気づけば『妻の首を…』認知症の患者や家族が直面する「過酷な現実」

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  • 2025年には65歳以上の「5人に1人」がなるとも言われる「認知症」
  • 徘徊し行方不明になる患者も年々増加、家族の負担も大きくなっている
  • 今回、2組の夫婦を通して、患者と家族が直面する過酷な現実を取材。

繰り返す妻の徘徊に…「特注の鍵」

誰もがなりうる身近な病気となっている認知症。
2025年には、65歳以上の5人に1人がなるとも言われている。

認知症と共に生きるために。患者や家族が直面する過酷な現実を通して、わたしたちがどう向き合えばいいのだろうか。

夫婦での食事の場面 。妻の妙子さんの膝には愛犬がすり寄ってきていた。

松岡妙子さん:
わんちゃんにあげるわ。

夫・勇さん:
あかん、卵だけは絶対あかんで。

滋賀県野洲市に住む松岡妙子さん(78)。
認知症を患い、注意しても何度も同じことをするようになった。

松岡妙子さん:
なにあげようかな。『おうどん』はどうもないやろ?うどんもあかんの?卵も?

夫の勇さん(80)と理髪店を営んでいた妙子さん。

子供たちは自立し、2人で暮らしていたが、10年ほど前に妙子さんに認知症の症状があらわれたという。

物の置き場所がわからなくなるなど、症状は徐々に深刻化していて、今も手鏡の置き場所を探しているようだ。妙子さんは照明のスイッチに引っ掛けようとしていた。

夫・勇さん:
それはあかん、こっち置いとこう。かけるとこないねん。

勇さんは妙子さんを介護する上で一番大変なのは、”徘徊”だといいます。

夫・勇さん:
信号が分からん。赤でも行こうかって言って、 それが一番怖い。


――赤信号でも渡る?

夫・勇さん:

うんうん、だから手を離さへん。

妙子さんは、次第に自宅を他人の家だと思うようになり、置き手紙を残して一日に何度も徘徊するようになった。

時には、電車を使うこともあり、5回ほど行方がわからなくなったことも。

いつ外に出るかわからないため、勇さんは、家の出入り口に内側から施錠できる、特注の鍵をつけた。

夫・勇さん:
これ(カギは)僕が隠しているから。家はみんなそう、二階も。(カギは)みんなか僕が持っている。隠してある。

――(妙子さんは)外に出られなくて怒らない?

夫・勇さん:
できるだけ穏やかになだめる。近頃はこれをよく読んでいるわ。(ドアのノブを指して)『一人で出ないでください』って。必ず朝一緒に出るねん。

妙子さんが何度も外に出たがるため、一緒に散歩するのが夫婦の日課になった。

靴にはGPSをつけ、万が一の場合も居場所がわかるようにしています。

警察に届け出があった認知症患者の行方不明者数は年々増えていて、去年は約1万7000人。そのほとんどは一週間以内に所在が確認されているが、死亡した後、 見つかった人もいる。

夫の勇さんは、7月に80歳になった。

いつまで妻を介護する生活を続けられるのか不安を抱えている。だがそれでも、 できる限り妙子さんと一緒に暮らしたいと話す。

――外に行くのは好きですか?

松岡妙子さん:
そやね、一緒にいつもついていっているからね。

夫・勇さん:
ついていってもうてんねん。二人やでな、おれを大好きやねん。おれも大好きやし。俺も女房が大好きだし、俺を大好き本当に。

気づけば「妻の首を…」負担に苦しむ夫

認知症患者の家族たちの交流会が各地で開かれている。
1人で抱え込まないように、同じような境遇の人に悩みを打ち明けられる、大切な場所だ。

梅本高男さん:
夜、物音したら『出て行く』と思って目が開く、こっちは睡眠不足。家内は睡眠不足になったら、昼寝する。こっちは昼寝出来ない。

大津市に住む梅本高男さん(77)も妻が認知症を患い、5年間在宅介護をしていた。

梅本さん:
自分の下着が冷蔵庫の中に入っていたり、僕のスマホが冷凍庫の中に入っていたり、そのときはどうしたらいいかわからないから大きな声で『何でそんなことするんや』と。『何回言ったらわかるんや』と大きな声で怒っていた。

認知症について何もわからなかったという梅本さん。
二人の思い出を忘れないように、 部屋には写真を飾った。 しかし症状は改善されず、 妻の安子さん(76)は、 10キロほど先まで徘徊することも。

梅本さんは追い詰められた結果、思いもよらないことをしてしまったと話した

梅本さん:
『(妻が)あんた誰やと、なんでここにいてるんやとここは私の家だと、出て行けって』いう。そのときは僕もストレスがいっぱいたまっていたから、僕も言い返して『これはわしが建てた家だと、お前こそ出て行け』と。僕が言った声よりも大きな声で言い返してくる。それが2日くらい続いたのかな、3日目か4日目に気が付いたら家内の首を絞めかかっていた。

介護の負担は、 高齢の梅本さんにとって大きなものとなっていた。

安子さんは現在、特別養護老人ホームに入居している。

梅本さん:
きょうはおとうさん、やっちゃんに会いにきた。

妻・安子さん:
お父さんなんだよね?

梅本さんはできる限り施設に行き、安子さんと一緒に時間を過ごすようにしている。 この日は二人でアルバムを見て、昔の思い出を振り返っていた。

梅本さん:
(写真を指し)これお母さん、梅本安子さん。志賀高原でテニスしたの覚えているやろ?

かつて「首を絞めかけた」という梅本さん。
今は、安子さんが病気になる前のように2人の時間を楽しめるようになった。

梅本さん:

介護してくれるので、ものすごく助かっている。僕が直接介護しなくてよくなったので、精神的にも肉体的にも、ものすごく楽になっている。

6年後には、65歳以上の「5人に1人」が…

在宅での介護が難しくなった患者を受け入れる特別養護老人ホーム。
しかし入居待ちの数は、全国で約36万人と深刻な受け皿不足となっている。

さらに、職員の人手不足で、「ベッドがあっても入居できない」というケースもあるという。

特別養護老人ホーム千寿の郷 山本章文:
職員の過度な負担にもならないようにという配慮も必要だと思うし、ご利用者に適切な介助が提供できなければ私たちは、一定制限してでもその質を担保していかないといけないので。
全国的にも人材不足があるので、人材の確保とケアの質を高めながら一人でも多く入居していただけるように。人の確保に努めているところです。

誰がなってもおかしくない認知症。
6年後には、65歳以上の約5人に1人がなると言われている。

(関西テレビ)

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