東京・秋葉原の路上で暴力団幹部が刺殺された事件。刺した男は反社会勢力の人間ではなく、一般人=カタギだった。

その後の取材で、暴力団幹部に追い詰められた男の”地獄”の日々が明らかになった。

喫茶店を出た直後 包丁を・・・

7月21日午後6時40分ごろ、JR秋葉原駅近くの路上で、特定抗争指定暴力団・山口組系の山中健司幹部(34)が、包丁で左脇腹を刺され、搬送先の病院で死亡する事件が起きた。

殺人などの疑いで逮捕されたのは、コンセプトカフェのコンサルティング業などを営む佐々木文俊被告(35)だった。(8月10日、殺人・銃刀法違反罪で起訴)

送検される佐々木文俊被告(35)(7月23日 万世橋署)
送検される佐々木文俊被告(35)(7月23日 万世橋署)
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起訴状などによると、事件当日、佐々木被告は山中幹部と他の知人とともに現場近くの喫茶店を訪れていた。話題は山中幹部のSNSのフォロワー数をいかに増やすかだった。そして、喫茶店を出た直後、佐々木被告は持参していた包丁でいきなり山中幹部を刺したという。

調べに対して「とっさに刺してしまった」と供述している佐々木被告。ところが、刃渡りおよそ20センチの包丁は、事件の9日前に台東区内で購入されたものだった。佐々木被告はその包丁を持ったまま、喫茶店を訪れていたことになる。2人の間に何があったのか…。

「暴力団幹部」とは知らずに…

佐々木被告と山中幹部の関係性を振り返る。2人が最初に出会ったのは2013年~14年ごろ。それぞれが行きつけだった都内の居酒屋で知り合ったというという。馬が合ったのか、いつの間にか、お互いのことを相談する間柄になった。

刺殺事件が起きた現場(7月21日 東京・千代田区)
刺殺事件が起きた現場(7月21日 東京・千代田区)
現場には、大量の血痕と脱ぎ捨てられたサンダルが
現場には、大量の血痕と脱ぎ捨てられたサンダルが

その後、佐々木被告が、墨田区の錦糸町でバーを開いたところ、そこでも山中幹部は、いわゆる”太客”になる。多い時には週に4回も来店していたそうだ。佐々木被告はこの頃から自分の店を度々訪れてくれる山中幹部に恩を感じ始めていたという。

もちろん佐々木被告の中には、山中幹部が山口組系幹部という明確な認識はなかった。そのうちに、山中幹部から「錦糸町ではなくて、もう少し都心に店を出してはどうか」とアドバイスを受ける。山中幹部のことを信用していた佐々木被告は、その進言通り新橋駅の近くにキャバクラ店をオープンすることにした。しかし、その直後ある事件が起きた。