自民党執行部は全議員に対し“金帰火来”の地元帰りの自粛を要請

新型コロナウイルスの感染拡大を受け7都府県に発令された史上初の「緊急事態宣言」。期間は5月6日までで、安倍首相は「人と人との接触を最低7割、極力8割削減」するよう国民に呼びかけた。

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感染収束に転じるのか、感染爆発に向かってしまうのかが懸かった1ヶ月間の戦いが始まった。国民の多くが在宅勤務やテレワーク、週末や夜間の外出自粛などを求められる中、永田町も例外ではなく、政権与党の自民党も議員の移動制限などの対応に迫られた。

自民党は9日、全所属国会議員に対し「新型コロナウイルス感染拡大防止について」と題した要請を出した。この中ではまず、議員に「地元選挙区の代表として、選挙区に入って地元の要望などを聞いて状況を把握」することを求めた。一方で「選挙区に入れば選挙区民からも誤解を受けかねない」と指摘した。

通常、自民党などの議員は「金曜の夜に地元の選挙区に帰り週末は地元活動をしっかりと行い火曜に東京に戻ってくる」いわゆる“金帰火来(きんきからい)”という生活を送ることが多い。この“金帰火来”には週末に地元の声を吸い上げ国政へと届けるという役割があり、同時に選挙区の足場固めになることから、極めて重要視される活動の形態だ。

しかし政府の史上初の「緊急事態宣言」発令に伴い、東京など対象地域の国民には、外出自粛や地方への移動を控えるよう要請されている。これは週の約半分を東京で過ごす金帰火来の国会議員にとってもあてはまる話だ。そこで自民党は「緊急事態措置を実施する期間はインターネットやスマホなどを活用して地元とコミュニケーション」をとるよう要請し、議員が週末に地元の選挙区に帰ることを自粛するよう求める異例の要請を行ったのだ。

党本部職員は出勤と在宅の交代勤務 秘書はシフト制・テレワークを求められるも…

そして国会議員の活動を支える自民党本部の職員や議員秘書らの業務も例外ではない。自民党本部は、職員を2班に分け出勤と在宅勤務の交代勤務とする通達をだした。また、出勤する職員には毎日出勤前に自宅で検温することを義務づけ、さらに持病を持つ人、妊娠中の人、65歳以上の高齢者と同居中の人、同居家族に既往症等がある人、義務教育の子どもや未就学児を養育している人に関しては在宅勤務とするとした。

衆参の自民党秘書会は8日、安倍総裁(首相)・二階幹事長の要請として「各事務所においてはシフト制やテレワーク等の工夫により、議員会館への出勤者数を極力最低限に抑えるように」と通達した。

ただ、議員秘書の業務は、上司に当たる国会議員の裁量に委ねられる面が大きいため、どの程度出勤時間が削減されるのかは各議員事務所によって異なる。各議員の対応力が試されると言えそうだ。

衆議院本会議は採決以外の議事は2交代制 議場の風景は一変へ

さらに衆議院は、10日の議院運営委員会の理事会で感染拡大防止の観点から、

1、議案の採決は全議員出席

2、採決以外の議事は定足数(総議員1/3)に留意しつつ、各会派で出席議員を調整

3.採決の際、討論がある場合、討論終局後10分後に採決を行う旨、議長が宣告し、その間に全議員が議場に集まる

以上の3点を申し合わせた。

これを受けて自民党は二階幹事長と森山国会対策委員長の連名で「緊急事態宣言下における本会議出席について」との通達を出した。その内容は、当面の本会議における採決以外の議事は、議席番号の奇数と偶数に分けて出席することとするというものだ。

これにより全議員は、議席番号奇数のAグループと、偶数のBグループに分けられ、採決時以外は、このどちらかのグループだけが本会議に出席する。全自民党議員に配布された名簿には、安倍首相の名も例外なく載っており、Bグループに振り分けられていた。野党など自民党以外の党も同様の措置をとることになる。

次の衆議院本会議は14日に予定されているが、多くの議員でごった返す議場内の風景は一変することになりそうだ。史上初の「緊急事態宣言」は、国民生活だけでなく、議員の活動と国会内の風景にも大きな影響を与えている。5月6日までの約1ヶ月間、一人一人が接触機会を削減し、不要不急の移動を制限することで、多くの国民の生命を守ることが求められている。国民を代表して政治を担う責務の一方で、国民の模範でもあるはずの国会議員にも例外ない対応が求められていることは言うまでもない。

(フジテレビ政治部 門脇 功樹)

門脇 功樹
門脇 功樹

フジテレビ 報道局 政治部