熊本県の蒲島郁夫知事(76)が2024年3月に行われる県知事選挙に出馬しないことを表明した。くまモンの“父”でもあり、4期16年の間には熊本地震や新型コロナウイルス、豪雨災害などで県政のかじ取りを行った。

進退表明「熟慮に熟慮を重ねた」

12月6日に開かれた県議会の一般質問。

2024年3月に行われる熊本県知事選挙に向けて、前川收県議から去就を問われた蒲島郁夫知事は答弁を行い、「次期知事選に向けた私の決断についてお答えします」と語り始めた。以下、全文。

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熊本県・蒲島郁夫知事:私が自分自身の進退を判断する基準は、県政の流れが、私が最大の目標とする「県民総幸福量の最大化」に向けて確かな歩みを進めていけているかという、その一点にあります。

その観点から、私が知事の職を退くことで、県政の流れを妨げることはないのか、県民の期待はどうか、自身の気力と体力は十分かと、熟慮に熟慮を重ねてまいりました。

本県は今、ポテンシャルを最大限に生かした地方創生を実現し、日本の経済・感染症・災害・食料・環境の五つの安全保障に貢献する存在となっています。次の4年間は蒲島県政の成果を踏まえ、課題を確実に解決しながら、熊本の将来に向けた礎を強固にしていく、極めていく大事な期間です。

「政治は逆境と将来の夢の追求」

熊本県・蒲島郁夫知事:(前川)議員からは多くの県民のみなさんが、私に期待を寄せてくださっていることを、ありがたくもご紹介いただきました。私自身としても、県民の皆様の期待の高さを、心からうれしく思っています。

熊本地震・新型コロナ・豪雨災害とトリプルパンチとの戦い
熊本地震・新型コロナ・豪雨災害とトリプルパンチとの戦い

かえりみれば4期目の4年間、熊本は熊本地震・新型コロナウイルス感染症・令和2年7月豪雨災害のトリプルパンチとの戦いでした。

しかし、チーム熊本で困難に立ち向かう中で、令和3年11月にはTSMCの熊本進出という、それまで誰も予想できかなったビッグチャンスが訪れました。

このように政治というのは、逆境と将来の夢の追求が重なり合いながら、未来に向けて続いています。

しかし、人には命の限りがあります。政治に携わるものには、一人の人間として自身の進退を真に見極めるときが必ず訪れます。

「新リーダーに託す今が最も適切な時期」

熊本県・蒲島郁夫知事:私にとって進退の決断は、県政の総幸福量の最大化の理念に照らし、県政の将来の展望に沿ったものでないといけません。

この観点から、改めて本件の現状を見ますと、チーム熊本の力で今、創造的復興は目に見える形で進んでいます。

そして、令和2年7月豪雨についても、創造的復興と緑の流域治水の取り組みが着実に進んでいます。

新たなリーダーに託すとすれば、今が最も適切な時期
新たなリーダーに託すとすれば、今が最も適切な時期

流水型ダムについても、環境に極限まで配慮したダムの姿が国の努力によって見えつつあります。

長年、ダム問題に翻弄された、五木村、相良村の振興についても、その実現に向け全庁を挙げた取り組みが進んでおります。

TSMCの本県進出の対応についても、岸田首相が複数年にわたる国の支援を明快に約束してくださいました。

そしてこの流れの中で、将来に向けた県政のリーダーシップの担い手を考えた時に、仮に私が新たなリーダーに県政を託するとすれば、今が最も適切な時期ではないかという思いに至りました。

2024年3月の次期知事選へ不出馬を表明した蒲島知事
2024年3月の次期知事選へ不出馬を表明した蒲島知事

私は全国47の都道府県の中で最年長の知事であります。しかし、仮に次の選挙で県民の付託をいただいたとしても、次の任期の途中で限界を迎える可能性もあります。

県政は今、将来の夢に向けてよき流れを加速しております。

活躍を続けるくまモンの存在や、安藤忠雄さんの手により、近く完成する「子ども図書館」も未来に向けた夢のひとつであります。

この流れを踏まえるなら、今のこの時に有能な人物に県政を託すこと、それが本県のよき流れをさらに強く、さらに大きくし、将来的な県民の総幸福量の最大化を目指し続ける上で、最も望ましい選択ではなかろうかという思いに至りました。

熟慮に熟慮を重ねたうえ、この与えられた任期を全うした上で、次の知事選には出馬しないことを決断いたしました。

思いからか 時折声を詰まらせる様子も

熊本県・蒲島郁夫知事:私はこれまで長くにわたり、県民の皆さんを始め、議会の皆様、国や市町村の皆様からも蒲島県政の政治に対する深いご理解と多大なるご支援を頂いてまいりました。

常に県民総幸福量の最大化を願いながら、県政の推進にあたるというこの重要な任務を、皆様からの深い信頼と、私自身の皆様への変わらぬ敬愛、尊敬をもって続けてこられたことを、私は心から感謝いたしております。

私は15年前、この議場で川辺川ダム計画の白紙撤回を表明いたしました。その時、県民の85%は私の決断を支持してくださいました。

しかし3年前、令和2年7月豪雨災害は、それをはるかに超える豪雨災害でした。

それをどうやって乗り越えるかということで、私は30回にわたり、球磨川流域の皆さんの民意と向き合い、そこで得られた、また私が感じた球磨川流域の皆さんの民意は「命と清流を両方守ってくれ」。そのことによって、新たな流水型ダムを国に求めることを決断いたしました。

方向転換したダム問題について話し、時折声を詰まらせる蒲島知事
方向転換したダム問題について話し、時折声を詰まらせる蒲島知事

通常であれば、このような方向転換は、県民の皆様に受け入れられてもらえないものです。

しかし、その直後の調査で71.4%の県民がこの方向転換を支持してくださったことは、私は今も忘れることはできません…。

そして今でも、前川議員がおっしゃったように、多くの県民の皆さんが私を支持していることを感謝の念に堪えなく思っています。

「よき流れを有能なリーダーにつなぎたい」

熊本県・蒲島郁夫知事:私はこの良き流れを、強く大きくし、本県の発展を導く、有能なリーダーに県政をつないでいきたいと思っています。

この思いを胸に、残る課題の解決に向けためどをつけること、そして今のよき流れをさらに加速させ、50年、100年先の本県の発展に確実につなげる覚悟を持って、残る任期を全力で努めてまいります。

答弁の最後、議場で県民への感謝を述べた
答弁の最後、議場で県民への感謝を述べた

皆さん、本当にありがとうございました。

(テレビ熊本)

テレビ熊本
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