広島の「がんばる」を応援するシリーズ企画です。
今月3日から9日の「障害者週間」に合わせ「障がいのある人と社会をつなぐ」新しい試みに挑戦する女性を取材しました。

草木染めの手袋など様々な手づくりの雑貨に、広島の広報誌を点字にするとき廃棄される紙を使って作られたバッグ。これらの商品はすべて、障がいのある人が作ったものです。
例えば、こちらの個性的な柄のポーチは広島市内の作業所で作られています。

ダイナミックな絵をあっという間に描き上げる人、コツコツゆっくり描く人。
描くのに使うのはテントや横断幕に使われる生地の端材。
こうしてできた作品を裁断し、職員が縫っていくと…おしゃれで頑丈なポーチに。
同じものはない世界に一つだけのオリジナル商品です。
こうした県内の福祉サービス事業所で生まれた商品を社会に発信しようと活動する女性がいます。佐々木恵理子さん。

【こんこん・佐々木恵理子さん】
「自分の中のパワースポットみたいな感じなんですよ。物としてとてもかわいいなと思って。皆さん楽しみだったり得意の中で作られたものが物に落とし込まれているという過程がとても魅力的だなと思っています」

佐々木さんは障がいのある人が作った物の中から自分も本当にほしい物を買い付けて販売。
大阪や名古屋などの店舗と取引し卸売りを担当したり、イベントなどで、小売りもしています。独自のウェブサイトでの販売も。お客さんに「こんこん」と気軽にノックしてほしいから「KonKon」と名づけました。心がけているのは作り手の魅力の発信です。

【佐々木さん】
「必ず裏にQRコードを付けるようしていて、ここを読み取ってもらうと私が取材した記事に飛ぶようになっています。本当に伝えたいところは作っている方たちがどういう人だよっていうところなので、ここを入り口に皆さんのことを深く知りたい人は知れるようにしていて、いろんな人に知ってもらうことで皆さん生きやすい社会につながっていったらいいなと思っています」

もともとは福祉の世界とは無縁だった佐々木さん。夫の転勤で、北海道にいたとき、障がいのある人が作ったブローチと出会います。

【佐々木さん】
「見学に行かせてもらって、そこで初めて障がいのある方のアート作品に触れてものすごく感動した」

その感動が忘れられず、夫の次の転勤先だった広島で、事業所の職員として働き始めました。

【佐々木さん】
「そこで本当に人って魅力的なんだっていうのを皆さんに教えてもらいました」

一方で感じたのは、職員の仕事の忙しさ。物を作っても売ることまで考える余裕がないのが実情でした。

【佐々木さん】
「だったら私が事業所にいるよりも外に出て、私自身が感じた魅力を伝える方が社会全体で見たときに貢献出来るかなと思って」

取引をする事業所では働く人たちをしっかり取材し、商品と一緒に魅力を発信します。

【第一もみじ作業所・古川大介さん】
「うちがこういう商品とかいろいろ作っているが発信が弱い、コンコンさんにかかわっていただくことで、こっちが予想もしなかったところから反応があるというのはすごい驚きをもって、自分たちのことなんだけどすごいねぇみたいな感じで受け取っています」

この冬、佐々木さんは新たな挑戦をはじめようとしていました。手にしていたのは障がいのある人のアート作品です。

「めっちゃすてきできすね」
「これワニなんですって。なんかめっちゃおもしろいなと思って、私とは全然違う見方で世界を認識されているのかなとか、わくわくしちゃうんですね」

障がいのある人のアート作品、それを使って新たに始めようとしているのは、「医療現場へのアートレンタル」です。
コンコンが仲介に入り、事業所の障がいのある人が描いたアート作品を医療施設へ貸し出しそのレンタル料が障がいのある人のもとへ工賃として届くという仕組みです。貸し出し先を医療施設にしたのにも理由がありました。

【佐々木さん】
「一人でも多くの障がいのある人がもっている「病院が嫌い」という気持ちを和らげて病気の早期発見につなげられたらすごくうれしいなと思います」

障がいのある人は病院が苦手な人が多く、佐々木さんは、施設で働いていた時なかなか病院へ検査に行きたがらなかった仲間を末期のがんで失う経験をしていました。
アートレンタルは、月単位のレンタル料で貸し出し、3か月に1度交換するシステムにする予定です。

【佐々木さん】
「交換していく中で、障がいのある方が自分の作品を見に、仲間の作品を見に医療現場に足を運ぶきっかけを作ることを目的とした事業になります」

作品は、普段からアートを扱う第3者の目で厳選しました。
選ばれたこちらの作品を描いた男性は…
廿日市の作業所でおよそ10年描きつづける秋保和徳さん。

【くさのみ作業所・秋保和徳さん】「どれにしようかニャー」
「選ばれると思っていなかったので本当にうれしいと自分で驚いています。選んでもらえれば僕も絵を描いた意味があると思うので」

細かな表現が特徴のこちらの作品。描いたのは白石裕則さん

【白石裕則さん】「世界の輪」
「絵が大好きなんです。素敵なたくさん、もっともっとたくさん絵を続けたい」

みんなのやりがいにつながっています。
今週医療アートレンタルを知ってもらうための展示会(「こんこんのアートレンタルって?展」)が始まりました。

【上田タイジさん作「みんなの仕事場」】
【板村英治さん作「タイトルなし」】
【岡本美乃里さん作「かわいい風船」】

【訪れた人は】
「こんなに素敵な絵を描くんだなとか、本当にアーティストだなというのがわかって今胸がいっぱいですね」
「この絵に感動するのは、きっとこの絵が素晴らしいからであって、レンタルを通じて不特定多数の方にどんどん広がっていくのはすごくいい」

【佐々木恵理子さん】
「まずは作品を楽しんでいただく機会になればいいなと思っています。おいしいごはんを食べたらおいしかったよとか素敵なものを見たら素敵だったよと紹介したくなると思うが、私にとってはそれは福祉施設さんで本当に素敵な場所だし、面白い人たちがたくさんいるのでその商品だったり作品を通じて知ってほしいなと思っています」

テレビ新広島
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