福岡県議会の金銭授受疑惑で新たな告発です。
民主系会派で副議長を務めた新村元県議が、蔵内前議長に現金500万円を手渡していたと証言し、波紋が広がっています。
◆福岡県議会 新村雅彦 元副議長
「『私の公表が、悪しき文化のない県議会になることであれば』と切に願っています」
23日午前、民主県政クラブに所属していた新村雅彦元県議が金銭授受を告発する会見を開きました。
新村さんは2012年5月に副議長に就任しましたが、その前に、金銭にまつわるやりとりがあったことを明らかにしました。
◆福岡県議会 新村雅彦 元副議長
「私に指示したのは、すべて吉村敏男議員であります。吉村氏の方から『蔵内会長に』と名指しでしたけど、『蔵内会長に500万円用意しろ』というのを後日言われておりました。『ええ!』という感じはしましたけど、結局流れに乗ってしまったというのは、自分の弱さだというふうにも思っています」
当時のことをすべて手帳に書き残していたという新村さん。
副議長に就く直前の2012年4月9日に、福岡市・中洲の料亭で吉村氏と自民党の幹部3人を接待し、そこで蔵内前議長に金銭を渡す際の生々しいやりとりを明かしました。
◆福岡県議会 新村雅彦 元副議長
「確か午後6時くらいから始まったと思うんですが、蔵内会長が早めに来ていらして、ほかの方はいらっしゃらなかったので、その折に会長を連れて座って、もう『これですよ』なんて言いません。あうんの呼吸なのか、それでも茶封筒で包んだお金をお渡ししたというところです。蔵内会長は『うんうん』と言ったくらいで、別に言葉でああだこうだということはなかったと記憶しています」
これまで実名で告発したのは自民党にいた3人でしたが、新村さんはそれ以外にも闇が広がっていたことを初めて実名で証言しました。
◆福岡県議会 新村雅彦 元副議長
「民主県政県議団からも、副議長もそれから複数出ていることを考えれば、まったくそこで悪しき文化といいますか、『金銭のやりとりがなかった』とは言いがたいというのが私の感想です」
そんな民主県政クラブを長年率い、新村さんからも名指しされた吉村敏男元県議に、この会見の内容について直撃しました。
Q.『蔵内会長に500万円用意しろ』と指示したか。
◆吉村敏男 元県議
「いやいや、言ってない。言ってない」
Q.茶封筒に包んだ現金500万円を蔵内さんに渡したと、会見で公表されているが。
◆吉村敏男 元県議
「そこに立ち会ったわけでもないし、その茶封筒を見たわけでもないしさ。それはあんた荒唐無稽やね。第一、今の話でちょっと俺、嘘っぽいと思うのは、蔵内さんは、そういうふうに早く来る人じゃない」
同じく当時の民主県政クラブから2015年に副議長に就任した、原竹岩海県議は…。
◆県政PLUS県議団 原竹岩海 県議
「私の場合は、要求されていないから払う必要がないと思います。要求された場合は、誰かに相談をしたんじゃないかと思いますが。吉村さんから全くそういうことはなかったし、自民党からもなかったです」
こうした中、自民党の井上正文県議も重大な告発を行いました。
農林水産委員長に就任した2023年、ゴルフコンペを開くよう求められたといいます。
◆自民党 井上正文県議
「会派の当時幹事長だった中尾元副議長から『農林水産ゴルフコンペをやらないかんぞ』『蔵内相談役のところにゴルフコンペのお願いに行ってこい』というご指示をいただきました。私が負担した額というのはゴルフ場に関しては約40万円。それと、その後の夕食会。これは宿泊を伴うものでありましたけれども、こちらは領収書が見つかりましたので、71万4920円ですので。実質的に私が自己負担した額で言うと、80万円くらいだったと思っています」
一部は返金してもらったものの、16人で行ったゴルフコンペと食事代、宿泊代などを負担したと話します。
そして、この中には“自民党幹部5人組”が含まれています。
Q.その中に幹部の方5人がいますが、5人は負担をしていないのか。
◆自民党 井上正文県議
「そうですね、結果としてはお支払いはなかったです。今回は1回限りのことでいろいろ苦労しながらもやりましたけれども、今後はもうやりたくないと。それと同時に議員活動をやっていく上でこういうことがあるっていうことに対しては、非常に失望感を覚えました」
これについて“5人組”の1人で、新村さんの副議長時代には議長を務めた松本国寛県議に直撃しました。
◆自民党 松本国寛県議
「あれだけ『みんなで委員会を支えていこうね』って、僕、農林水産委員会だからね。まあそういうふうにみんなで話し合って頑張っていたんだけど、どういうことでああなったのかっていうのは驚いています。」
Q.金銭授受については否定されると
◆自民党 松本国寛県議
「ありませんよ、僕は」
