2026年3月、名護市辺野古沖で平和学習中の生徒ら2人が死亡した小型船転覆事故から半年が経過した。
事故の発生と文部科学省による「政治的中立性に違反する」という見解を巡り、教育現場には波紋が広がっている。

沖縄テレビが県内71の高校を対象に実施したアンケート調査(27校回答)では、6割以上の学校が「平和学習の萎縮につながる」と懸念を示し、内容の検討において慎重な姿勢を強めている実態が浮き彫りとなった。
安全管理上の課題と学習テーマのあり方の混同
回答した学校のほとんどが今年度に平和学習を実施した、もしくはする予定と回答し、内容については全体の85%が沖縄戦について学習している。辺野古沖での事故を受け、約3割の学校が校外学習の安全管理や引率体制の見直しをしていることが分かった。

現場を揺さぶっているのは物理的な安全対策にとどまらない。
文部科学省は事故をめぐり、米軍普天間基地の移設工事を見学する同志社国際高校の研修内容が「特定の考え方に偏っていた」などとして、政治的中立を定める教育基本法に違反するとの見解を示した。
アンケートでこの文科省の見解が平和学習の萎縮につながるか尋ねたところ、「強く懸念している」が11.1%「ある程度懸念している」が51.9%で、合わせて6割を超える学校が懸念を示す結果となった。

さらに自由記述欄には次のような声が寄せられた。
「事故の原因は安全管理体制の不備であって、平和学習の萎縮を招くのは問題のすり替え」
「平和学習を行うにあたり、慎重になり踏み込んだ内容を避けてしまっている」
安全管理上の課題と学習テーマのあり方が混同され、踏み込んだ学びを自主規制する傾向が顕在化しつつある。
現場レベルで実感する受け入れ態勢の変化
こうした変化は、県外からの修学旅行生を受け入れる平和ガイドの現場にも及んでいる。
読谷村のチビチリガマで3,000人以上の児童・生徒に沖縄戦の実相を伝えてきた知花昌太朗さんは、受け入れ態勢の変化をこう実感している。

「これから先、ガマへの入豪は安全面に考慮する観点から、入れないとか入口までという風に変わっていくんじゃないかなと」
チビチリガマは沖縄戦当時、住民の強制集団死(集団自決)により80人以上が命を落とした場所だ。
知花さんは落石防止などの確認に加え、1クラス単位の案内を2グループに分けるなど人数や滞在時間を調整し、リスク低減を図っている。保護者や学校側からの確認や要望がシビアになってきているとも感じている。

「保護者から『ガマの中に入るんですか』という質問もありました。平和学習の内容について『どこに連れていくのか』『安全性は大丈夫か』というアンテナが今までよりだいぶ敏感になっているのはありますね」
「基地問題をメインに平和学習をしているところの話も聞くんですけど『なぜそこに行くのか』『根拠は何か』ということまで学校側・保護者側から求められるようになったと。実際に基地の見学をキャンセルして、チビチリガマやシムクガマを見に来たという学校はいくつかありました」

保護者や安全性への配慮・警戒から、基地問題をはじめとする社会的な学びの機会が忌避される傾向が見られ始めている。
現地の空気感が育む「自分事」としての平和
子どもたちの安全を守る管理体制を整えるのは大前提であり、事故の原因究明・責任追及、そして再発防止策の検討は不可欠だ。知花さんも、学校と現場による丁寧な情報共有が不可欠だと指摘する。

「すぐにできることとして、学校の先生が下見の時にしっかりと聞いておくこと。そして業者とコミュニケーションをしっかりと取っておくというのは最低条件だと思います。そこで話をしておくことで、色んなイレギュラーに対応できるはずです」
しかし、安全管理を理由に現地訪問そのものを諦めてしまえば、実感を伴う学びの機会は奪われてしまう。知花さんは、現地に立つことで得られる体感と、その代えがたい意義を静かに強調する。

「現場に来ないと分からないことがあると思います。現場の空気感をすごく大事にしたいので、どれだけ平和学習の時間が削られて、どれだけ私の話が短くなっても、現場に行くべきだという思いは変わりません。安全面を考えると学習の幅がどんどん減ってくると思うんですけど、それでも安全を担保しながらできることはあるので、できることを模索していく必要があると思います」
しっかりとした安全対策を追求することと、現地で歴史や社会と向き合う教育価値を守り抜くこと。両者を切り離すことなく、両立させるために模索し続ける姿勢が教育現場と社会に問われている。

