物流に大きな影響を与える「2024年問題」。
2024年問題とは、4月から働き方改革関連の法律によりトラックやバス・タクシーの運転手の時間外労働が制限されることに伴って発生する問題のことです。

運転手の中でもこれまで特にトラック運転手の長時間労働は大きな課題とされてきました。

具体的にどのように変わるのかというと、トラック運転手には時間外労働の上限がこれまでありませんでしたが、4月1日から年間960時間が上限となります。

1日の拘束時間は最大16時間から15時間へ、退勤から次の出勤までにとらなければいけない休息時間も8時間から基本11時間と変更になり、働く事ができる時間が少なくなります。

運転手にとって負担は軽減されるのですが、労働時間が減ると一人当たりの走行距離が短くなり届けられる荷物が減ることが懸念されています。

野村総合研究所の試算(2023年1月発表)では、何も対策を取らない場合、岩手県内で運搬できる荷物は2015年に比べると2025年は69%、2030年には60%に減ってしまう見込みです。

こうした状況を防ぐため県内ではどういった対策が取られているのか。

国土交通省の調査(2021年度)によると、現状運転手の仕事時間の約3割が車の運転以外の業務にあてられています。

例えば積み下ろしの作業や荷物を待つ時間など、さらにその多くがサービスで行うのが習慣化されています。

岩手県トラック協会の高橋嘉信会長は、こうした運転以外の業務について荷物の依頼主「荷主」と交渉していくことが必要だといいます。

県トラック協会 高橋嘉信会長
「本来積み込みは荷主の経費でやるが運送会社がやってしまっていた。これからは荷主さんのやる仕事、(もしくは)運送会社が無料でやっていた部分をお金をもらうようにする」

東北を配送エリアとする岩手県矢巾町の二葉運送では、積み込み作業について荷主に追加の代金の負担を提案していて、受け入れる企業もあるというが…

二葉運送 藤原修一社長
「そこまでは支払えないと言われることもあり、残念ながら仕事を断らざるを得ない状況にもなってくると思う」

作業の負担を経費でまかなう一方で、労働時間の削減にも取り組んでいます。

例えば宮城から青森まで荷物を運ぶとき、以前は1人の運転手が往復していましたが、岩手を中継地点として2人の運転手が分担することで車中泊せず日帰りで勤務を終えられます。

また業務の効率化を図った上で会社が出勤時間を細かく指定するようになりました。

運転手は働き方の変化をどう感じているのか。

二葉運送ドライバー 高杉清一さん
「時間の指示がなかった時は自由に来て自分の流れで出勤していたが、それでは労働時間が延びる。自分は楽になった。(休みの)時間を作れるようになって」

しかし労働時間が減ることで賃金も減ってしまうのではないかという心配もあります。

二葉運送ドライバー 高杉清一さん
「時間外労働や本数で賃金が変わる仕事なので、それが減ると自分に返ってくるのが少なくなるので心配」

賃金が下がれば人材流出につながり、さらに物流が停滞することも懸念されます。

二葉運送では今後も段階的に荷主と料金の交渉を続け運転手の環境を守ると話します。

二葉運送 藤原修一社長
「値上げのお願いを10したのであれば今回は3くらいしかできないが、何年かに分けようという会社もある。これからがスタートなので荷主さんにもお願いをしていく」

このほか、県内に関連する企業の取り組みとしては、北上市のキオクシア岩手に荷物を輸送する三重県のジャパンマテリアルという会社では、三重から岩手の約800キロの距離をトラックで輸送していましたが、3月から本格的に輸送量の20%を鉄道輸送に切り替えました。
距離が長い場合はトラックとは別の輸送手段をとるというのも有効です。

現場で働く人の労働環境の改善にたどりつくまでに現場で解決しなければいけない課題が多いという状況になっています。
今後も関連する企業が協力していくことや政府の支援などが求められます。

岩手めんこいテレビ
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