県が給水車派遣要請を行わず…町長が「非常にもどかしい」

日本列島を襲った台風19号。各地で大きな被害が相次ぐ中、被害を受けた方々にとって大きな助けとなる自衛隊の給水車が水を配らずに帰ってしまうという事態が神奈川県の山北町で発生していたことが分かった。その背景には本来、協力し合うべき県と町の対立があった。

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騒動の舞台となったのは、神奈川県の最も西に位置する人口約1万人の山北町。
台風19号の影響で水道施設3か所が被災し日曜日に断水が発生した。

そこで、町は県と自衛隊に自衛隊の給水車を出すように要請した。

山北町・湯川裕司町長:
正式に県の方に災害対策本部に自衛隊の派遣要請をした。

そして、待ち望んだ自衛隊の給水車が到着しすぐに給水可能となるはずだった。
ところが…

山北町・湯川裕司町長:
給水を受けられないということで帰っていただくという非常に残念な結果になりました。

なんと、午前8時に到着した自衛隊の給水車両3台は、一滴の水も配ることなく帰ってしまった。

これには、自衛隊派遣をめぐるルールが関係していた。

自衛隊の災害派遣の基準には“自衛隊でなければ対処できない”という要件がある。
そこで、神奈川県は自前の給水車が出せるという理由で県は自衛隊の給水車の要請を行わなかったのだ。

結局、県の給水車が町に到着したのは自衛隊から遅れること5時間後の午後1時近くになってのことだった。

県と町が対立、住民は「もめてる場合じゃない」と呆れ

山北町・湯川裕司町長:
自衛隊さんは3台8時に来ているわけですから、これをなぜ使えないかというのは非常にもどかしい。

山北町の町民からはこんな時に直接言った言わないでもめている場合じゃないと思う」(男性)「一刻も早くっていう人がいたと思う。手続きも大事だと思うけど…」(女性)と呆れる声が聞こえた。

この事態について神奈川県の黒岩知事が午後3時頃に会見を行った。

神奈川県・黒岩祐治知事:
ルールに基いた形ではなかったということであっても、現場で融通をきかせて近隣の皆様に給水をするといった柔軟な対応もできたという思いがあり、そういった意味で皆様にお詫びをしたいというふうに思っています。

今回の事態に自衛隊の幹部は「町と県のミスコミュニケーションに尽きると思う」と指摘している。

「言った」「言わない」町と県で主張が対立

社会学者・古市憲寿氏:
今回、地震だったら予知ができないから現場がワタワタするのは分かるが今回は台風。数日前から台風がくるということは確実に分かっていた。あらかじめ、県と町で話し合いはできたはずだ。それをやっていなかったことが間抜けに見える。そもそも事前の打ち合わせから足りなかったのではないかと。
オペレーションの順番に対してはそれぞれマニュアルがあって理屈は分かるが、災害時なので何とかならないかなと思う。

フジテレビ・風間晋解説委員:
県も町も自衛隊も、人や機材や金をふんだんに持ってるわけではない。ということは、効率重視で対応していかなきゃいけないのにそれができていない。今回のケースの場合、町から打診があった時に分かった山北町は「自衛隊に任せる」で即断即決でいいと思う。この程度の事態への対応がうまく調整できない、決断できないではこれからますます人がいなくなる、お金もないというときにどうするんだろうと不安になる。県知事も思いだけでなくて、びしっとリーダーシップを発揮してほしかった。

佐々木恭子アナ:
水の使われ方については1つ誤解がある。「この水を自衛隊が捨てたのではないか」という情報が拡散しているが、自衛隊は否定している。「炊事などに活用した」ということだ。

加藤綾子キャスター:
今回は最も助けを求めていた被災者が巻き込まれてしまった。ここが一番の問題だと思う。

(Live News it! 10月16日放送分より)