から揚げ食べたら声が出た…
食欲をそそる香りにあふれ出る肉汁...一口食べれば思わず笑顔になる。
そんな食品、みんな大好き「鶏のから揚げ」にまつわる推測が、Twitterで反響を呼んでいる。
それが、のどが痛いときは「鶏のから揚げ」が効く!?というものだ。
きっかけは、漫画家・えいくら葛真さん(@ikurakoikura)が5月23日に投稿したつぶやき。
ある声優が話した「から揚げで声が出る」というテクニックを実践したところ、のどの痛みが引いて声が出るようになったという。
「そうだと思っていた」なぜか共感多数…
この投稿はTwitterユーザーの反響を呼び、4万以上のいいね、11万以上のリツイートを記録している。(5月31日現在)そして、驚くべきはその反応。「そうだと思っていた」「バレてしまいましたね」と同調する意見が相次いだのだ。
「ライブ前に食べる」という実体験も寄せられ、「から揚げは薬だった...?」「船に乗る前に食べると船酔いしない」といった“から揚げ万能説”まで登場。フライドポテトやカレーパンを推す人もいたが、「油はのどに良いはず」という認識は共通していた。
実は今回のような話、歌手や声優からもたびたび出ていて、のどを調子を整えるために油っぽい「お肉」や「豚骨ラーメン」を好んで食べる人もいるほどだ。
おいしい料理を楽しみ、それがのどに良いのなら、まさしく一石二鳥…でもやっぱり半信半疑だ。
医学的には果たしてどうなのだろうか?日本大学医学部の耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野で診療准教授を務める、中村一博さんに聞いてみた。
のどに良い効果は...ありません
――鶏のから揚げでのどの痛みが引くことはありますか?
鶏のから揚げにのどの痛みをひかせる作用はありません。
たまたま、食べたあとのタイミングで痛みが和らいだのではないかと推測します。
――のどに良い影響を与えることは考えられますか?
考えにくいです。むしろ、悪影響を与える可能性があります。硬い衣は、のどの粘膜である「咽喉頭粘膜」を傷つけます。扁桃摘出手術をした患者への食事指導では「から揚げなどの硬い揚げ物は食べてはいけません」と指導する医師もいるほどです。
――歌手や声優などが、油っぽい食事を取ることについては?
油っぽい食事をしても、のどに良いことはありません。歌手や声優さんも、のどにトラブルが起きなければ医療機関に来ないケースが多いため、民間療法のような形で一人歩きしてしまっているのではないでしょうか。
辛いものや味が濃いものは避けて
――のどに良い食事・飲み物はある?
咽喉頭粘膜の保護には十分な水分が必要です。水分不足で湿度が失われると、粘膜が機能しなくなり、声が出なくなったり痛みを感じます。甘い水分は糖分の過剰摂取になりますので、ミネラルウォーターや緑茶など、無糖の飲料を飲むと良いでしょう。
――逆に避けた方が良い食事・飲み物はありますか?
偏った食生活や刺激物は避けた方が良いでしょう。極度に辛いものはのどを傷つける原因に、味が濃いものは声帯がむくむ原因となります。硬いものを硬いまま飲み込むのも、のどを傷つけるのでいけません。食事は普段の10倍くらいの時間をかけ、ゆっくりとかんで食べてください。
のどの調子を保つには、炭水化物、脂質、たんぱく質、繊維質を摂取できるバランスの良い食生活が大切です。肉、魚、野菜と主食を、薄味でバランスよく食べるよう心がけてください。塩分が多いと、体内の水分バランスに悪影響がおよんで声帯がむくむので注意しましょう。
――のどの調子が悪い人に呼びかけたいことはありますか?
ネットの情報などで自己判断せず、専門医の受診を受けることをお勧めします。耳鼻咽喉科だけでも、耳の専門医、鼻の専門医、咽喉頭の専門医がいるので、専門の医師に相談しましょう。歌手や声優など、のどを使う仕事の方であればなおさらです。
残念ながら、から揚げや油分がのどに良い影響を与えることは考えにくいようだ。「これが良いのでは」と思って食べたものが症状を悪化させる可能性もあるので、のどの調子が悪いときは、素直に医師の診断を受けることをお勧めしたい。