岩手県宮古市を流れる閉伊川流域では、江戸時代から「へかわがみ」と呼ばれる和紙が作られてきた。
しかし、時代の流れとともにその歴史は途絶え、いつしか作り方を知る人もいなくなったという。

「紙漉(す)き屋 群青」を営む栗橋くみ子さんは11年前「へかわがみ」の名前を残そうと作業場を開いた。

Q:どうして残そう、伝えようと思ったのか。

紙漉き屋 群青 栗橋くみ子さん
「その『へかわがみ』っていう名前を知っている人が少なくなっていたので、寂しいような、いたわしいような気持になった。私が10年やったら名前が消えるのが延びるのでは、さらにうわさに残ったら2年くらい延びて12年残るんじゃないかなと」

和紙作りの作業は木を切るところから始まる。西島芽アナウンサーも体験させてもらった。

紙漉き屋 群青 栗橋くみ子さん
「この木は、紙の材料となる楮(こうぞ)です」

栗橋さんが始めた当時「へかわがみ」の作り方を知っている人はいなかった。
昔のわずかな資料や他の地域で行われている和紙作りを参考に新たな「へかわがみ」をつくっている。

完全に昔と同じものを作ることはできないというが、それでも作り続ける栗橋さんを支えるのはこの楮(こうぞ)の木だという。

紙漉き屋 群青 栗橋くみ子さん
「楮(こうぞ)の木は毎年全部切ってしまう。普通はそんなことをしたら弱ってしまうが、横に根を伸ばして次の子株を作っていく。そういうのが何か凄く健気で大好きです」

切った楮(こうぞ)は機械で蒸して皮を剥いだ後、柔らかくするためにアルカリ性の水溶液を入れて煮る。
(煮たものを)を念入りに叩き、水に入れてほぐすとフワっと広がるようになる。
これにトロロアオイという植物の根からとった粘りのある液体を加えてほぐしたら紙をすく準備の完了だ。

Q:自分で一から作ることの良さは?

紙漉き屋 群青 栗橋くみ子さん
「楮(こうぞ)とトロロアオイとお水だけで全部、自分で手を掛けたものだから安心です。体にも優しい。匂いだったり、手触りだったりというところを楽しめる」

いよいよ紙をすく作業に入る。今回は2つの方法を体験する。
1つ目は流し漉きと呼ばれる方法で薄く均等に繊維を広げる。
繊細な作業に苦戦しながらも3枚目にようやく完成させた西島アナウンサー、きれいに繊維を広げることができた。

2つ目の方法は型に流しいれる「溜め漉き」で、今回は丸い型を選んでみた。
水色とピンク色に染めたものを追加してアレンジも。

紙漉き屋 群青 栗橋くみ子さん
「ほわっと薄いのが広がった感じになるので良しとしましょう」

後はそれぞれ乾くのを待って、数時間後ついに完成。

西島芽アナウンサー
「可愛くできました。ちょっとここのふんわり具合も個性があって、いいのではないでしょうか」

紙漉き屋 群青 栗橋くみ子さん
「ここのふわふわは凄く和紙らしいふわふわだから、無いよりはあった方がよかったかもね」

西島アナウンサーが先につくった流しすきの方の評価は?

紙漉き屋 群青 栗橋くみ子さん
「これは80点。でも最初のこれ、浄土ヶ浜の大波(みたい)でしょ。これって1回しかできないから、これも記念になる」

西島芽アナウンサー
「実際につくってみて難しかったが、一つ一つの作業に意味があって和紙の大切さを感じることができました」

紙漉き屋 群青 栗橋くみ子さん
「よかったです。ちょっと焦ったりすると全部(和紙に)でてくる」

西島芽アナウンサー
「その時の気持ちがまさにこの紙にでるなと思いました」

栗橋さんは小学生から大人まで和紙作りを楽しめる体験会を開いている。
参加する人に伝えたいことを聞いた。

紙漉き屋 群青 栗橋くみ子さん
「失敗って思うけれど、実は自分が手をかけたもの。今はもう、きれいなものとか、清潔でなければいけないとか、そういう世の中になっているが、こういう紙を作るために土がついている楮(こうぞ)の木を切るとか、そういったことがあってここに来るので、全部丸ごと伝えたいです」

これからも「へかわがみ」は地域に伝わっていく。

岩手めんこいテレビ
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