プラスチックのレールを小さな列車の模型が走る「プラレール」。発売から今年で65年となり、親子3代で遊んだという家庭もあるかもしれません。レールの組み合わせによってさまざまなレイアウトを楽しむことができますが、イベントなどでオリジナルのレイアウトを実現させることを仕事にしてしまった鳥取県倉吉市の男性を取材しました。背景には、シングルファザーとして病気の子どもを支えた親子愛がありました。

レールトイレイアウター・真壁浩志さん
「イメージの具現化ができる。自由な発想でできる」

見る人を圧倒する立体的なレールのタワー。こちらは複雑な曲線レールがコンパクトに収まっています。まるで芸術作品のようなプラスチックレールのレイアウト。
手がけたのは、倉吉市の真壁浩志さん。10年ほど前からイベント会場などに招かれ、プラレールのレイアウトを設営、レールトイレイアウターを名乗り、なんとプラレールの組み立てを生業にしています。
でき上がったレイアウトや製作過程を紹介するYouTubeチャンネルの登録者は13万人、再生回数が最も多い動画はなんと5000万回超え!8割が海外からの視聴者で、卓越した技と表現力が世界から注目されています。

この日は週末のイベントを前に、会場でレイアウトの組み立て。立体的な空間をいかに整然と作り上げるか…技術とセンスが問われます。

レールトイレイアウター・真壁浩志さん
「この組み合わせかっこいいなというのを最初作る。そこからそれを繋げていく。
点と線を結ぶ感じ。いつもノープラン」

使用するレールやパーツは全て自前。年間100万円以上をつぎ込んでいます。もはやプラレールに全てを捧げています。
実は真壁さん、子どもの頃はプラレールに全く心をひかれず、レイアウトづくりにのめり込むようになったのは大人になってからだといいます。高校卒業後、会社勤めをして21歳で結婚、3人の子供に恵まれました。しかしその後離婚し、シングルファザーとして3人の子どもを育てることになりました。さらに末っ子が重い病気に…。

真壁浩志さん
「4歳になってすぐ、ネフローゼという病気になった。たんぱくが尿から漏れる、身体が浮腫む。血液の病気。3カ月入院して寛かい、治るところまでいったが、すぐに再発してずっと入院が続いた」

入院生活は2年に及びました。

真壁浩志さん
「母が仕事を休んでくれて、平日は母、土日は僕が看るという形で交代で付き添いをした」

病院から一歩も外に出られない息子のために始めたのが…。

真壁浩志さん
「注射を我慢したらプラレールを買ってあげるよ、という感じにやったら、頑張って耐えてくれていた」

大好きなプラレールを病室に持ち込んで、治療に耐える息子を元気づけました。

真壁浩志さん
「結局ネフローゼの治療自体はダメだった。慢性腎不全というかたちで腎臓機能を止めて、自宅に機械を用意して寝ている間に透析していた。10歳の時に腎臓移植をしてそこから治った」

約7年間にわたる治療生活。息子の心の支えはずっと「プラレール」でした。一方、真壁さんは息子を喜ばせたい一心でレイアウトづくりを追求。イベント会場に出向いては、ひたすらレールを組み立てたといいます。長年の研究で技術を習得した真壁さんは…。

真壁浩志さん
「フリーマーケットとかで場所を借りて組み立てて見てもらったりとか、一時からお願いしますという声が増え始めた」

やがて真壁さんのレイアウトの緻密さ、美しさに驚いた人たちから「うちでも設営してほしい」という声が相次ぎ、10年ほど前に真壁さんは会社を辞め、レールトイレイアウターとして生計を立てていく決意をしたそうです。今では中四国を中心に全国からレイアウトのオファーがあるといいます。

真壁浩志さん
「(自分の作品を見て)レールを組み立てる時の参考にしてもらえれば」

発売から65年…親子3世代に渡って愛されてきたプラレールで、これからも家族がつながるように…これからも真壁さんはプロとして、既存の概念にとらわれない自由なレイアウトをつくっていきたいと話しています。

TSKさんいん中央テレビ
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