「日本酒離れ」に歯止めをかけようと、島根県奥出雲町の酒蔵がユニークなコラボ商品を販売しています。そのパートナーは「ウマ娘」。競馬の世界をモチーフにしたゲームやアニメで人気のキャラクターです。コラボの背景を取材しました。

300年を超える歴史を持つ奥出雲町の造り酒屋「簸上清酒」。看板銘柄は「七冠馬」です。
1980年代に「GI」レース7勝、「七冠」を達成した名馬「シンボリルドルフ」にちなんだ地酒です。その「七冠馬」とコラボしたのが…。
競馬を舞台にしたゲームの人気キャラクター「ウマ娘」です。実在する競走馬をモチーフにした「ウマ娘」たちが、仲間と学園生活を送りながらレース制覇を目指し、成長する過程を描いたゲームで、その後アニメをはじめ、さまざまなコンテンツを展開。その人気は日本だけでなく、海外にも広がっています。
2月に予約受け付けを始めたコラボ商品は第2弾。ラベルには、ウマ娘と「七冠馬」のモチーフになったシンボリルドルフと同じ牧場で育ったシンボリクリスエスが描かれています。「競走馬」でつながった地酒とウマ娘、ユニークなコラボのきっかけは…。

簸上清酒・田村浩一郎専務
「秋葉原の近くにお店のある酒屋さんと取引があり、そこに出入りされている人がウマ娘で何かコラボ出来るんじゃないかと思いつかれて、酒屋を通してうちに話がきた」

村上遥アナウンサー
「最初その話をされたときはどう受け止めましたか」

簸上清酒・田村浩一郎専務
「出来るんですかって思った」

思いがけない偶然からスタートしました。

簸上清酒・田村浩一郎専務
「こちらは七冠馬の今年の仕込みの新酒を実際に発酵させているタンクです」

5年前に大手ビールメーカーを退職し、16代目として家業を継いだ田村さん、先代が手がけ誕生から25年が経つ「七冠馬」のブランドを確立し、海外にもファンを広げたいと考えました。

簸上清酒・田村浩一郎専務
「七冠馬であったり、蔵のストーリーだったり良いものがあるけど、全然知られていないなというのが実感としてあった」

「シンボリルドルフ」をラベルにあしらった2022年発売の第1弾は、オンライン限定で7777本が即完売。追加分を抽選販売する人気ぶりでした。
今回の第2弾は、兵庫県産の酒米「山田錦」を100%使用。感情の起伏が激しいシンボリクリスエスをイメージし、味わいの異なる2つのタイプを仕込みました。

簸上清酒・田村浩一郎専務
「バランスの良い味を『静』に、『動』の方は動きのあるお酒をイメージして造り分けた」

1本7000円ですが、発売からまもなく、完売したということです。こうしたコラボ商品は人気ですが、いわゆる「日本酒離れ」の傾向は年々進んでいます。ピーク時の1973年には170万キロリットルを超えた日本酒の国内出荷量は、その後右肩下がり、2023年は約20万キロリットルと9割近く減少しました。

簸上清酒・田村浩一郎専務
「(コロナ禍で)飲食店が閉まるのが早い。お客さんが早く帰る。飲みが少ないのに慣れてしまっている」

さらに追い打ちをかたのが新型コロナ。コロナ禍で根付いた、大人数で集まる宴会や外食を控える傾向は、感染対策が緩和されたあとも大きくは変わらず、日本酒の需要回復の兆しはまだ見えていません。
こうした中、田村さんもあの手この手で日本酒離れに歯止めをかけたいと動いてきました。

簸上清酒・田村浩一郎専務
「なかなか1回飲んで覚えてもらう要素がすごく少ないと思う。思い出しやすいようにしたいというのがあった」

商品の顔とも言えるラベルを漢字表記から「蹄鉄」のマークにリニューアルしました。

簸上清酒・田村浩一郎専務
「日本酒は海外への輸出が右肩上がりで、数少ない成長市場」

見据えるのは、海外の市場です。和食ブームにも乗って日本酒もアジアをはじめ海外で人気が上昇。簸上清酒でも2019年から香港などをはじめ約10カ国に輸出しています。「脱漢字」で外国人にも分かりやすいパッケージ、そして海外でも人気の「ウマ娘」とのコラボで認知度をアップ、海外での販路拡大を狙います。

簸上清酒・田村浩一郎専務
「蔵を続けていくことこそが本当の目的なので、ちゃんとトレンドをウォッチしたり新しい技術にも挑戦したりする」

伝統の地酒に新しい風を…創業300年を超える老舗の生き残りをかけた挑戦が続きます。

TSKさんいん中央テレビ
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