中尾正幸前副議長は「農林水産委員会のゴルフコンペをしたいと相談があった」「蔵内会長の日程をおさえるのが厳しいので、私が日程を調整しました」「招待を受けましたのでゴルフ代宿泊代に見合うお包みを渡しました」とコメントしましたが、金額については明らかにしませんでした。
最初の告発者である吉松源昭県議は、「百条委員会の設置が決まったことで、関係者の告発はさらに続くはず」と話します。
◆吉松源昭県議
「百条委員会に呼ばれて証言を求められる。そこでは嘘がつけないという中で、呼ばれて本当のことを話さなくちゃいけないのであれば、先んじて自分から記者会見しようという人が出てくるだろうということは、効果として期待していたところなんで、その効果がさっそく出ているんだと思っています。彼らがいつも言っていたのは、『これは蔵内氏が立て替えてくれている分だから』とか『蔵内氏が預かって支払うから』ということで、常に蔵内氏に渡すということで説明を受けていました。そういった意味でも、中心人物はいつも名前は蔵内氏が出てくるわけですから、ここはしっかりと説明を責任を果たしてもらわなくちゃいけないと思っています」
新村さんは、「蔵内前議長が会見を開く前に告発をしておきたかった」と話します。
◆福岡県議会 新村雅彦 元副議長
「いつの日か蔵内議長に対して『私があんたにやったろうが』ということを申し上げるつもりでずっといたんですが。8月くらいでしたか、『匿名の人から金が渡ったよ』ということを言われたという記者さんの質問に対して(蔵内氏が)『匿名の人に言われても、その辺はしっかり覚えていませんけれどもと無視をする』というか、そういう反応だったと思います。そうなってくると、蔵内議員がお話をした後に私がというよりも、むしろ、される前に設定をした方がいいんじゃないかと」
蔵内前議長は書面でコメントを出しています。
◆蔵内前議長の書面コメント
「新村氏の発言の意図は不明ですが、事実に反し、私の名誉を毀損する発言ですので、会見内容を精査した上で関係者とも協議し、必要となれば断固として法的措置を講じる所存です。現時点において各社の取材に回答することは差し控えさせていただきます」
蔵内前議長は「来週にも会見を開く」と話していましたが、その場で何を明らかにするのか、あらためてその発言が注目されます。
民主系では初の実名証言「副議長ポストを得るための慣習」
実名の告発者はこれで4人目、そして、民主系からは初めての実名証言となり、金銭疑惑は新たな局面に入ったと言えます。
会見のポイントを詳しく振り返ります。
新村元県議は2012年5月に県議会の副議長に就任しましたが、証言した内容はすべて就任前のことだとしています。
まず、2011年12月、複数会派の幹部が参加するゴルフ会「マスターズ」の費用、約100万円を負担したとしています。
さらに、副議長就任の1カ月前の2012年4月に福岡市・中州の料亭で自身を含む5人の会食が開かれ、そこに参加した蔵内氏に茶封筒に入れた現金500万円を手渡したとしています。
会食前の2人きりの時に渡したという事ですが、蔵内氏は中身を確認することなく自然に受け取ったとしていまして、「慣れているな」という印象だったそうです。
そして、新村元県議はこうした金銭の受け渡しについて「自民以外の会派が副議長ポストを得るための慣習だった」という認識を示しました。
新村元県議「蔵内氏と吉村氏は密な関係」
そして、重要なのが誰からどういう指示があったのかですが、新村元県議は「全て吉村元県議の指示だった」と強調しました。
吉村元県議というのは、自民党に次ぐ第2会派だった当時の民主県政クラブの会長で、野党側から議会をコントロールするもう1人の実力者でした。
新村元県議は吉村氏から「蔵内会長に500万円用意しろ」「自民党幹部と一席設けなさい」と指示されたと証言しました。
さらに(吉村元県議が)「『自分が副議長になる際、700万円か800万円使った』と話していた」とも証言しました。
その上で、新村元県議は「蔵内氏と吉村氏は密な関係だった」「金銭を使った悪しき文化を吉村氏が民主県政クラブに持ってきた」と話した。
つまり、一連の証言から考えられるのは、本来、与党とその対立軸であるはずの野党とが水面下では「不透明な金銭の授受」によって強く結びつき、与野党の監視システムが機能不全に陥っていた可能性があるということです。
さらに言うと、選挙戦では対立しているように見えながら、裏では「カネと人事」を通じて、自民党の蔵内体制と一体化し同調していたのではないかという疑念も出てきます。
今回の疑惑に関して蔵内氏は23日、コメント「金銭の授受は一切ない」と強く否定して、吉村氏も「指示はなかった」と否定しています。
福岡県議会の金銭授受疑惑は与野党を巻き込んだ泥沼の様相を見せつつありますが、第三者委員会や百条委員会でどこまでその実態に迫れるかが焦点となります。
