「スマホ・ホテル代支給します 」会社を装ったフィリピン日本人詐欺団 驚きの実態

“就業時間は午前8時から午後5時” アジトは数ヵ月ごと転々

カテゴリ:ワールド

  • 詐欺グループ摘発 日本人36人強制送還へ
  • 「旅行で遊びに来ていた」と容疑否認の男も
  • アジト賃貸契約で「英語学校の運営」と説明

フィリピン入国管理局によるアジト摘発

11月13日午後、フィリピンの首都マニラ。7階建ての雑居ビルに入国管理局の逃亡犯追跡班の捜査員たちが一斉に入った。ライフル銃やけん銃を手にした捜査員たちは部屋に突入すると、「ひざをつけ」「手を上げろ」などと言って、部屋にいた日本人をしゃがませ、床に伏せさせた。驚いたり、おびえたりする表情を見せ、両手を上げる日本人たち。この部屋は、日本にウソの電話をかけてキャッシュカードをだまし取っていたとされる日本人らが、いわゆるアジトにしていた部屋だった。

アジトに残された大量の証拠

摘発されたアジト内部

アジトには、会社の事務所のようにたくさんの机が並べられ、その上には、スマートフォンや住所録、それに電話をかけるマニュアルなどが置かれていた。犯行を裏付ける大量の証拠の数々だ。スマートフォンには、直前までグループでメッセージを交換していた形跡がみられ、「駅移動します」などと表示されていた。被害者からキャッシュカードなどを受け取るいわゆる「受け子」などとメッセージを交換していた様子がうかがえる。

10代から50代まで日本人36人拘束

フィリピンの入国管理局は警視庁から情報を得て、捜査に乗り出した。11月13日の家宅捜索によって、フィリピン当局は、スマートフォンやマニュアルなどを押収するとともに、日本人の男ら36人の身柄を拘束した。拘束した理由は不法就労。男らは10代から50代までと幅広い年齢層にのぼり、このうち1人は、記者の質問に対し、「旅行で遊びに来ていた」と容疑を否認した。36人は現在、マニラにある入国管理局の施設に収容されていて、今後、日本に強制送還される見通しだ。

「IT企業」「英語学校の運営」

近所の人によると、このアジトは数ヵ月前までホテルとして営業していて、その後、2ヵ月ほど前から日本人が出入りするようになったという。ビルの向かいにある食堂の女性は、ビルに出入りする日本人が「IT企業で働いている」と話していたと証言した。

また、同じ詐欺グループが今年8月までのおよそ半年間、アジトを置いていたマニラにある別のビルでは、賃貸契約を結ぶ際に、フィリピン人の女性が「英語学校を運営するために部屋を借りる」とビル側に説明していたという。英語学校を隠れみのにして、犯行に及んでいたのだろうか。

キャッシュカードを騙し取る手口

2つのアジトから見つかった資料から詐欺グループの手口の詳細が見えてきた。押収されたマニュアルなどによると、男たちは警察官を装って日本に電話をかける。もちろん相手の住所を把握した上で、管轄の警察署の名前を名乗る。そして、「詐欺グループの拠点を家宅捜索したところ、あなたの名前や住所、電話番号などが記載された個人情報のリストが見つかりました」と説明する。

さらに、「この詐欺グループによって、あなたの偽造口座が作られた可能性があり、法律に基づいて情報を保護します」などと言って、金融機関や支店、残高などを聞き出す。その間、日本の共犯者と連絡を取り合いながら、金融庁の職員を名乗る人物にその家に向かわせ、キャッシュカードを封印すると言って、カードと暗証番号が書いた紙を封筒に入れさせた上で、別のキャッシュカードにすり替える。以前に多発した詐欺事件では、封印する際に、「朱肉と印鑑を持って来てください」と言って、被害者が玄関を離れたすきにカードをすり替えていた。今回、摘発されたグループも、同じ手口を使っていた可能性がある。

“就業”時間は午前8時~午後5時まで

アジトに残された資料の切れ端

また、組織的な運営に加え、摘発を免れようと対策を講じていた周到さもうかがえる。今年8月まで使っていたアジトから見つかった資料には、「就業時間は月曜日から金曜日の午前8時~午後5時まで」「午前7時までに遅刻の連絡がない場合、翌週の週経費、ホテル代はなし」「毎週月曜日に週経費4000p*、ホテル代を支給」などと規則を定め、会社に勤めているかのように組織的な運営をしていたとみられる。(*pはフィリピンペソか。4000ペソは8500円くらい)

さらに資料には、「会社からは連絡用、かけ電のiPhoneを支給」「かけ電は証拠品になるので持ち出し厳禁」「証拠品になるマニュアル、リストなども同様」などと記されていた。違法性を十分に認識し、摘発を免れるために対策を講じていたことがうかがえる。数ヵ月ごとにアジトを転々としていたことも、摘発を免れるためだったのではないか。今年3月、タイで摘発された詐欺グループは、アジトにたくさんの電話機を置いて、犯行に及んでいたが、今回のアジトでは、スマートフォンを使っていた。捜査の手が及ぶ前に、すぐに別の場所へとアジトを移すために、スマートフォンのように持ち運びが簡単な機材で、犯行を重ねていたと推測できる。

依然として後を絶たない特殊詐欺

フィリピンでは、中国人による同じような詐欺グループの摘発が相次ぎ、今年11月には、300人以上が中国に強制送還された。特に、海外からの犯行は、被害を受けた国の捜査当局の目が届きにくい面がある。フィリピンにもまだ、同じような日本人の詐欺グループがいるかもしれない。国境を越えた犯罪を撲滅するためには、各国の捜査当局が連携を強化していくことが不可欠だ。そして、詐欺の電話への十分な注意が必要だ。日頃から不審な電話について、家族や友人と話題にすることで意識を高め、1件でも被害が減ることを願っている。

【執筆:FNNバンコク支局 武田絢哉】

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