企業の公式ホームページで破産していないにも関わらず、破産したと嘘の情報が載せられる、つまりホームページが改ざんされる事態が相次いでいる。一体、誰が、どんな目的でやったのか。

「鹿児島王将」のサイトが突然“改ざん”

まずどのようなことがあったのか、見ていく。鹿児島県内で、あの餃子の王将が展開する「鹿児島王将」という会社があるが、8月31日の夜に、ホームページが突然改ざんされた。

改ざんされた「鹿児島王将」のホームページ
改ざんされた「鹿児島王将」のホームページ
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改ざんされた「鹿児島王将」のホームページ:
【重大】鹿児島王将株式会社の破産申請開始のお知らせ
業績悪化のため、鹿児島王将株式会社は、2023年8/31日付で、破産手続きを開始いたしました。それに伴いまして、騎射場店・中町店・国分店・伊敷店・笹貫店・吉野店・田上天神店・卸本町店が本日を持ちまして閉店となります。

スマホで検索をしても鹿児島王将のホームページが改ざんされているのが確認できる
スマホで検索をしても鹿児島王将のホームページが改ざんされているのが確認できる

破産管財人として実在の弁護士の名前が記載され、さらに「深くお詫び申し上げます」とも記されている。また、住所・電話番号・メールも、実際の弁護士のものが使われたという。まさにこの会社としては、公式のホームページに記載されているので、関係各所への対応に追われてしまったわけだ。

被害法人となった鹿児島王将の稲盛常務は、次のように話す。

鹿児島王将・稲盛幸広常務
鹿児島王将・稲盛幸広常務

鹿児島王将・稲盛幸広常務:
取引先の業者の方には、9月1日分かった時点で、経理で手分けして、こういう(破産の)事実はございませんという連絡をさせてもらった。警察の方にも、情報共有させてもらっている。

今回の改ざんは、嘘の情報を流して、他人の業務を妨害する偽計業務妨害の疑いに当たる可能性がある。鹿児島王将としては、被害届を出したので、警察が現在捜査を進めているところだ。

被害の背景に「恒心教」の可能性も

今回のこの鹿児島王将のみならず、全国で似たような事態が立て続けに起きている。

各地でホームページ改ざん被害が相次いでいる
各地でホームページ改ざん被害が相次いでいる

イット!で調べただけでもこれだけある。東京の精肉店・ジュエリーメーカー・コンサルティング企業や、神奈川、また大阪でも起きていることがわかる。これらの企業がどんな被害があったのかというと、8月31日~9月4日に、ホームページが改ざんされて、「破産手続き開始」というような文言が載ったという。

“不審なメール”まで送られたという
“不審なメール”まで送られたという

取材を進めて行くとこれだけではなく、「湘南国際村センター」「精肉店」「ジュエリーメーカー」の関係者・取引に対して、ホームページの改ざんのみならず、さらに“不審なメール”まで送られたという。

実際に精肉店の客に送られたメール
実際に精肉店の客に送られたメール

実際に精肉店のお客に送られたメールだが、「ご心配をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます」という謝罪の言葉とともに、「食中毒で下痢及び嘔吐を引き起こしたことが、保健所から連絡がありました」と綴られている。そして実在の弁護士の名前が記載され、関係各所にメールで送られてしまったという。

誰がどんな目的でやったのかというところを詳しく見ていく。さらに取材を進めると、ある企業は、「弁護士への攻撃ではないか」という。実際話を聞くことができた企業では、「実在する弁護士の名前が記載されていた」ともいう。この弁護士の名前というのが、実は、架空の団体「恒心教」に対して、恒心教が“嫌がらせ”をずっと続けている弁護士の名前なのだ。

恒心教というのは、2012年頃からネットで広がった架空の団体。先ほどの弁護士は、“ネット炎上”の被害者から依頼を受けたことをきっかけに、加害者の矛先がこの弁護士に向かってしまったと言うことで、今も嫌がらせを受け続けている。

2023年1月から、大学など全国で約30万件の爆破予告などのファックスを送っていた男が逮捕・起訴された。この時に供述として「恒心教を広めたかった」という話をしている。

8月にも、東急東横線渋谷駅で不審物が見つかった際に、段ボールに「恒心教」と言う名前が書いてあり、嫌がらせを続けている弁護士の写真が貼られていたという。

“サイバー攻撃”知識ある人物が関与しHP改ざんか

実際に今回の事案に対して、関与しているのかというところを、ITジャーナリストの三上洋氏に話を聞いた。

ITジャーナリスト・三上洋氏の見解
ITジャーナリスト・三上洋氏の見解

ITジャーナリストの三上洋氏によると、これまでの事件では、特定の弁護士の名前・写真が使われることが多かったのと、今回も同じような名前が使われているので、恒心教の可能性は高いのではないかという。ただ実際にホームページを改ざんできる技術はどうなのかと言うと、サイバー攻撃の知識がある人物がいれば、ホームページを乗っ取り、メールアドレスを盗み出せると指摘している。

キャノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦氏
キャノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦氏

キャノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦氏:
特定の団体が犯人だというのは早いと思う。しかし、もう一つ見方を変えると、メールアドレスを盗まれる、サイバー攻撃されるというのは、サイトが弱い、“脆弱”というのがある。ある意味で、セキュリティというのはお金がかかるから、ある程度お金を出しことを惜しまず、そして強いサイトを持って頂きたいと思う。

自社のホームページが、いつ・どこで・誰から攻撃されるかも分からないということは、常に頭の片隅に置く必要がある。
(「イット!」9月5日放送より)