「失言は放ちたる矢の如し」という古いことわざがあるそうです。

2024年4月、入庁式での静岡県・川勝平太 知事の不適切発言は、結局、自らの地位を射抜くこととなりました。

川勝知事の失言は今回が初めてではありませんが、4期15年どのような発言があったのか振り返ってみました。

辞職に追い込まれた不適切発言

2024年4月1日、新規採用職員への訓示が「職業差別ではないか」と問題視され、電撃辞任へと至った川勝平太 知事。いま一度、発言を振り返ります。

静岡県・川勝平太 知事:
実は静岡県、県庁というのは別の言葉で言うとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆さま方は頭脳・知性の高い方たちです。ですから、それを磨く必要があります

-ゲストの皆さん、改めてこの発言を聞いていかがでしょうか?

落語家・春風亭昇太 師匠:
言葉の順番が違うと思います。「知性の高い人がシンクタンクに入り、生産者の方々を支える」と言えば良いですよね。最後に自分のことを持ち上げるのはダメです。最後に自分を落とす感じで話すよう心掛けています

元フジテレビアナウンサー
笠井信輔 さん:
何をしゃべったかではなく、どう受け取られたかが問題なので、この発言は完全にダメでしたね

お笑いコンビ「フォーリンラブ」
バービーさん:
私は生産者の方の気持ちを思うと涙が出るほど悲しかったです

約20分の訓示の中の一部ではありますが許される発言ではなく、結果的に発言を撤回し辞任に至りました。この15年これまではどうだったのか、新人への訓示を振り返ります。

これまでの知事の訓示は?

「公僕」とも呼ばれる公務員ですが、僕(ぼく)とは「しもべ」を意味しています。

憲法で「すべての公務員は全体の奉仕者」と規定されていて、新人への訓示では、その意識づけをすることが多くあります。

旧自治省の官僚を経て静岡県のトップをつとめた石川嘉延 知事。

2009年、新人に対して「県民のためになる県庁を実現するため邁進してほしい」と訓示していました。

石川嘉延 知事:
皆さんは、これから仕事の相手になる様々な人たちと接触することになると思いますが、ある区切りがついた時に「こういうお役に立っていたのか」「これはまずかったかな」など様々な仕事の実感を覚えると同時に、それを通じて「公に役に立つというのはこういうことだな」と達成感を必ず味わえるはず

「富士山よりも高い志を」

その後任として2009年7月に初当選した川勝平太 知事。「経済の歴史分析」を専門とする大学教授は政治が経験ないまま政界へと転身しました。

新人職員を初めて迎えたのは2010年4月1日です。

新人123人は競争率8.6倍の採用試験を勝ち抜いて選ばれた人たち。

川勝知事は「380万人の県民を幸せにする能力を身に付けてほしい」と呼びかけました。

川勝平太 知事:
ともかく日本の理想郷をここに作るという志をまず立てる。その志は富士山よりも高い。富士山のように高い

霊峰・富士への「畏敬の念」と「あふれる愛」が込められていました。

新人職員:
初めて知事にお会いしてお話を聴いて、やる気が高まったところです

新人職員:
よりよい静岡をつくりたいと思って県庁職員を志しました

東日本大震災 直後の訓示は?

その11カ月後、2011年3月に起きたのは「東日本大震災」です。

静岡県は国から岩手県の支援を要請され知事も現地に入りました。

南海トラフ地震の発生が予想される静岡県で公務員はどんな存在であるべきか。新人に対する言葉にも力がこもります。

川勝平太 知事:
危機管理をするのは県庁の役割。仕事は現場にあるということを、ゆめ忘れない。我々は県民の生命の安全・安心を図るためのしもべです。公僕ですから危機意識に照らされていないといけない。自らの心身が危機意識に照らされているということがとても大切です

「最低10年は辛抱を」

期待に胸を膨らませ県庁に入ってくる新人たち。人生の先輩としての思いを言葉にしたこともありました。

川勝平太 知事:
最低10年はしっかり辛抱しなければなりません。上司に恵まれなかったり、同僚の理解が得られなかったり、いろいろな摩擦があって挫折というものが必ずある

