世界遺産の島・宮島に浮上した高級宿泊施設の誘致を巡り計画を進めたい廿日市市と反対住民による話し合いの場が持たれました。
議論の「平行線」が続いてきた理由をツイセキします。

廿日市市役所で19日朝、市の幹部と宮島の住民が「高級ホテル計画」の今後のあり方について意見をぶつけ合いました。

【五十川記者】
「話し合いが始まってすぐに報道陣は外に出るように促されました。中なんですが、時折住民と思われる声、怒るような声も聞こえます。両者の溝は埋まるんでしょうか」

廿日市市は3年前から、宮島の東側にある包ヶ浦自然公園に高級宿泊施設を誘致し、海外からのインバウンドを呼び込む構想を掲げています。
事業者を公募するための基本方針として市は1泊1室10万円以上、部屋数を50室以内とする案をまとめました。

【廿日市市・村上雅信副市長】
「(海外の富裕層は)日本には訪れるけどどうも広島までは来てないんだと。なぜ広島に来ないかそれはそういう(高級な)ホテルがない」

新型コロナが落ち着き円安も相まって国内外から年間約460万人が訪れるようになった宮島。
そのうち島内に宿泊するのは1割以下の30万人台で推移しています。
特にこれまで取り込むことができなかった富裕層をターゲットとすることでホテル以外の地域全体へ経済効果を押し上げたい考えですが…

【宮島包ヶ浦自然公園を守る会・正木文雄共同代表】
「まず強力に止めないと今の状態では前に進んでいくと」

宿泊施設の関係者を含む島内の地元住民たちが計画の白紙撤回を求め署名活動を始める事態に。
公園に新たな事業者が入ることで「経済的に恵まれた旅行者だけのものになり」「甚大な自然破壊を招こうとしている」などとして異議を唱えています。

【参加者は】
「高付加価値とはどういった意味なのか。基本的なところがよく分からない」

市と住民による19日の話し合いの結果、来月、官民一体の協議会をつくってホテル以外の選択肢も含めて公園全体の利活用の可能性を探っていくことになりました。

【宮島包ヶ浦自然公園を守る会・正木文雄共同代表】
「ホテルありきではなくてこれから納得いくような形をつなげていきましょうと。(市の姿勢が)少し変わってきたかなというのはあります」

【廿日市市・村上雅信副市長】
「多用な活用案の中の1つの案のホテル。そこは変わらない。多用な活用について協議しようというところまで行きましたので、それがまずは一つの成果かなと」

引き続き、住民グループは高級ホテル計画の白紙撤回を求める署名活動は続けたいとしています。

<スタジオ>
取材した五十川ディレクターです。

【五十川記者】
計画が浮上している包が浦自然公園の位置関係を見て行きます。厳島神社から見ますと島の反対側、桟橋を降りまして左側に車で10分ほど離れていると言う位置関係です。
なぜ、市はホテルを誘致するのか…
1989年の映像です。海水浴場やキャンプ場を併設してピーク時の1991年度には16万2000人が利用していました。時代の変化や施設の老朽化などを理由に2022年度は2万人を切るにまでに減りました。
公園の維持・管理費に年間2000万円程度の赤字を計上していましたが、先月末で閉鎖されました。

【加藤キャスター】
「利用者が減り維持管理が難しくなったわけですね」

【五十川記者】
そこで皆さんと考えたいポイントは「宮島全体にとっての利益とは?」です。
廿日市市は「上質な宿泊施設」を誘致するための国の支援事業に3年前に応募し、候補地のひとつに選ばれました。
ただ、国の事業だからと言って国は宿泊施設の事業者を紹介するだけで補助金が交付はありません。そして市が税金を負担をするわけでもありません。
あくまで市が公園の土地を貸し付ける。賃料発生するという仕組みです。

【加藤キャスター】
「さきほどもありましたが、反対する住民の意見も根強いものがありますね」

【五十川記者】
反対の住民グループには宮島で宿泊業に携わる人も含まれていますし、やはり国の事業に応募した『最初の段階から教えておいてよ』という反感が根底にあるのかなと思います。今回反対する皆さんの意見として
・建設ありきで進んでいる
・公園が旅行者だけのものになるのではないか
・自然破壊につながる といったことがあります。
そういう疑問は市がどのように考えているのか。
廿日市市の副市長に疑問をぶつけてきました。

【廿日市市・村上雅信副市長】
Q:(採算面からも)この計画が成立するのか?
「これはチャレンジでしかない。(国が)ポテンシャルがあると認められているのでそこは生かしていきたい。今すでにあそこにはケビン(小屋)があって宿舎事業を行っています。これ自体がすでにあるもの」

【五十川記者】
ということで市としては、やはり今までもキャンプ場のような施設、宿泊施設としてはやっていたんですよというような立場です。そして開発といっても決して自然を破壊するようなことはないんですよ、としています。

【加藤キャスター】
議論が平行線になってしまうと、進むべき事も進まない。建設的な議論をしてほしいですね。

【五十川記者】
そうですね。スタートにあるのは年間2000万円の赤字が出ているということ。今回協議会が設置されるということになりました。
高級ホテルを誘致したらどのようなプラス面があるのか、それ以外も含めて具体的な議論が求められると感じました。

テレビ新広島
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