従来の印象を大きく覆すキャンペーン

皆さんは「キンカン」と聞いて、どんなイメージを抱くだろうか?

おそらく、鼻につんとくる独特の刺激臭や、「かゆみによく効く虫さされの薬」を思い浮かべる人が大多数ではないだろうか。
もしかしたら、「キンカン塗って また塗って~♪ 元気に陽気に キンカンコン~♪」の歌詞が印象的な、昔懐かしのCMソングを思い出す人もいるかもしれない。

いずれにしても庶民的なイメージのキンカンが、それを覆すプロモーションを7月18日から始め、話題になっている。
まず、こちらの映像を見て欲しい。

ビートの効いたお洒落なBGMが流れる中、ライトアップされ草木がのぞくランウェイを次々と歩いてくる外国人モデルたちをとらえた5パターンの映像。一見ファッションショーのようだが、モデルたちが決めポーズを取りつつ、サッと取り出したのはなんとおなじみの「キンカン」。

モデルたちはクールな表情を崩さぬまま、首筋、足首、ひじなど虫に食われた箇所に薬を塗った後、颯爽と来た道を戻っていく。彼らのスタイリッシュなたたずまいと、私たちが見慣れた「キンカン」の組み合わせがどこかアンバランスだが、映像のオシャレ感は半端ない。

この映像は、「KINKAN SUMMER COLLECTION 2019」と題した、キンカンの新しいキャンペーンムービー。
公開後、SNS上でたちまち注目を集め、「今までのイメージになくてすごい好きこの感じ」「こういうウィットに富んだ施策を予算かけて徹底的に実行するのは良い会社」「これネタじゃなくかなりしっかりやってる」といった声があふれることとなった。

このムービーにとどまることなく、7月20日からはキャンペーンポスターが渋谷の街中を1週間ジャックするという。そのうち、黒字にキンカンのロゴだけのシンプルなポスターには、よくみると"蚊"のスカシが入っているという心憎い遊び心もある。

また、オリジナルTシャツをプレゼントするキャンペーンも8月18日まで実施し、合計8タイプに及ぶTシャツはそれぞれこだわりのデザインとなっていて、"蚊"をモチーフとしたオリジナルロゴも入っている。

オリジナルロゴは”蚊”をモチーフにした本格的なもの。
オリジナルロゴは”蚊”をモチーフにした本格的なもの。
この記事の画像(4枚)
プレゼント対象となるTシャツのうち1着。蚊が飛び回る軌道をデザイン化している。
プレゼント対象となるTシャツのうち1着。蚊が飛び回る軌道をデザイン化している。

大手アパレルブランドさながらのクールなプロモーションだが、キンカンはあくまで医薬品の会社であり、イメージとのギャップがありすぎる。

なぜ、こんなキャンペーンを実施することにしたのか? 本気で夏のファッションアイテムを狙っているのか?
広報担当者に話を聞いた。

「キンカン」のイメージを変える必要があった

ーー「KINKAN SUMMER COLLECTION 2019」のきっかけと狙いは?

90年以上の歴史をもつ「キンカン」ですが、若い世代にも「キンカン」の存在を知ってもらいたいと思いました。
そこで、まずは若年層にとっての「キンカン」のイメージを「今っぽい」「イケてる」というイメージに変えていく必要があると考え、時流に乗った若年層向けプロモーションを昨年から開始。ウェブムービー『男の知らないSNS女子の生態』("本当のインスタ映え"を求めるSNS女子たちが主人公の作品。当時YouTube上で約157万再生された)を公開した2018年に続き、今年で2年目を迎えます。

ーースタイリングや撮影のスタッフなどもこだわりがあれば教えて?

アート・ディレクターはinc.を率いる宇賀神正人さんにお願いしました。
スタイリングは舞台『クヒオ大佐の妻』の宣伝衣裳や日本コカ・コーラの『綾鷹』に関わった小山田孝司さん、撮影は『SPUR』『VOGUE JAPAN』などレディースのファッション誌で活躍する長友善行さんに担当してもらっています。

ーー「キンカン」のイメージから想像できない企画だが、反対や疑問の声は?

本企画はいい意味で期待を裏切りたいとの思いで進めたものです。今年も消費者の期待を超えたいと思っています。

渋谷・O-EAST 入口横にて撮影。
渋谷・O-EAST 入口横にて撮影。

「予想以上に反響に戸惑っている(うれしい悲鳴)」

ーーSNS上では好反応が多い。バズも狙っていたのか?

“バズ”というより、自然発生的な話題が生まれるように複数のタッチポイントで施策にリーチいただくための設計を綿密に組んでおります

ーーSNSなどでの反応をどう受け止める?

予想以上の反響に正直戸惑っております(うれしい悲鳴です!)。すでにウェブメディアでは80以上、地上波でも3局程度取り上げが決まるなど、反応は良好です。
またご指摘どおり、ウェブニュースのコメントをみても好意的なコメントが多数を占め、当初の狙いが達成できたと思います。

ーー「キンカン」が夏のファッションアイテムになることも狙っていた?

趣旨としては狙いましたが、これほどまで話題になるとは正直思っておりませんでした。

ーーTシャツのプレゼントへの応募状況は?

まだ集計中ですが、すでに数千を超える応募が来ております。

ーー企画に対する社内の反応はどのようなもの?

週明けから、社員の知人からも「広告を見た」との話が数多くのぼり、まとめニュースをはじめ、メディアに取り上げてもらった効果を感じております。社員全員、好意的に受け取ってもらい、企画に関する理解度も増してきております。

塗る時は“キンカンポージング”を

ーー企画の反響次第では続編や公開延長もあったりする?

公開延長は考えておりません。現在の企画を一生懸命進めていきたいと思います。

ーーこうした個性的な企画は今後も予定している?

昨年から「若年層向けプロモーション」を数カ年計画で進めている最中であり、来年以降も継続して実施していきたいと考えています。

ーー最後にこれから蚊の季節になるが、対策などメッセージを。

蚊に刺されてしまったら、かく前に「キンカン」を塗りながらキンカンポージングを楽しんでみてはいかがでしょうか?

狙いすぎて炎上してしまうこともある昨今だが、従来の企業イメージとかけ離れたキンカンのPRは好意的に受け止められ、「全く違う層にリーチさせたい」という狙いも今回成功を収めているようだ。
そして肌の露出も多くなるこれからの季節、虫刺されはしっかりケアしよう。


プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。