大阪市は市内に住む男性に対し、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」を繰り返したとして、損害賠償を求める裁判に踏み切る方針を固めた。
今月(10月)中にも提訴する方針だ。
男性は、市立プールの設備不備などを理由に、2023年5月~2026年6月にかけて、複数の市職員に対し600件以上の電話や面談の対応を要求。「辞めてしまえ」「くそったれ」などの暴言や、電話対応が1時間以上に及ぶこともあったという。
この数年、カスハラが社会問題化。今月(10月)からは、法改正により「企業などのカスハラ対策」が義務化された。
「“カスハラ”の認知度が上がっている一方で、『どこからカスハラと言われるのか分からず不安』という声もよく聞きます。実際“正当なクレーム”が言えなくなっているケースも少なくありません」
と話すのは「日本ハラスメント協会」の村嵜要代表理事。
「カスハラ」と「正当なクレーム」の線引きはどこにあるのか?
具体的な判断基準を聞いた。
■カスハラの境界線 言ってはいけない10の言葉
【日本ハラスメント協会 村嵜要代表理事】
理不尽な要求を突きつける“カスハラ”と、商品やサービスの不備に対する“正当なクレーム”の線引きはどこにあるのか。
消費者にとって、まず前提として「気を付けるべき3つのポイント」があります。
1.乱暴な口調、語尾が命令形である
2.大声で話す
3.感情を乗せる
乱暴な口調は言うまでもなく、「~しろ「~して」といった命令口調もいけません。
また、言葉遣いに問題がなくても「大声で話す」と相手に“怖い”と感じさせ”カスハラ”と捉えられてしまうので注意が必要です。
そして、「感情を乗せない」のも大事なポイントです。
感情的になってしまうと、丁寧な言葉遣いで、正当な内容を話していたとしても、「文句を言っている」と思われてしまいます。
できるだけ冷静に、落ち着いて淡々と話すことを心がけてください。
■「言ってはいけない言葉の典型例」
この3つのポイントに十分注意をした上で、「言ってはいけない言葉の典型例」として、下記のようなものがあります。
【言ってはいけない言葉・10の典型例】
1.早くしろ!
2.普通はこうだろう!
3.無愛想だ!
4.謝れ!
5.責任者呼べ!
6.サービスしろ!
7.土下座しろ!
8.口コミで低評価つけるぞ!
9.家まで説明しに来い!
10.どうやって責任取るんだ!
■やってはいけない10の行動とは
次にやってはいけない行動です。具体例として10個挙げてみます。
1.しつこい発言、要求を通すため粘って長時間居座る、電話を切らせない、など
2.にらむ、指をさす、物を投げつける
3.暴力的な身体接触、突き飛ばす、胸ぐらをつかむ
4.性的目的の身体接触(セクハラ)
5.店員のプライバシーを聞く どこに住んでる、学生?結婚してる?など
6.同行者のカスハラを止めずに見ている、又は加担する、
7.撮影禁止場所での店内撮影、店員の無断撮影
8.現場の店員や本部などに直接クレームを言わず、いきなりSNSに状況を書き込む
9.店のルールを無視する(違反する)。セルフサービスなのに店員に持ってこさせる。時間制なのに時間を過ぎても退店しない
10.短期間に何度も予約変更やキャンセルを繰り返す など
■「いきなりSNSで炎上」は法的措置の対象になる場合も
相手をにらんだり指をさしたりする明らかな威嚇行為だけでなく、同行者がいて、店員を囲むような形になるのも、「威嚇された」と感じさせ“カスハラ”になります。
意図せずカスハラの加害者にならないために、十分に注意してください。
要求を通すために長時間粘る、電話を切らせない、など必要以上に相手の時間を拘束するのもカスハラ行為です。大阪市のケースでも「市職員が対応に要した時間に対する賠償」が求められています。
そして、今、増えているのが、「店側にクレームを伝えず、いきなりSNSで不特定多数に発信し、炎上させる」行為です。仮に本人は軽い気持ちで書き込んだとしても、場合によっては法的措置の対象になる場合もあり、非常に危険です。
また、場所を問わずに撮影したり、無断で店員を撮影するのもカスハラなので注意してください。
予約の変更やキャンセルは常識的な範囲では問題ありませんが、短期間に複数回繰り返すとカスハラです。明確に「何回」と決まっているわけではありませんが、嫌がらせ目的でなくても店への迷惑行為です。
■「ハラスメント窓口へのハラスメント」も起きている
私ども「日本ハラスメント協会」は、自治体や企業の『ハラスメント外部相談窓口』の業務も請け負っています。
ハラスメントの相談を受け、アドバイスや調査を実施し、解決に向けて動く窓口です。
実は、「相談窓口のカウンセラー」へのハラスメントは少なくありません。
相談窓口に連絡してくるのは、ハラスメントに悩む人たち、つまり被害者です。
被害者であるはずが、気づかないうちに加害者になってしまうのです。
例えば、相談者から要望でハラスメントの実態調査をすることになったとします。
調査は対象者への聞き取りを中心に行いますが、関係者が複数いることも多く、報告書をまとめるまでに一定の時間がかかります。
そのことは最初に説明するのですが、「今すぐ調査を始めて早く報告して欲しい」という要求からはじまり、「あなたが無能だから時間がかかる。担当を変えてくれ」と言ってきたり、「私を見捨てるんですか」と感情をぶつけてくるケースもあります。
また、相談の時間は「1回の相談は1時間まで、話し足りない場合は翌日以降に再度」というルールを設定しているのですが、守らない方も多く、これまで4時間以上、電話を切らせてもらえなかったこともあります。
さらには、まだハラスメント認定されていない段階で「ハラスメントの相手を今すぐ異動させて欲しい」「今後、一切接触がないようにして欲しい」といった要求をされることも多くあります。
ハラスメント相談窓口へのカスハラは「過大な要求を繰り返す」というのが典型例と言えます。
おそらく不安な感情などからくる行動だとは思いますが、「自分は被害者だから、何を言っても、何を要求してもいい」と誤解してしまっているのでしょうか。
■「被害者が加害者にも」
ハラスメントは、気づかないうちに被害者が加害者になりうる問題です。
良かれと思った行動が、相手にとっては負担になることもありますし、正論だからと何を言ってもよいわけではありません。
誰もがハラスメントを自分ごととしてとらえ、正しい知識を持ち、配慮をもって行動して頂きたいと思います。
(日本ハラスメント協会 村嵜要代表理事)
