岡山県吉備中央町の浄水場から国の暫定目標値を超える有機フッ素化合物、PFASが検出されたと町が発表してから半年が経ちました。水の安全性を根底から揺るがすこの問題はなぜ起きたのでしょうか。山本町長がOHKの単独インタビューに応じました。

(吉備中央町 山本雅則町長)
「なぜこんなことになったか。すぐやれるべきことはやった。しかし、まだ原因究明は100%ではない」

PFAS問題に揺れた半年間を振り返るのは吉備中央町の山本雅則町長です。町は2023年10月、住民の一部が飲用水の供給元として利用する円城浄水場から国の暫定目標値の最大28倍のPFASが検出されたことを明らかにしました。

PFASは発がん性のリスクなど健康への影響が指摘されていて、2020年度から3年間、目標値を超えて検出されていたといいます。

Q:町長が、PFASが目標値を超えていたと知ったのは?
(吉備中央町 山本雅則町長)
「(発表3日前の)2023年10月14日、外で、電話で(報告を)受けた。すぐ総務課長に言って幹部を集めた。3年間、もっと早く水道の供給を停止できた。そのことは職員、私を含めて対応が適切でなかったのは間違いない」

長年、円城浄水場の水を飲用水として利用してきた小倉博司さん。見せてくれたのは問題発覚後に自身が行った血液検査の結果です。

(円城浄水場PFAS問題有志の会 小倉博司代表)
「259。これが4PFAS(の合計値)」

アメリカのガイドラインで要注意とされる20ナノグラムを大きく超えた数値です。

(円城浄水場PFAS問題有志の会 小倉博司代表)
「まさかこんな数字が出るとは思っていなかった。驚くのを越えてあ然とした。病気のリスクがある問題なので、長期に渡って経過観察するシステムを町に作ってほしい」

町の発表から約1カ月後、県による調査で円城浄水場の水源近くの沢から目標値の約1240倍にあたるPFASを検出。その数値の高さは全国にも大きな衝撃を与えました。

(戸田奈沙記者)
「有識者は、去年(2023年)までこの場所に置かれていた使用済み活性炭からPFASが流れ出た可能性が非常に高いとみています」

水源だったダムの周辺で発見されたのは使用済みの活性炭が入った袋、約300個。目標値の9万倍のPFASも検出されたため、この活性炭が発生源である可能性が高いとみられています。

実はこの場所は「円城財産区」という町などが管理する土地。活性炭の所有業者と交わした土地の貸し借りの契約書には使用目的として「原材料置き場」と記されています。

(吉備中央町 山本雅則町長)
「誰も(約15年前には置かれる物が)悪いものと思っていないし、土地の有効活用を区域民のためにする思いだったと思う。土地を貸したことも仕方ないし、業者も当初は悪意を持ってではないと思う」

県は当初「再利用の目的があれば廃棄物にあたらない」としていましたが、約15年間野ざらしで置かれていたことなどから2024年2月、産業廃棄物と断定。所有業者に対して行政指導を行いました。専門家は廃棄物であれば保管方法が変わってくると指摘します。

(京都大学大学院 原田浩二准教授)
「PFAS(PFOS・PFOA)を含有する廃棄物であれば、保管において技術的な留意事項が環境省から示されている」

PFASを含む廃棄物には、周囲に囲いを設けるなど流出を防ぐためのガイドラインが定められていますが、原田准教授によると、再利用する可能性がある原材料はこのガイドラインの適用外だということです。

(京都大学大学院 原田浩二准教授)
「今回は廃棄物か有価物か線引きが難しい事例。この状況で野ざらしになっていたことは汚染を引き起こした点で問題だった」

PFASの危険性に対する認識の甘さが一因となった今回の問題。町は今後住民の健康面について岡山大学と連携し、経過を見ていきたいとしています。

岡山放送
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