小学生くらいの男の子2人が、避難所の階段に腰掛けて、フウフウ言いながらカレーを頬張っている。トッピングは、ほうれん草にゆで卵、ウインナー2本。味はどうかと聞かれると、ちょっと恥ずかしそうに、「おいしい」と答えた。
ここは、能登半島地震の被災者が集まる石川県能登町の避難所。地震発生から3週間となる1月22日、避難所でカレーを振る舞っていたのは、歌手のMISIAさんだ。
ライブ終了後被災地にかけつけ
MISIAさんは、石川県津幡町にある県森林公園の一角で「MISIAの森」をオープンするなど、石川にゆかりがある。21日まで福井県内で行われたライブツアーを終えて能登に入った。
MISIAさん自ら、カレーに福神漬けをトッピングする係を担い、被災者や支援者一人一人にカレーを渡していく。「ファンです」という女性は、MISIAさんと握手し、思わず涙をこぼしていた。カレーと一緒に、ミカンも受け取ると、「ミカンもらって、感激するね…」と泣き笑いだった。
MISIAさんは、気さくに写真撮影や握手に応じる。握手の際には、相手の目を見ながら、わざわざ調理用のビニール手袋を外して、素手でしっかりと握手していた。子どもには「何歳？」と声をかけ、「4歳」という言葉が返ってくると、満面の笑顔になった。
3週間もの避難生活を送っている被災者や、被災者を支援するため活動を続けている人たちも、温かいカレーとMISIAさんの気さくな姿に、皆笑顔になっていた。
現地のニーズから炊き出しを
ただ、MISIAさん自身は、どういう形で被災地の力になれるのか、考え続けていたという。
MISIAさん：どんなカタチでみなさんの力になれるのかをずっと考えていて…石川出身の親しい方が現地にいて、現地の方とコンタクト取って今一番必要なものをしっかり聞いて下さって。炊き出しが必要だという話を伺って、それだったら私もお手伝いできるかなということで、きのう福井公演でしたので、そのままライブ終わってまっすぐ石川の方に向かって、みなさんの今の現状を知って寄り添えたらなと思ってきました。
しっかりと現地のニーズを聞いた上で行ったカレーの炊き出し。そのメニューにも、MISIAさんの心配りがあった。
MISIAさん：今日はカレーを炊き出して出したんですけど、お野菜がなかなか新鮮なものを取りにくいと言うことでたくさんホウレンソウを入れたりしたのを、とてもうれしいとおっしゃっていたのが印象的で、あたたかいご飯を「あったかい！」と言ってらっしゃって。
MISIAさんたちは、断水で食器を洗うのが難しいという現地の状況をみて、使い捨ての食器で食事を提供していた。そのことについて、「実際に見ないとわからないなことも多かったなと思いました」と感想を話した。
被災地支援には寄付など色々な形があるが、実際に現地に行って直接支援するというのは、簡単な事ではない。現地に赴き、被災者に温かい食事と笑顔を届けたMISIAさんは、被災者に対して、「本当に不安の中で過ごしていらっしゃると思うんですけど、まずは体が元気であるということが、今を乗り越えるための力になると思います。心と体を健やかに。頑張ってという簡単な一言よりも、今は元気でいてくださいって」と思いを寄せた。
その上で、「被災地が今何を必要としているのかというのを、全国のみなさんで学んでいって、しっかりと助け合う形ができたらなと思います」と話した。MISIAさんの活動は、被災地のニーズに寄り添う支援を皆が考えるきっかけになるかもしれない。
MISIAさんは、能登町だけではなく、同じく被害の大きかった珠洲市の避難所でも炊き出しを行い、被災者とのサインや記念撮影にも気軽に応じたという。
（写真提供：リズメディア）
