地域を見守り続けた百貨店「松山三越」の歴史と未来
戦後まもない昭和21年、木造2階建ての小さな店舗からスタートした松山三越が、10月6日でオープンから80周年を迎えた。
復興のシンボルとして愛媛・松山の暮らしに寄り添い続けてきた老舗百貨店が、いま新たな歴史を刻もうとしている。
屋根の上のファッションショーから始まった歴史
1951年・春、正面玄関の屋根を舞台に松山で初めて開かれたファッションショー。
大勢の見物客が詰めかけ、警察官が交通整理にあたるほどの賑わいだったという。
開店10年目に、愛媛初のエスカレーターを備えた3階建ての店舗に改装、百貨店としての本格的なスタートだった。
世界の毛皮コートを集めたゴージャスなランウェイショーは、流行の発信地・百貨店らしい光景。
お歳暮シーズンには、県内5万軒もの顧客を訪れるため、法被を着た社員らが自転車に乗って市内を巡る姿は「暮れの風物詩」だった。

「華ひらく」から生まれた限定グッズ
誕生以来、最新ファッションや文化の発信を続け、賑わいを生み出してきた松山三越。その象徴ともいえるのが、この「包装紙」だ。
画家の猪熊弦一郎さんがデザインした「華ひらく」は、1950年に日本の百貨店で初めて、オリジナルの包装紙として誕生した。
そんな歴史深いデザインが80周年を記念して、限定グッズになった。
鮮やかな紅白柄に心躍るメガネ拭きは、周年に合わせ80点限定で登場。
6日に発売された巾着バッグとポーチは、ひっくり返すと、ライオンとボタンがモチーフのオリジナルデザインで、今のところ、松山三越でしか出会えないレアアイテムだ。(※完売の可能性あり)

今も店のシンボルとして愛されているアトリウムコート
大街道商店街から入ってすぐの吹き抜けの空間”アトリウムコート”が誕生したのは、今から35年前、1991年だ。
オープンに合わせレトロなクラシックカーが登場し、明治・鹿鳴館時代の衣装をまとった女性らとともに、誕生を祝った。
アトリウムコートは、ダンスや、音楽など様々な表現の舞台となり、今も店のシンボルとして愛されている。

高校生が廃材で再現するアトリウムコート
松山三越は毎年、県内の高校生を対象に「建築アート展」を開いている縁から、松山工業高校の建築デザイン部とタッグを組み、今年4月から80周年の記念製作として、アトリウムコートの模型を作っている。
生徒たちは、写真を見たり、実際に訪れたりして、実物の70分の1のスケールで寸法を図面におこし、少しずつ建物を形にしてきた。
実はその材料にも、ある特徴がある。
すべて松山三越で出た「廃材」なのだ。
商品を包んでいた段ボールや陳列のため使われていたアクリル板など、本来であればゴミだったものに命を吹き込んでいる。
高校生たちも、「アトリウム建築の、すごいきれいな建物がすごい好き」「よく祖父母と三越に行くんですけど、祖父母との思い出の場所」などと話し、「細かく、正確に作っていきたいと思います」と意気込んでいる。
高校生たちが思いを込めて作るサステナブルな作品は、来年2月ごろ、松山三越でお披露目される予定だ。

進化を続ける百貨店の「新しいカタチ」
地域とつながり成長していきたいと、2021年実に30年ぶりとなる大規模リニューアルを遂げた、松山三越。
地域密着型のチョコレート店や、中四国最大級のフードホール、三越伊勢丹グループで初めてとなるホテルもオープンした。
今も百貨店の〝新しいカタチ〟を目指し、進化を続けている。
戦後まもなくの頃からずっと、この地でふるさとを見つめてきた松山三越が見据える未来は。
松山三越・近藤良一店長は語る。
「80年のテーマが、笑顔つながる80周年にしてますので、松山三越に来ていただいて、従業員と一緒になって、笑顔になっていただけるような百貨店を目指しています」


