「イッキ飲み」にドン引きする人が約8割・・・

年末年始が目前に迫り、何かと飲み会に出席する機会も増えるこの頃。

羽目を外してお酒に飲まれないようにくれぐれも注意して欲しいが、キリンホールディングス株式会社は11月28日、「イッキ飲みに関する実態調査」を発表した。対象:全国の月に1回以上飲酒する20~50代の男女計500名 2019年10月30日〜11月1日にインターネット調査)。

かつては居酒屋などで多く目にする機会もあった「イッキ飲み」だが、世間の抱くイメージは今や大きく変化しているようで、 「あなたはイッキ飲みをしている様子を見ると、ドン引きしますか」という設問では、「とてもする」が17.0%、「する」も23.7%で、「どちらかというとする」の39.1%を含めるとドン引きする人の割合は実に8割以上を占めた。

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このようなネガティブなイメージは「イッキ飲みをする人」に対しても同様で、「イッキ飲みを進んでする人ってどんな印象」という設問に対し、「時代遅れ」という回答が54.2%になったほか、「恥ずかしい」が30.0%、「ダサい」が27.2%などと、総じて厳しい声が並ぶ。

さらに、「イッキ飲みをする『恋愛対象の相手』に対してどう思う?」という設問でも、「カッコ悪い」が58.8%、「どちらかというとカッコ悪い」が32.4%となり、「どちらかというとカッコいい」の7.2%、「カッコいい」の1.6%を大きく上回る結果となった。

すっかり“過去の遺物”扱いの「イッキ飲み」だが、全く無くなったわけではないようだ。
「飲み会でイッキ飲みの現場をみたことがありますか?」という設問に対し、「頻繁にある」が10.2%、「時々ある」が52.2%と6割以上が「ある」と回答。年代別でみても、男性20代でも約5割があると回答した。

急性アルコール中毒の救急搬送者数は5年間で約3400人増加

さらに、こんなデータもある。
東京消防庁が管内で発生した、過去5年間の急性アルコール中毒による救急搬送者数の推移を示したデータでは、2014年(平成26年)から2018年(平成30年)にかけて、急性アルコール中毒搬送者数は14,303人から17,755人と、約3,400人も増加している。男性だけではなく、女性の数も上昇傾向にある。

出典:東京消防庁
出典:東京消防庁

そして年代別で見てみると、2018年(平成30年)のアルコール中毒による救急搬送者数を示したグラフでは、20代が8,320人に達し、30代の2,727人の3倍以上を記録しているのだ。

出典:東京消防庁
出典:東京消防庁

「イッキ飲み」などが原因で起こる急性アルコール中毒搬送者数は減るどころか増え続け、20代もまた高い数字を示している。

これは一体どういうことなのだろうか。今回の調査を行ったキリンの担当者に詳しい話を聞いた。

「飲酒についても多様性が重んじられる時代」

ーー「イッキ飲み」が及ぼす悪影響や危険について改めて教えて?

「イッキ飲み」をして短時間に大量のアルコールを摂取すると、血中アルコール濃度が急激に上昇し、酔っているとの自覚がないまま、脳の麻痺が呼吸中枢の延髄まで広がり、昏睡状態から死に至る危険があります。これが急性アルコール中毒です。イッキ飲みは命に関わる非常に危険な飲み方です。

ーー「イッキ飲み」が「時代遅れ」「ダサい」というイメージになった理由はどう分析している?

現代では飲める、飲めないといった体質に関わらず、自分のライフスタイルに合わせて、お酒との付き合い方を選ぶ傾向が強くなっており、飲酒についても多様性が重んじられる時代になっています。

そのため、同じようなスタイルで盛り上げるといった行為自体が時代にそぐわないと感じられるのかもしれません。

「適切な飲み方を教えてくれる人」の不在

ーーイッキ飲み=時代遅れというイメージが大きくなるも、一向になくならないのはなぜ?

若い人における飲酒スタイルの変化は着実に起こっているのではないかと推察しますが、一方で、「仲間で一体感を持ちたい」「場の雰囲気を盛り上げて楽しみたい」「ストレスを発散させたい」という気持ちなどは、お酒や宴会の好きな方々には依然として根強くあると思います。

また、一部の会社や大学などで、依然としてそのような飲み方が続けられているところもあるのかもしれません。

ーー男女ともに急性アルコール中毒で搬送された年代で、20代が突出しているというのはどうして?

