東日本大震災から13年。自らも被災した経験を持つ岩手県一関市の寺の住職が取り組む「森の寺小屋」。この活動に込めた思いを取材しました。
一関市にある「藤源寺」は、550年以上の歴史があります。寺の境内には子どもたちの楽しいそうな声が響いています。
ここで行われている取り組み「森の寺小屋」は、お寺の敷地を開放し子どもたちに学びや遊びの場を提供する活動です。
この活動をしているのは藤源寺の住職・佐藤良規さん。
藤源寺 佐藤良規住職
「やっぱり子どもたちが健やかに成長すること以上にうれしいことはない」
佐藤さんが寺小屋を始めることになったきっかけは東日本大震災でした。
あの日、釜石市を訪れていた佐藤さんは、一関市のお寺に帰ろうと車を運転していたところ津波に襲われました。
なんとか一命をとりとめた佐藤さんは避難所になっていた釜石小学校で一夜を過ごし、翌日の朝、被害の大きさを目の当たりにしました。
藤源寺 佐藤良規住職
「そこらじゅうの家屋が倒壊しているし本当にがれきの山になっていた。現実感のない恐ろしい光景でした」
震災後、佐藤さんは被災地の役に立ちたいと被災者の話を聞いたり子どもの体験学習をサポートするボランティア活動を始めます。
そして活動の中で佐藤さんは震災により子どもたちが安心して遊べる場が減ってしまったと感じるようになりました。
「子どもたちの居場所をつくりたい」と、佐藤さんはその思いから寺小屋を開くことを決意しました。
藤源寺 佐藤良規住職
「昔の寺子屋のように子どもたちが集って学んだりご飯食べたり、安心して過ごせる場所としてこのお寺を開こうと」
2019年、佐藤さんは「森の寺小屋」の取り組みを始めました。
毎週火曜と木曜の午後に寺を開放し、一関市だけではなく宮城県などからも子供たちが集まっています。
ここではみんなで遊んだり一人で過ごしたり、それぞれが自由に活動します。
中には裏山の竹を切ってきて小屋を建てようとする子どももいるということです。
この日は室内でカードゲームを楽しんだり、作業小屋の屋根に登ったりと思い思いの過ごし方をしていました。
遊びに来た子ども
「屋根登ったりゲームしたり、あとはカードゲーム」
「(通い始めて)4年ぐらい。敬語使わなくていいから楽です」
「誰とでも仲良く上下関係を気にせずに交流できるところがいい所だと思う」
そして佐藤さんが予想していなかった事も起こります。
藤源寺 佐藤良規住職
「近所の大人の人たちや赤ちゃん・未就学児を連れた母親が来て、新しい人のつながりのコミュニティーができてきた」
子供の居場所作りを目的に始めた活動に大人たちも集まり始め、一緒に農作業するなど様々なつながりが生まれています。
藤源寺 佐藤良規住職
「お寺を一つのハブにして、いろんな人たちが自分らしく楽しく喜びを持って生きていいと思えるような活動を続けていきたい」
未来に「生きる喜び」をつなぎたい。
藤源寺の「森の寺小屋」にはいつも子供たちの笑顔があふれています。