岩手県紫波町で暮らす中学生・北條百桜さんには脳性まひという障がいがあります。
2024年も大好きなスキーに挑戦した百桜さんと家族の葛藤と成長の歩みを見つめました。
3月3日、安比高原では障がい者スキー交流会が開催され、手足の障害や知的な障害がある人が参加しました。
県障がい者スポーツ協会が主催した「障がい者スキー交流会2024」は、インストラクターやボランティアなどがその活動を支えています。
この日を心待ちにしていた人がいます。
北條百桜さん(13)、岩手大学教育学部附属特別支援学校中学部の1年生です。
北條百桜さん
「楽しみー」
755グラムで生まれた百桜さんは、生後約半年で「脳性まひ」と診断されました。
初めて歩いたのは5歳の時でした。
百桜さんは紫波町で、父・直人さん、母・麻里さんと暮らしています。
生活の中心は百桜さんで、家具も百桜さんが使いやすい高さに調整されています。
百桜さんは、ちょっと心配症でとっても几帳面です。以前、ドライブ中にパンクをしてからというもの、車に乗るたびにタイヤが気になります。
母・麻里さん
「なにチェックですかそれは」
北條百桜さん(当時10)
「パンクしていないかチェック」
学校に行く時間は、毎日7時26分と決まっていました。
北條百桜さん(当時10)
「ママ、そろそろ時間だよ」
母・麻里さん
「うまくできない時、もどかしくて、わーとなったりとか。何でわたしはできないの?という時もあるけども、このままを受け入れてあげたい」
そんな百桜さんがスキーに取り組み始めたのは、小学校低学年の頃です。
座った状態で滑ることができる「バイスキー」に、比較的緩やかな斜面で取り組んできました。
北條百桜さん
「スキーは大好きです。スピード出た方が楽しい」
成長と共に目標はより高く、2024年はゴンドラで頂上に行くことが1つの目標でした。
スキー交流会当日の3月3日、母・麻里さんは複雑な思いで娘を見守っていました。
母・麻里さん
「彼女がよりよく楽しく過ごすためには、サポートは欠かせなくて。親の力ではどうにもできない部分を周りに助けてもらったり。申し訳ないなって思うんですね」
歩いて坂を登れない百桜さんのために、スノーモービルが準備されていました。
日本プロスキー教師協会 板垣玲奈さん
「最初ぐっと行くけど、玲奈先生絶対離さないから。絶対離さないから大丈夫だよ」
たくさんの人の手を借り、無事に頂上へと到着しました。
母・麻里さん
「こんなに大変なんだなと思って、感謝しかないですね。1年間言っていたので『ゴンドラ乗りたい』って」
目の前に広がる山の上の雪景色は、初めて見る世界でした。
北條百桜さん
「景色はやっぱり、ちがっていた。頂上から(様々なものが)よく見えた」
『周りの人と同じように滑りたい』と、この日は初めて「立位」にも挑戦しました。
北條百桜さん
「最初は立位のスキーは怖かった」
母・麻里さん
「あんなに人をかけてもらって、申し訳ないなと思うけれど、やってもらった結果、すごく充実した濃厚な時間を過ごせる」
周囲の支えと共に何度も立位のスキーにチャレンジした百桜さんは、生まれて初めてスキーを履いて立つことができました。
母・麻里さん
「彼女が立っていることもそうだったけれど、それに関わってくれた人たちのことを思うと、こみ上げるものがあって」
『今年も会えてうれしかった』と関わった人に手紙で感謝を伝えた百桜さんの気持ちは、すでに来シーズンに向いていました。
北條百桜さん
「立位をやってみたい。ストックを実際に持って、急斜面にも挑戦してみたい」
確かな成長をみんなで喜びあった一日、大切な宝物を胸に百桜さんのスキー交流会が終わりました。