岩手県で手作りマスク買取りと無料配布のプロジェクトを開始
7都府県だった緊急事態宣言が対象地域を全都道府県に拡大するなど、感染が広がる新型コロナウイルス。感染者数は4月17日12時時点で、国内感染者数9148人。死亡者数192人に上っている。
17日、政府がすべての世帯に2枚ずつ配布する布製マスクの配達が東京都内で始まったが、全国で唯一感染者が確認されていない岩手県で、とある画期的な取り組みが行われている。
岩手県一関市で、市民が手作りしたマスクを市が買取り、それを希望する市民に無料配布するという取り組みを4月7日から始めているのだ。
「みんなのマスクプロジェクト」と銘打った一関市の取り組みは、国内のマスク需要増加に伴い、マスクが入手困難になっていることから開始されたという。
買取り対象は、市民(個人)のみで、マスク1枚につき150円(税込)で買い取ってくれる。
マスクの仕様は、4段のプリーツタイプ、縦9㎝×横17㎝程度の大人用で、洗って繰り返し使用できる耐久性があるものとなっている。
素材は、未使用の綿素材を2枚以上重ね、ポリエステルなどの化学繊維は不可。色や柄は問わない。
持ち込む場所は、一関保健センター(健康づくり課)または各支所保健福祉課で、土日を除いた午前10時~午前12時と午後1時~午後3時の1日2回に分けて、4月24日(金)まで受け取ってくれる。そして、持ち込みの際は、本人の印鑑と振込先のわかるもの(預金通帳など)を持参する必要がある。
そして無料配布は、同じく一関保健センター(健康づくり課)または各支所保健福祉課で、土日を除く午前10時~午後3時まで(※17(金)と20(月)は休み。21(火)は午前9時から)。
1人2枚までの配布で、なくなり次第終了としている。
この取り組みは、マスクが手に入らず困っている人だけではなく、自宅待機をして時間を持て余している人たちにとっても有効な時間活用の場になるかもしれない。
なぜ一関市はこの取り組みを始めたのか?そして、岩手県に感染者が出ていないことに何か秘策はあるのか?市の担当者にお話を聞いた。
咳エチケットの補助がプロジェクトの目的
ーープロジェクト開始に至った経緯は?
市内で布マスクを作成し、販売している個人や団体がいるので、その方々を活用できないか話題となり、このプロジェクトが始まりました。
ーープロジェクトの目的は?
市民の皆様が手作りしたマスクを市が買取り、市民の皆様に無料で配布し、咳エチケットの補助として使用していただくことを目的としています。
ーーなぜ買取りの期限は24日まで?
事業開始から概ね3週間としたもの。配布は、買取り終了後なくなり次第終了となります。
ーーどのようにして買取りの金額設定は決めた?
市内の産地直売所などで販売している手作りマスクの価格を参考にしたものです。枚数も1人2枚なのは、使用する際に2枚が必要と考えたものです。
買取り・無料配布の目標枚数は、全体で6000枚程度。各支所(現在市内の8か所で実施中)で1日50枚(予備+5枚)を見込み、14日間配布することで算出したものだという。
続いて、7日から実施しているこの取り組みの買取りや配布の現状についても聞いてみた。
無料配布は会場によっては行列ができた
ーーどれくらいの人が買取りに来ている?
14日時点で、計1249枚の買取りをしました。買取りの上限はなしで、金額でいうと計18万7350円。計68人が参加。1日の買取り最高枚数は557枚。一般の女性の方が多く、買取りの行列はできていません。
計算上の想定は1日440枚としていたので、目標の6000枚とすると、もう少しご協力いただきたいところです。急な取り組みであったにも関わらず、多くの方に協力いただいたことには感謝したいです。
ーーどれくらいの人が無料配布に来ている?
14日の配布枚数は前日までの買取り枚数で決定した500枚。会場、その日の配布枚数や希望者によって違いはありますが、10分から長くて1時間位で配布が終了します。会場によっては行列ができています。もらいに来る方は男女とも同じくらい(の人数)で、年配者の方が多いようです。
ーーこのプロジェクトについて市民の反響は?
「購入したくても購入できないので、助かった」などの声をいただいております。マスクが手に入らない状況にあり、必要としている方に使っていただければ幸いです。(ただし、咳エチケットの補助としてしかお使いいただけませんが…)
無料配布に関しては、「市民の関心が高く、希望者が多いこともあり、行列ができることで密の状態や混乱もありましたが、配布方法を工夫することで、解消されてきております。」と想定以上の反響があったようだ。
全国で唯一感染者ゼロの岩手県。特別な対策は?
そして、岩手県と言えば、4月17日12時時点で、東京都の2595人をトップに、各都道府県の感染者が増え続けている中、全国で唯一感染者ゼロの県だ。
岩手県一関市では、4月5日に隣接する宮城県気仙沼市で新型コロナウイルスの感染者が出たことを受け、業務時間中に1日3回行っている消毒作業に加え、翌日の業務開始前に市役所の庁舎や市の施設の一斉消毒を行ったことが、地元のニュースで取り上げられていたが、その他にも
岩手県ならではの対策はあるのだろうか?
ーープロジェクトとは別に、新型コロナウイルスに対して、一関市役所で行っていることは?
市民等への市長メッセージによる周知、市のHPや市のFacebook、一関市のコミュニティ放送FMアスモ、屋外広報マストなどによる注意喚起。水道料金等の支払い期限の延長など地域経済対策の実施などです。
ーー感染者ゼロの秘訣は?
特に秘策はないと思います。今後も感染者が出ないことを願います。
岩手県で感染者がゼロなことを伺うと「不思議です!!」と語る担当者。
岩手県も緊急事態宣言の対象となったが、手作りマスクで助け合う県民性に加え、もしかしたら、全国唯一の感染者ゼロの肩書きが、一人ひとりに無意識のうちに注意を促しているのかもしれない。
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