伝えたのは「見返りを求めず県民に尽くすこと。挫折しても、我慢することの大切さ」でした。

富士山世界遺産登録の翌年は…

そして、2013年6月に叶った夢が富士山の世界遺産登録。信仰の対象、芸術作品を育んだ文化的価値が世界に認められました。

その翌年の春、137人の新人を前に…

川勝平太 知事:
道理をわきまえ、情理を尽くして、そして、信念を貫くことが大切。日本の宝が世界の宝になりました。その富士の姿に恥じないような人になっていただきたい

仲間の大切さを伝えて

また仲間の大切さを伝えた時もありました。

川勝平太 知事:
370万県民全体に奉仕するという大きな大役を仲間と共に引き受けることになったということですから、立派な人間になっていただきたいという風に思っております


平成が終わり新しい時代が始まった2019年4月1日。新人への訓示の最中、元号の変更が伝えられました。

川勝平太 知事:
(令和の)「和」の意味はなんでしょう? 調和の意味もありますけど3+1の「和」と言いません? 1+2の「和」っていうでしょ?足すことですね。「和」という字が入ったのは真に日本らしいという風に思います

世界をパニックに陥れた新型コロナの感染拡大。新人を集めての辞令交付は中止され、
3年間は各課別々に行われました。

最後の訓示では…

そして2024年。新しい年の幕開けの日、能登半島が地震・津波に襲われました。4月1日、新人233人に対し川勝知事は…。

川勝平太 知事:
今年はご案内の通り能登半島で凄まじい地震があり、まだ厳しい生活をしている方がたくさんいます。一番、最初に心得ておくべきことは危機管理です。私たちは公僕ですからまず自己の危機管理を最優先にしつつ人を助ける為にまず自分が何をすべきかを心得ておかねばならない

「奉仕者としての責務」「我慢の大切さ」「富士山への愛」「危機意識」

知事就任から4期15年、川勝知事から新人職員へは多くのことが伝えられました。

これまでの新人への訓示をご覧いただきました。
 
「県民の生命の安全・安心を図る」「最低10年は辛抱を。上司に恵まれない、摩擦・挫折など必ずある」「情理を尽くして信念を貫く」(相手の気持ちを汲み取り、信じる道を進むという意)など様々なメッセージが伝えられていました。

落語家・春風亭昇太 師匠:
川勝知事にはお会いしたこともあるし、シュッとした感じの良い人という印象でしたね。「伝えたかったこと」と「言ってしまったこと」が釣り合わず、このような結果になったことを残念に思っている県民も少なくないのでは

元フジテレビアナウンサー
笠井信輔 さん:
川勝さんは話が上手な方だと思います。そういう人は話にインパクトを持たせようと過激な表現を使うこともあって、それが度を越してしまった感じ。初めての訓示の時のように「富士山よりも高い」を「富士山のように高い」と言い直したように「モノを作ったりする人のように」と言い直せば良かったのに

お笑いコンビ「フォーリンラブ」
バービーさん:
「公僕」は県民とってはありがたいけど、今どきの職員の人は「公僕」という言葉でハラスメントも封じてしまう組織だと感じる人もいるのでは

一方で、近年は人を持ち上げる際に誰かを卑下する、傷つける発言が目立つようになりました。

2019年:一部の県議を「やくざ」「ごろつき」と評する
2020年:当時の菅首相について「教養レベルが図らずも露見した」と発言
2021年:選挙の応援で御殿場市について「コシヒカリしかない」と蔑む
2024年:藤枝東高校について「ボールを蹴るのが一番重要」と発言したほか「磐田は浜松より文化が高かった」

など世間を騒がせました。

落語家・春風亭昇太 師匠:
目の前の人に向けてだけでなく、それ以外の多くの人も見ているのだと言うことを意識して話さないと

元フジテレビアナウンサー
笠井信輔 さん:
私もフジテレビ時代、炎上アナウンサーなどと言われましたが、川勝知事の炎上商法的な話しぶりを諫める人がいなかったのかな

お笑いコンビ「フォーリンラブ」
バービーさん:
お客さんありきと思ってますので、お下劣大好きだけど話す内容も時代とともにアップデートしていかなければと考えています

街頭インタビューでも、知事について望むことについて「寄り添ってくれる人」「平等に見てくれる人」「周辺の自治体と連携が取れる人」などと言う意見が聞かれました。

これから候補者が演説などを通じてどのような発言をしていくのか、私たちもしっかりと見ていかなければなりません。県知事選は5月26日に行われます。

テレビ静岡
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