新たに開設された「はったつ外来」
新潟市中央区にある新潟南病院。
2018年6月から、小児科で未就学児童を対象に新しく開設された診療部門がある。
言葉を発することが遅れている子どもに、おもちゃや教材を使いながら、意思の疎通やコミュニケーションをより豊かにすることを目的とした「はったつ外来」がそれだ。
新潟南病院 小児科 山崎佐和子医師;
1歳半検診で行動や言葉の遅れを指摘された子どもから、年長でおしゃべりがまだ不明瞭である子どもまでを受けさせてもらっている。
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この日、小児科の医師・山崎佐和子さんの診察を受けたのは、新潟市に暮らす翔ちゃん(3歳)。
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新潟南病院 小児科 山崎佐和子医師;
集中した遊びとかはどうですか?
翔ちゃんの母;
家だと(うまくできない)…
新潟南病院 小児科 山崎佐和子医師;
そこが課題かなというところ?
翔ちゃんの母;
そこが課題ですね
新潟南病院 小児科 山崎佐和子医師;
翔ちゃんの場合は、発語・言語理解の遅れに加えて、知的な部分、双方に少し遅れがあるかなというお子さん。
知的障害がある翔ちゃんは、はったつ外来を受診して9か月になる。
新潟南病院 小児科 山崎佐和子医師;
ST(スピーチセラピスト)さんからの報告だと、結構表現の身ぶりができたとか、名詞の名前は結構理解が出てきた。言葉もちょっと出始めた。「ママ」とか。
翔ちゃんの母;
そうですね。「ママ」は最近出てきた。
翔ちゃんの変化には、山崎医師の診察と並行して行う療法が大きく貢献している。
新潟南病院 小児科 山崎佐和子医師;
言語聴覚士、STさんと連携しながら…。
おもちゃや教材を使い、はっきりした声と大きな身ぶりを交えて、翔ちゃんとコミュニケーションを図るのはST=スピーチセラピストと呼ばれる言語聴覚士。
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新潟南病院 小児科 山崎佐和子医師;
当院のSTは言葉の訓練以外に、関わり合いを遊びを通して指導している。
医師と言語聴覚士の連携が重要となる小児言語療法は、人が生まれて言葉を覚えていく過程を参考にしたもの。
聞こえていてもうまく言葉が出てこない子どもの症状に合わせ、言語聴覚士が言葉に身ぶりや表情を組み合わせて伝える。子どもが感情を身ぶりや表情で表せるように導き、その先に言葉でのコミュニケーションを目指す。
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例えば、翔ちゃんがカボチャのおもちゃに興味を持つと、言語聴覚士はすかさず…
言語聴覚士 放上清香さん;
おいしい!おいしいね。
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言語聴覚士 放上清香さん;
お子さんの気持ちとかタイミングに合わせて言葉をかけることで、今やっていることと言葉が結びつきやすくなる。
さらに重要なのが、療法を受ける子どもの保護者に参加してもらうこと。
新潟南病院 小児科 山崎佐和子医師;
お母さんが前向きにお子さんに関われるようになることが、子どもを伸ばすということで好循環を生む。よい回りということを大事に考えて支援させてもらっている。
翔ちゃんのお母さんは、はったつ外来を受診するまで、子育てに希望を持てずにいた。
翔ちゃんの母;
リハビリの前は、どうせやっても成長しないだろうと諦めていた部分が結構あった。
小児言語療法で翔ちゃんの成長を実感すると、お母さんの気持ちにも変化が…
翔ちゃんの母;
諦めないで(子育てを)頑張ろうと考えるようになった
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アメリカでのセラピー体験を地元に還元
障害のある子どもと家族に笑顔が増えたら…
新潟南病院の小児科ではったつ外来が始まったのには、内科医でもある副理事長の渡部裕さんの実体験があった。
新潟南病院 渡部裕副理事長;
第一には、私の息子がハンディキャップをもっている。
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ダウン症の息子を育てる渡部さんは、2005年に不整脈の研究をするため、息子が1歳の時から3年間をアメリカで家族と過ごした。
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新潟南病院 渡部裕副理事長;
私の息子がアメリカに行っていたときに、非常にいいセラピーを受けてきた。そうやって育っていく子どもの姿を見て、言語療法、スピーチセラピーが必要であると感じた。
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帰国後、新潟では小児言語療法を行う施設が少ないことを知った渡部さんは、副理事長を務める新潟南病院の小児科に、はったつ外来を開設した。
新潟南病院 渡部裕副理事長;
新潟に住んでいるからという理由でそういうことが受けられない。その子の本来持っている能力が伸ばせない。そういった現状が私にとっては耐えがたいこと。私が体験してきたことを出来るだけ地元新潟に還元したいと考えた。
翔ちゃんを診察する山崎医師は、翔ちゃんの成長を医師として正確にお母さんに伝える。
新潟南病院 小児科 山崎佐和子医師;
発語とかは、少しずつは伸びてきそう…。
翔ちゃんの母;
先生から言われると心強い。成長しているのかなという安心感はある。
山崎医師も3人の子育てをしているお母さん。
新潟南病院 小児科 山崎佐和子医師;
お母さんのしんどい気持ちに共感することはできる。
子育ての大変さを知る山崎医師は、小児言語療法が劇的な変化をもたらすものではないことも、家族にしっかりと伝える。
新潟南病院 小児科 山崎佐和子医師;
厳しいところもあるとは思うけれども、粘り強くやりましょう。
ある日、言語聴覚士が仕事の合間にミーティングしていたのは…
言語聴覚士・田辺洋子さん;
ぴったり合うような教材がすごく少ないので、手作りにならざるを得ない。
言語聴覚士が手作りした教材は、受診する子どもたちのより良い反応を引き出そうと、積み重ねた経験から発案したもの。
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(Q.子どもたちが興味を持ってくれたときはどうですか?)
言語聴覚士 放上清香さん;
うれしいですよね。
言語聴覚士・田辺洋子さん;
やったーです。
新潟南病院 渡部裕副理事長;
まずはその子自身、それからその両親、その子の家族皆さんが笑顔になって、その子と共にいい人生を歩んでいってもらいたい。そういうことの手助けが出来ればと思っている。
たとえゆっくりでも成長の可能性を見極めて引き出す。
家族の笑顔のため、未来を見つめ続ける人たちがいる。
(新潟総合テレビ)
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