去年12月に保険適用されたアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」の投与が県内の医療機関でも始まりました。広島市では初めてとなる薬の投与が70歳の女性に行われました。

広島市西区の荒木脳神経外科病院。
レカネマブの投与を前に院長が70歳の女性患者に治療の流れなどを説明しました。

【荒木脳神経外科病院・荒木勇人院長】
「やってみないとわからないところもあるが、点滴を1年半(投与)したら半年くらいは物忘れの進行が伸ばせたという報告がある」

女性は4年ほど前から記憶力の低下が認められ、検査の結果、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドベータというたんぱく質が脳内にたまっていることが確認され「軽度認知症」と診断されました。

【患者の夫】
「本当言えば回復基調にもっていければと思うけど、だめでも今より進行せず(症状が)止まっている状態に持っていければ」

【若木記者】
「こちらが新たに保険適用されたアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」です。病気の進行そのものを遅らせる効果が期待されています」

レカネマブは日本とアメリカの製薬会社が共同で開発したもので症状の一時的な改善を図る従来の薬と異なり、アミロイドベータを減少させ、症状の進行を遅らせる新しい治療薬です。

【荒木脳神経外科病院・荒木勇人院長】
「脳がダメージを受ける物質そのものを取り除くという意味で画期的な薬になります」

アルツハイマー病による認知症発症前の「軽度認知障害」や軽度の認知症と診断された人が投与の対象で去年9月に厚生労働省に承認されました。
体重50キロの人が使う場合の薬の価格は年間でおよそ280万円とされ、去年12月に保険適用されることになりましたました。

午後2時すぎ。
女性への投与が始まりました。
およそ1時間かけて点滴で投与します。
「レカネマブ」は2週間に1回、1年半をめどに投与が続くということです。

【荒木院長】
「認知症の進行を遅らせることによって社会的活動ができる時間が延びたらいいなと思う」

認知症患者にとっては画期的な薬である一方で、合併症の可能性がある患者には投与できず、治療費も高額で、専門医やMRIなどの医療体制が整った限られた医療機関でしか投与できないなど、課題もあります。

【ひろしま脳神経内科クリニック・田路浩正院長】
「私のクリニックは一人でやってますのでレカネマブの投与ができないということで医療連携を取らせていただいています」

5日投与された女性はひろしま脳神経内科クリニックに通院していましたが、クリニックにはMRIなどがなく、今回、連携した病院で投与を受けることになりました。
レカネマブを取り扱う製薬会社「エーザイ」によりますと県内ではことしに入り、女性を含めて7人の患者への投与が始まっていて、今後も希望する患者への投与が予定されているということです。

【荒木院長】
「新しい薬をきっかけに認知症をしっかり理解してみんなで認知症の方を支えてあげる社会ができる、そういうきっかけになればうれしい」

テレビ新広島
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