新幹線で結ばれた福井に関する特集です。福井の洋菓子店で連日、行列ができるほど人気のアップルパイが販売されています。そのパイに使われているリンゴは信州産。長野県高山村の100歳の農家が育てています。

■「一度食べたら忘れられない」

こんがりと焼き上がったアップルパイ。

これを目当てに店の外には行列ができていました。この日は雨で、晴れていれば、もっと並ぶそうです。

金沢市から:
「一度食べたら忘れられない。最低1時間以上は待った方がいいかなと。きょうもそれぐらいを目標にして」


こちらは福井県永平寺町の「アトリエ菓修」。永平寺門前の洋菓子店です。

オープンするとー。

店員:
「3個ですね。ありがとうございます」

アップルパイが次々と売れていきました。

金沢市から:
「3個制限いっぱいに買いました。食べられる幸せをゆっくりかみしめながら食べたいな」


作っているのはオーナーの奥河原修造さん(75)。20代の頃、フランスの5つ星ホテルやチョコレートショップで働いた経験がある名パティシエです。

帰国後、福井市内で洋菓子店を営み一度、引退しました。

しかしー。

アトリエ菓修 オーナー・奥河原修造さん:
「引退するつもりでいたけど、とてもじゃないけど引退させてもらえないんで、お客さんから『少しでもいいから、わずかな数でもいいから作り続けて』と。これがもう、きついようで、ありがたい言葉です」


■甘さと酸味のバランス

2011年、出身地の永平寺町で小さな店を開き、今も繁盛しています。人気のアップルパイのおいしさの秘密ー。

それは「生地」と「リンゴのコンポート」にあります。

バターを包むようにして折り畳み、何回も「伸ばしては折る」を繰り返した生地はー。

オーナー・奥河原修造さん:
「(焼くと)薄い層が浮いてくるから、口当たりサクサクの軽い感じに。これがこだわりですね」


生地に乗せる「リンゴのコンポート」は甘さと酸味のバランスが考え抜かれています。


形を整え、220度のオーブンで約25分を焼くと、アップルパイの完成です。

(記者リポ-ト)
「いただきます。生地サクサクでおいしい。口に入れた瞬間、バターのいい香りが広がってきます。後からリンゴの程よい甘みと酸味も感じられておいしい」


■リンゴは100歳の農家が栽培

味の決め手となっているリンゴのコンポート。

実はー。

オーナー・奥河原修造さん:
「約50年前からお付き合いさせてもらっている長野県の高山村のリンゴ、紅玉リンゴです。北は青森、山形、南は岐阜あたりまで4カ所ぐらいリンゴを試したんですけど、その中で高山村のリンゴは一番、ガッと響いた。ビビッときた。好みの味で、『これは気に入った』と。それから、もうずっと」


リンゴ畑が広がる高山村。

電動カートで畑にやってきたのは、中村梅吉さん。4月12日で100歳になりました。

奥河原さんにリンゴの「紅玉」を提供している生産者です。

「紅玉」生産者・中村梅吉さん:
「畑が待っているから(シーズン中は)夜が明けたら『畑行くぞ』と」


■80年近く栽培 メインは「紅玉」

栽培している「紅玉」は少々、小さ目で、硬めですが、調理や加工に適していると言われています。

戦地から帰り昭和21年頃から、80年近くリンゴ栽培を続けてきた中村さん。他の品種も栽培していますが、今もメインは紅玉です。

「紅玉」生産者・中村梅吉さん(99):
「好きなもんだから、赤くてきれいだから。『紅玉』の時期になると、毎日、見に行くのが楽しみなもんでね。リンゴだと愛情をもってやっていかないといいふうになりませんね」


持参したアトリエ菓修のアップルパイを改めて中村さんに食べてもらうとー。

「紅玉」生産者・中村梅吉さん:
「これはうまいや。こうやってリンゴを入れて販売すればこっちも助かるわ。菓修さんも上手だ。こんなにおいしく作って」

記者:
「奥河原さんが『これからも作り続けてほしい』と言っていたが?」

中村梅吉さん:
「ありがたいね。ますます元気出して、おいしいもの作らなきゃいけない」


■名パティシエの手で珠玉のアップルパイに

半世紀もの間、中村さんのリンゴを使ってきた奥河原さんはー。

アトリエ菓修 オーナー・奥河原修造さん:
「梅吉さんが『奥河原さん、紅玉のことなら私に任せといて』と言われたんです。自信があるのかどうか、それだけ手をかけてるってことだと思う。あれは印象に残ってね。できるだけあそこで作り続けてもらいたいなと」


多くの人に味わってもらうため、購入は1人3個までとなっているアトリエ菓修のアップルパイ。この日は昼過ぎに完売しました。

永平寺町から:
「めちゃくちゃおいしそう。楽しみです」

娘:
「アップルパイ、かったよ~」

延伸した北陸新幹線に乗って新潟からー。

新潟から来た夫婦:
「見て見て、やったぜ。長い道のりでした。おいしくいただきます」

従業員:
「ごめんなさい。完売しちゃったんですが」

購入できなかった人もー。

永平寺町から:
「きょうはチャンスかなと思って来たが、目の前で終わりました」


昔ながらの信州リンゴを使った、名パティシエの手による珠玉のアップルパイ。

これからも多くの人を魅了しそうです。

長野放送
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