群馬県伊勢崎市にある2つの公園付近で8日、7歳から10歳の小学生ら12人が次々と犬に噛まれ5人が救急搬送された。
子どもらを襲ったのは2歳のオスの四国犬。
動物の生態に詳しい、アジア動物医療研究センターのパンク町田センター長に、四国犬の気質について聞いた。
飼い主にしか懐かない「ワンマンドッグ」
ーー四国犬はどういった犬種?
四国を原産とする日本の中型犬です。
本来は、“土佐犬”(※土佐闘犬とは異なる)と呼ばれていて、性格は「ワンマンドッグ」です。
飼い主ただ1人に慣れるため、ファミリードッグではなく、ペット向きではありません。
日本犬を飼育する人というのは、猟を行う人、あるいは、その犬種の保存に努める方が主だと思います。
そのため、四国犬は家族でペットにするような犬ではありません。事故を起こしやすい犬種と言わざるを得ないです。
ーー噛みつく力は強い?
日本犬の中ではそれほど強い方ではありませんが、弱くもないです。
ただ、世界のいろいろな犬種の中でも、よく人に噛み付く犬です。
四国犬は外見が狼に似ていることから「ニホンオオカミ」に間違えられることがありますが、学術的に狼との交錯は認められていません。
2歳は血気盛んな年ごろ
では、2歳のオスといったら人間ではどれくらいの精神年齢なのか。
ーー体調は130センチあったらしいが?
体長ではなく、鼻の先端からお尻の先までの“頭殿長”が130センチなのだと思います。
体長は80~90センチほどのはずです。
体長130センチだと、シェパードほどの大きな犬になってしまいます。
ーー2歳のオスの性質は?
やっと独り立ちする大人になったという感じです。
2歳だと精神年齢は人間でいうと、20~25歳ぐらいで、血気盛んな頃です。
ケンカも攻撃も覚えたてといった年齢です。
これからいろいろ失敗をして、自分より強い相手なのか、自分でも捉えることができる獲物なのかを見極めていく時期です。
“狩り”を想定した練習
時速60キロに達する走りを活かし、イノシシ狩りなどで活躍する四国犬。
今回の事件は、「四国犬として生きるため」の修行の一環だったのではないかとパンク町田氏は話す。
ーー小学生ら12人を襲っているが?
四国犬は“猟犬”なので、動くものに興味を持ちやすいというのが一番の原因だと思います。
おそらく獲物を取るための練習をしていたと考えます。
要するに遊びなのですが、遊びと言っても、人間がイメージするような楽しく仲良くといった感じではなく、“四国犬として生きるため”の修行です。
こうした練習を重ねることで、「これくらいの大きさの動物には勝てる」とか「この大きさからは逃げた方が良い」などといったことを学んでいきます。
今回も狩りを想定した学習だったと思います。
まだ自分に自信がなく、勝てそうな相手を選んだら、それが子供だったということです。
今回の件で、この犬は子供たちに対して自信を持ってしまいました。
今後大人にも勝てると思うようになれば、大人にも躊躇なく噛みつくようになると思います。
ーー犬はリードを着けていなかったが、注意点は?
遠くに見知らぬ犬がいたら、出来るだけ距離を取ることが一番大事です。
しかし近寄ってくるようだったら、そばに棒があったらそれを振るのが良い対処法です。
逃げる時は背中を見せてはいけません。
背中を見せて逃げると、犬は本能行動として追いかけて襲ってくるので、背中を見せて走るのはダメです。
四国犬は動きがとても速くて危ないです。
走ったら60キロ近く出るので、人間は到底逃げ切れません。
そもそも中型の日本犬は、イノシシやシカ狩りに使う動物なので、人間に襲い掛かったら当然危ないです。
また、犬はどの種類でも40キロ近くは出るので、背中を見せて走れば逆に追いかけて来て危険です。