元交際相手の女性が男性と同棲するマンションに忍び込み、2人を刃物で襲った41歳の男が殺人未遂の疑いで逮捕された。男は被害女性へのストーカー行為で以前に逮捕されていて、警察も男に再三 警告していた。だが男は「ダメとはわかっている」「女性に連絡を取りたくなる」などと逆に警察に相談していたという。
深夜の通報「身体中を刺されて」
2023年10月28日（土）午後10時42分、浜松市の消防に女性の声で、「男性が刃物で身体中を刺されて出血がひどい。自分もあちらこちら刺されている」と、通報があった。
事件があったのは浜松市東区原島町のマンションの一室で、60代の男性と30代の女性が刃物で刺され、病院に搬送された。2人とも命に別条はなかったが、男性は重傷だった。
刺した男が逃走したため、警察は殺人未遂事件として男の行方を追っていたが、事件発生から約12時間後の29日午前11時頃、現場から16キロ離れた袋井市内のマンションで不審な男が見つかり、建造物侵入の現行犯で逮捕された。そして約1時間後に浜松市内のマンションの殺人未遂事件の容疑者としても逮捕された。
相次ぐストーカー行為の果てに…
男は、自称・浜松市中区に住む派遣社員の男（41）だった。
被害女性は男の元交際相手で、今は別の男性と同居している。男は2人の住むマンションの部屋に忍び込み、帰宅するのを待ち伏せして襲った。マンションの部屋は4階で、被害女性は以前に住んでいた家から、男性が契約するマンションに引っ越していた。男が、どうして女性の新たな住所がわかったのか、またどうして忍び込むことができたのか、警察は明らかにしていない。
被害女性は事件の9カ月ほど前から、警察に男のストーカー行為を相談していた。その相談内容から男の執着ぶりがうかがえる。
2023年1月、被害女性が男との金銭トラブルを警察に相談し、警察は男を指導した。この時には既に2人の交際は途切れていた。
そして2カ月後の3月、男は女性に対し「仕返しとして死んでやる」と自殺をほのめかすメールを送信した。3月には屋外で刃渡り6cmの文化包丁2本を持っていたとして銃刀法違反の疑いでも逮捕されている。
警察はこうした行為を受け、「これ以降のストーカー行為をしてはならない」と命ずる「禁止命令」を出した。
しかし、翌4月に浜松市内のコンビニで女性を待ち伏せて声をかけ、禁止命令に違反したとしてストーカー規制法違反の疑いで逮捕された。
ストーカー行為は懲役2年や罰金200万円も
ストーカー規制法はつきまといなど8種類の行為と、相手の承諾を得ないでGPSなどで位置情報を取得することを禁止している。8種類の行為とは、自宅や職場への押しかけや待ち伏せ、面会や交際の要求、無言電話やメールの繰り返し送付、汚物の送付、相手の名誉を傷づけるような文書のインターネット掲載、わいせつ写真などの送付、監視していると告げる行為、相手に大声で「バカヤロー」などと浴びせる乱暴な言動などだ。
被害の相談があると、警察は「ストーカー行為をやめなさい」と警告したり、禁止命令を出したりする。それでもストーカー行為が続けば、逮捕に至る。
罰則は、禁止命令に違反した者は、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金、ストーカー行為をした者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、禁止命令等に違反してストーカー行使をした者は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金だ。
「ダメとはわかっているが…」
今回の事件で警察は、被害女性の相談に対しどんな対応をしていたのだろうか。
警察は2023年1月に相談があって以降、GPSで位置情報を把握しボタンを押すと直ちに110番通報できる「緊急通報装置」を提供した他、月に1回女性と面談し近況を聞いていたそうだ。
9月20日の面談では特に問題は報告されず、10月の面談は警察と女性の日程調整ができず見送りとなっていた。警察は「危険度が高いと判断し、最大の対応をしていた」と話す。
ストーカー行為で再三 警告をうけ逮捕までされたにもかかわらず、男は2023年7月 警察に「女性に連絡を取りたくなる」「ダメとはわかっている」などと相談してきたそうだ。
警察が指導したものの、男はその後も被害女性の友人に複数回 電話をかけるなどしていたという。
男が29日昼に入り込み逮捕された袋井市内のマンションは13階建て。近所の住民によると、男は屋上にあがり、地上では消防がマットレスなどを用意していたそうだ。自殺防止のためだろうか。
（テレビ静岡）
