうのではないか」と…

まさに「待ったなし」の状況が続く2024年問題。村山運送では対策として、大きく2つのことに取り組んできた。

スマートフォンから「状況報告」を義務付け
スマートフォンから「状況報告」を義務付け

1つは、ドライバーの労働状況の「正確な把握」。
ドライバーの一人一人に専用のアプリを入れたスマートフォンを持たせ、「移動中」「積み込み」「待機」など、“いま何をしているのか”報告を義務付けている。

これによって作業が効率化し、残業時間の短縮はもちろん、長時間労働の原因となっている「荷物の待ち時間」も正確に把握できるようになった。

村山運送 運輸事業部・後藤健一さん:
ドライバーの意識が変わった。1時間くらい、全員平均して残業時間を短縮できている。正確にデータ化されることによって、これを元に荷主に現状を正確に把握してもらい、今後の残業時間短縮につなげていきたいと思っている

値上げ交渉を続けるも、荷主企業によって温度差があるという
値上げ交渉を続けるも、荷主企業によって温度差があるという

そして2つ目は、ドライバーの収入を減らさないことを見据えた「荷主企業との交渉」。
村山運送では、2年前から配送料の値上げを交渉してきた結果、2割~3割の荷主企業が応じた。しかし、まだまだ応じてくれない荷主企業が多いのが現状。

村山運送 運輸事業部・後藤健一さん:
まだまだ荷主によって温度差があると感じている。前向きに取り組んでくれるところもあれば、まだそうでない荷主も多い。時間が短くなって、休みが増えて、仕事の効率が良くなった、「だから給料が下がった」…では、ドライバーも続けていけないと思う

村山運送は、今後も理解を求めながら粘り強く荷主企業との交渉を続けていきたいとしている。

消費者も考えるきっかけに

この問題は他人(ひと)事ではない。
特に山形は農業県で、あと2カ月もすれば特産のサクランボのシーズンを迎える。
2024年問題によって、新鮮なサクランボ・自慢の果物をおいしい状態で県外へ届けられなくなる、そんなおそれも出てくる。

この問題は運送業界だけの問題ではなく、私たち消費者も「自分のこと」として考えることがスタートラインではないだろうか。

(さくらんぼテレビ)

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