新型コロナウイルスの感染対策として政府がテレワークを推奨したこともあり、今、在宅勤務やリモートワークを実施している企業は多いだろう。

そして、業務のやりとりが電話やメール、チャットツールなどで行われることから、上司や部下、取引先などに対して、対面以外で“何かを伝える”ことの難しさを改めて痛感している人もいるかもしれない。

中でも一番難しいのは「怒り」ではないだろうか。伝え方を間違えれば、その後の人間関係に影響しかねず、自分自身の首をしめてしまう。

そこで、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の小尻美奈さんに、在宅勤務やリモートワークをする中での“怒りの伝え方”について聞いた。

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会・小尻美奈さん
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会・小尻美奈さん
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メッセージを送る前に確認を

例えば、部下が決められた締め切りまでに業務を遂行しなかった場合。

上司はカッとなって「締め切り過ぎているぞ」や「締め切りも守れないのか?」などの強い言葉でメッセージを送ってしまうかもしれない。

――メールやチャットツールの場合の怒りの伝え方を教えてください。

対面であれば、非言語コミュニケーションといって表情や声のトーンでその人の怒りが伝わりやすくなります。しかし、メールは文字だけの情報のため対面で怒る場面と伝わり方が違ってきます。加えて、反射的にカッとなってメッセージを送ることは余計なトラブルを生みます。

メールやチャットツールで怒っていることを表現するときは、文字だけの情報で伝えることになります。まず、最初に怒りが湧いてきても、少し立ち止まって冷静になりましょう。

感情的になっていると、自分の思い込みや先入観、決めつけなどで勝手に怒りを暴走させてしまうことがあります。一旦冷静になることで、自分は相手に何を伝えたいのかを整理することができます。

怒っている場合は文面を見直すという判断ができないかもしれないですが、その後のトラブルなどを生まないために、どんな時でもメッセージを送る前に必ず確認してください。


――メッセージを送る前に確認する、以外は何かありますか。

怒りを自分のリクエストに変換して伝えることです。部下が締め切りを守らなかった場合の怒りは、部下を責めるような言葉ではなく、「決められた期日までに業務を終えて欲しい」、「もし守れないときは、前日の退社時間までに報告してください」など、リクエストの形にする習慣をつけましょう。

また、場合によってはなぜ困るのか理由も合わせて伝えます。「みんなからの信頼を失くすと思います」といった主観より、「期日までに終えてもらわなければ、他部署へお詫びの連絡をしなければいけません」といった事実を伝えるようにしましょう。

――メールだけではなく、電話も同じでしょうか?

電話の場合も、売り言葉に買い言葉など反射的に反応しないことです。電話をしていて怒りだしそうだったら、「少し時間をいただけますか」と言って一旦電話を切ってください。

冷静になってから、折り返すといいでしょう。その場で言い返したり、怒ったりしたら、自分のリクエストが伝わらず後悔する可能性もあります。時間を置く、ということがポイントです。


オンライン上のルールをあらかじめ決めておく

――他には何かありますか?

オンライン上でやりとりをする上で、チームの中であらかじめルールを決めておくといいでしょう。

人にはそれぞれ「許せること」と「許せないこと」が違います。業務時間外は対応するかどうか、対応するのであれば何時まで対応できるのか人によって許容範囲は違います。あらかじめチームでルールを決めておくことで無駄なイライラに振り回されなくなります。

また、オンライン上のやりとりでは、誰かのメッセージに対して、常に返信やリアクションをするべき!と思っている人もいれば、内容を見て判断するという人もいると思います。そうした考えの違いで「返信がなくて読んでいるかわからない!」と些細なイライラを生むことになります。

例えば、「○時までに返事をする」や「○○に関しては必ず返事をする」など、チーム全体で「守ってもらいたいこと」をチーム内で共有して、イライラにつながりにくい仕組みを作っていくことも大切です。


今は新型コロナウイルスの影響もあり、多くの企業で急遽、リモートワークや在宅勤務になったところも多いだろう。こうした留意点は、社内のコミュニケーションにおいても大切なことではあるが、リモートワークなど非対面の状況になるとより重要になってくる。

今後、こうした働き方が増えていく可能性がある中で、オンライン上での人間関係の築き方もしっかり身に付ける必要があるのかもしれない。

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プライムオンライン編集部
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