学校や幼稚園・保育園へ毎日元気に通い、1日も欠席しなかった児童や園児を称える「皆勤賞」

「自己管理がしっかりできて真面目に通っている」「元気の証」などのイメージもあることから、「皆勤賞」を贈られることに、子ども自身や親が誇らしく感じていることも多いのではないだろうか。

しかし今、この「皆勤賞」をやめる学校や園が出てきているという。

病気になったり体調が多少優れなくても、皆勤賞を目的に無理して登校・登園する子どもや保護者がいるためで、時代の流れとともに存続の是非が問われている。

こうした中、神戸市立夢野の丘小学校は今年の1学期を最後に皆勤賞をやめた。同校は、菊水、鵯越、夢野、東山の4小学校が統合して2009年4月に開校。これまでは学校としてではなく、クラスの担任教師が個々の判断で皆勤賞を贈っていたという。

なぜ今年になって皆勤賞を取り止めたのだろうか。夢野の丘小学校の校長に話を聞いた。

「休むことは悪いわけではない」を教える必要性を実感

ーー今回、皆勤賞を取り止めようと思った一番のきっかけは?

「休まないことがよいことで、休むことは悪いというわけではない」「無理をすることでかえって体調が悪化することがある」「休むことで、体力や気力が戻ってくる」といったことを小学生の時から教える必要性を感じたことがきっかけとなります。

ーー皆勤賞の存在が保護者、先生、児童に負担をかけていた側面はあった?

負担というより、目標にしている子はいました。

ーーこれまで保護者から廃止を求める声は?

ありませんでした。

ーー取り止めについて、保護者や児童にはどのように伝えた?

学校便りで通知したほか、PTA運営委員会でもお話しました。

ーーその際、先生や保護者の反応はどのようなものだった?

反応は特にありませんでした。子どもたちの中には、内心がっかりしている子はいたと思います。

ーー皆勤賞の取り止めで、現在までに出席率の変化はあった?

今のところありません。

ーー現時点での先生や保護者の声はどのようなものが多い?

教員は納得しています。保護者の思いは分かりません。

ーー皆勤賞に代わるものなど、もしあったら教えて。

こちらですが、ありません。

ーー今振り返って、皆勤賞はどのようなものだったと思っている?

「休まず、毎日登校したことを認めてあげたい」という気持ちから始まったこと、健康管理の大切さを伝えるひとつの手段だったと思います。



ちなみに、小学校を管轄する文部科学省に確認したところ、皆勤賞がどれくらいの数の学校で実施されているのかについてのデータはなく、国としての指針も存在しないという。
各学校の判断に委ねられているのが実情のようだ。

専門家「かつての勤勉さを支えてきたのが皆勤賞」

夢野の丘小学校が皆勤賞取り止めの背景として挙げた、「休まないことがよいことで、休むことは悪いというわけではない」という考え方は、現在の「働き方改革」の推進もあって社会全体で広がりつつあるのは確かだ。

一方で、皆勤賞が多くの児童や園児に与えてきた良い影響もあるはず。そこで、石川教育研究所代表の教育評論家・石川幸夫さんにも話を聞いた。

ーー皆勤賞を止めたりする学校などは増えている?

増加というほど増えてはいませんが、実際に廃止をした学校、園はあります

ーーそれはいつ頃から?

この5年ほどで目立つようになってきましたが、増加という広がりはまだみせていないと思います。

ーー皆勤賞廃止の背景として、親と学校でどちらの事情が大きい?

実際のところ、どちらともいえません。価値観の変化という点では、親側に皆勤賞廃止の考えが目立ち、無理をしてまで行く必要はないと考えているようです。

ーー皆勤賞があることのメリット・デメリットを教えて。

皆勤賞は、「遅刻、欠席、早退がない」という結果によるため、周囲に「健康、まじめ、誠実」という印象を与え、学生としての規範になると受け止められます。かつての勤勉さを支えてきたのが皆勤賞でしょう。

対して、多様化する時代の中、「無理をしてまで価値のある賞」ではないというイメージが、この十数年で増えてきました。また今は、「いじめ」「体罰」など、自分の意思に反して学校を欠席する場合があります結果、無理して学校に行くことはないという考え方が少しずつ広がり、学校の対応も難しくなってきています。

私見では、このような精神的被害を外部から受けて欠席した場合は、特例として判断すべきだと思います。

ーーこうした流れはこれから先も強くなりそう?

皆勤賞が見直される方向にいくかもしれません。

かつての「ゆとり教育」の批判から、教科書の改訂ごとに教科内容が増え、現在「学力新時代」を迎えています。その中で、努力、忍耐、協調性という、それまでの日本の教育の代名詞であったものが次第に姿を消していきました。

しかし2020年の教育改革で、情緒的スキル、「認知能力に対する非認知能力」の重要性が見直されたのです。現在、公立校だけでなく、広く民間教育においても、この非認知能力の指導をめぐって、論議が交わされ始めています。今の社会は単純に知識だけではなく、努力、忍耐、協調生、コミュニケーションなども必要だと変化してきているからです。

「休むべき時」とはどんな時か、その理解がまず必要では

ーー皆勤賞の廃止についてはどちらの立場?

反対の立場です。
学ぶことに魅力を感じたり、自分自身を高めようと考える子は、一日でも休むことに抵抗感を感じています。

今でも皆勤賞を狙っている子がいます。そして、皆勤賞を実際に取った子は、親にも、先生にも感謝の気持ちを述べています。健康のありがたさは肉体や精神にも及ぶため、周囲の支えがこの賞を与えてくれたと考えたのでしょう。

皆勤賞を取った子どもたちは、これが励みとなってその後、皆社会で活躍しています。

ーーでは、もし皆勤賞に代わるものをつくるとしたらどのようなものがいい?

皆勤賞に代わるものとして、ボランティアのように、学校や地域に対する貢献度に関する賞などあってもよいかと思います。

そもそも、皆勤賞は簡単に取れるものではありません。だからこそ価値があり、その後も本人を支える力となります。そのため、精勤賞(欠席日数が2〜3日など数日)のように細かく分けてもよいのではないでしょうか。成績も、皆勤賞も、自分の努力で得る、自分のための賞です。

ーー「休むべき時には休む」という考え方は、子どもの教育においていい影響を与えるのでは?

「休むべき時」とはどんな時か、その理解がまず必要です。私としては、この「休むべき時」を子どもたちに考えてほしいと思っております。その機会が得られるならば、この指導はとても意味のある教育的指導になるはずです。

そして、親の意識も「休むべき時」についてまちまちです。こうした問題は親にも投げかけられており、親や子どもを交えての話し合いも、それぞれが考えることにつながるため、実行する意味はあると思います。

「休まなければならない時には無理せず休む」という風潮と、皆勤賞を目標とする子どももいるという現実。どちらも理解できるだけに賛否あるだろうが、今後も議論を重ね、より子どもたちの教育に合った形になっていってほしい。