2月3日、愛知県名古屋市で起きた電動キックボードのひき逃げ事件で、名古屋市の男が逮捕された。

男は道路を渡ろうとした男性に後ろから衝突し、鎖骨などを折る大ケガを負わせた上、救急車を呼ぶことなく立ち去っていた。

無免許での運転とみられるが、電動キックボードを利用する際のルールや事故を起こした場合の罰則などについて、アトム法律事務所・松井浩一郎弁護士に聞いた。

過失運転致傷罪に加え「救護・報告義務違反」

ーー電動キックボードによる事故の罰則は?

電動キックボードにはさまざまな種類がありますが、自動車運転処罰法や道路交通法上の罰則の対象になります。

運転手に過失があり、人にケガをさせてしまった場合は、自動車運転処罰法上の「過失運転致傷罪」に問われる可能性があります。

 罪に問われれば7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金となります。さらに、「無免許運転」も加わった場合は、10年以下の懲役となります。

松井浩一郎弁護士
松井浩一郎弁護士
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また本件のように、その場から走り去ってしまった場合は、道路交通法上の「救護義務違反」と「報告義務違反」が加わり、刑が重くなります。

時速20キロ以上は免許が必要

男が乗っていたのは最高速度・25キロの電動キックボード。
しかし、調べてに対して「運転免許がいるとは知らなかった」と話しているという。

名古屋市で起きた電動キックボードの衝突事故
名古屋市で起きた電動キックボードの衝突事故

ーー今回の事件をどう見る?

最高速度が時速20キロ以上出る電動キックボードは、免許が必要な一般原動機付自転車として扱われるので「無免許過失運転致傷罪」や「無免許危険運転傷害罪」に問われる可能性があります。

法律を知らなかったという言い訳は通用しないので、しっかりと交通ルールを確認してから利用する必要があります。

(イメージ)
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ーー時速20キロ以上出ているかがポイント?

電動キックボードの種類によって、運転免許証が必要だったり、ヘルメットの着用が努力義務だったりとルールが変わってきます。

ただ、相手にケガをさせてしまっている場合は、どんな乗り物であれ、すぐに警察に連絡する義務があります。

今回の事案は、「ひき逃げ」に該当します。
人と接触した場合、ケガを負わせたか否かに関わらず警察に報告する義務があるので、それを怠った点で道路交通法違反になり、罪が重くなります。

刑事事件に「過失相殺」はない

事故にあった男性は自らの注意不足も認めているというが、松井弁護士は、民事訴訟と違い、刑事事件では1割でも加害者側に過失があれば「過失運転致傷罪」が成立すると話す。

ーー被害者も「横断歩道がない場所で急に飛び出してしまった」と落ち度を認めているが?

刑事事件では、過失相殺という概念は適用されません。

運転していた側の過失がゼロであれば「過失なし」となりますが、1割でも過失があれば、被害者に落ち度があったとしても刑事事件上は、「過失運転致傷」に問われます。

これは民事と違う点です。

(イメージ)
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一方、量刑の面では、被害者の落ち度や事故の状況などは判断材料の1つとなる場合があります。

事故を起こした後、救急車や警察を呼んで救護した場合は、罰金刑や不起訴という処分で済むことが多いです。