若年層では、小中高時代に飲酒の危険性については学ぶものの、いざ飲め始める年齢になってからは適切な飲み方を実際に教えてくれる人が周りにおらず、知識不足になっていることが考えられます。

大学の文化祭でお酒が禁止になる学校も増えておりますし、就職してからも先輩が後輩を連れて飲みに行く機会が少なくなっているようです。

そのため例えば、自分の体質や適量を意識しつつ、食事と一緒に飲むことや水を合間に挟むなど、飲酒する際に守るべきルールを知らないまま、その場の雰囲気にのまれ、調子に乗って無茶な飲み方をしてしまうのではないか、と推測しています。

ーー印象として、会社の飲み会と若者の仲間内での飲み会では、イッキ飲みはどちらが多い?

飲酒にまつわる事故や事件が最近頻繁に報道されていることもあり、会社の公式行事としての飲み会でのイッキ飲みは、一昔前に比べると少なくなっていると思われます。

イッキ飲みの強要は「人権を無視した重大な犯罪」

若者の周りに適切な飲み方を教えてくれる人がいないのではという見立てだったが、「お酒の強要」についての知識不足もキリンの調査で明らかになった。
飲酒を強要し、急性アルコール中毒で死亡させた場合については、傷害致死罪や過失致死罪が適用される可能性があるが、「イッキ飲みの教養が罪になることを知らない人」は47.6%となり、半数近くに及ぶ。

ーーイッキ飲みの強要が罪に問われることを知らない人が2人に1人いる現状についてどう思う?

飲酒を強要し、酔い潰しを意図して飲み会を行うことは傷害行為であり、人権を無視した重大な犯罪
です。また、酔い潰れた相手を放置した場合にも刑法が適用されます。人の命にも関わる重大な行為であることを認識しない人が多いことは大変残念です。

このような飲酒の強要や泥酔者の放置が罪に問われる事実を広く知ってもらい、最終的には、世の中からこの両方をなくすことにつながればいいと思っています。

ーーでは、「イッキ飲み」に対して、どんな対策を取っている?

「アルコール・ハラスメント」が許されない行為であることを当社のホームページで紹介しています。また、忘年会・新年会などで飲酒の機会が多くなるこの時期、12月6日より「適正飲酒マナー広告」もTwitterで配信しています。

ーーその「マナー広告」の動画を制作した理由は?

弊社が実施したウェブ調査では、「非日常飲酒者」(全く飲酒しない人や公式な会合でお酒に口をつける程度の人)の割合は4割から5割程度、20代では半数を超えていました。この結果は小中高時代のお酒のリスク教育の影響に加え、社会的な飲酒機会の喪失なども影響していると考えられます。

一方で、日常的にお酒を飲む人は、お酒に対して関心度が高く、肯定的です。ですがそのため、危険性に対しての認識が低くなっているのではないかとも考えており、「イッキ飲み」などの飲酒によって救急搬送される人が減少せず、増加している傾向にあるのはそのためではないかとの仮説を持ちました。

今回の動画制作にあたっては、飲酒経験の浅い20代男女をターゲットに、敢えて不適切な飲酒のもたらす怖さ(「イッキ飲み」による急性アルコール中毒の発症と救急入院など)を描き、視聴者に強いインパクトを与えることにより、適正な飲酒(「スロードリンク」)が大切であることをしっかり伝え、実践するきっかけとしてもらうことを目指しました。


ーー最後に、これから忘年会などを迎える人に一言。

お酒は「自分にとって心地よい時間を過ごすため」のものです。自分に合ったお酒や飲み方、適量を知り、語り合いながら食事と一緒にゆっくり楽しんでいただきたいと思います。

そして、酒席ではお酒を飲まない人や飲みたくない人、体質的に飲めない人なども参加していることに配慮し、無理にすすめることはせず、個人のペースを尊重し、参加する方全員が心地よい時間をつくるよう心がけていただきたいと思います。

「イッキ飲み」の強要がもたらす悲劇は、楽しい酒席を一瞬で恐ろしい場に変えてしまう。年末年始を目前に控え、お酒でつい羽目を外してしまいがちな時期だが、自分の限界を過信しすぎることなく、時には他の人の勧めるお酒を断る勇気も必要だろう。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。