6月25日午後4時前、JR新宿駅の山手線の車内で起きた「乗客パニック」

外国籍の50代とみられる男性が所持していた、布に包まれた2本の包丁の一部が見えて、乗客が逃げ出す騒動になりました。

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電車に乗り合わせた人:
いきなり車両が揺れ始めたんですよ、地震かなって一瞬思ったら、前の方の車両から人が大声で走ってきたんです。「逃げろ!」っていう男性の声とか、女の子の叫ぶ声とか。

なぜ混乱は起こってしまったのか?

「めざまし8」は、刃物を持った男性を目撃した乗客など10人を独自取材。証言から“集団パニック”の全容が見えてきました。

「刃物じゃない?」じわじわと広まった混乱

乗客によると、騒動が起きた時、車内は乗客同士の肩が触れ合うかどうかの混み具合だったといいます。

突然、「バラバラ」と音がして、音の鳴った方を見ると、ドアの付近にうずくまる男性の姿が。

男性の周囲には2~3人の乗客がいましたが、徐々に後ずさりしていったといいます。

よく見ると、男性の足元には大きな包丁が2本。刃の部分が見える状態で落ちていたのです。

「だいじょうぶです、だいじょうぶです」

男性は「だいじょうぶです、だいじょうぶです」と言いながら、包丁を拾おうとしたという
男性は「だいじょうぶです、だいじょうぶです」と言いながら、包丁を拾おうとしたという

男性は、そう言いながら包丁を拾おうとしましたが、酔っているようなフラフラの状態。

そして、男性が包丁を持とうとした瞬間に、乗客が逃げ出したといいます。

男性が乗っていた車両と同じ6号車に乗っていた人物によると、刃物を目撃した際、周囲から「刃物じゃない?」という声が2分間くらい続き、その後女性の悲鳴が上がったといいます。

さらに、別の乗客は…。

刃物を持った男性と同じ車両に乗っていた男性:
大声が最初聞こえて、最初、ケンカのトラブルかなとそんな感じで思っていたんですけど、聞き取れた言葉は「危ない!」みたいな、「逃げろ!」的な。それで他の乗客の方もちょっとパニックを起こして、後ろの方に。

「危ない」「逃げろ」などの声から、パニックに陥ってしまったという乗客たち。鉄道の乗客心理に詳しい成城大学准教授の山内香奈氏は、このような状況について、こう話します。

鉄道の乗客心理に詳しい成城大学准教授 山内香奈氏
鉄道の乗客心理に詳しい成城大学准教授 山内香奈氏

成城大学 山内香奈准教授:
パニックが発生する条件というのが、大きく3つあり、それが揃うと発生しやすくなります。1つ目は、自分の身に切迫した脅威があると感じられること。2つ目は、状況についての情報が不足していること。3つ目は、脱出路が絶たれつつあること。もしくは、脱出路が不足しているという認識があることです。今回の状況は、こういった条件がかなり備わっていたのではないでしょうか。

パニックがパニックを呼ぶ 専門家「勝手に想像したり臆測で補ってしまう」

「叫び声」や「刃物」という言葉は、どのように広まってしまったのでしょうか?

男性が乗っていた6号車に近い4号車、5号車にいた人は、「逃げろ」「キャー」という声が聞こえたということでした。離れた3号車にいた人は、「悲鳴は聞こえなかったし、乗客も気にしている様子はなかった。何が起きているのか理解していなかった」と話します。

逆に、7号車にいた人は…。

刃物を持った男性の隣の車両(7号車)にいた乗客:
ドミノ倒しみたいな感じになってる時に、誰かの声で「刃物を持った人がいる」みたいな状況っていうのが伝わってきて。

7号車は「刃物を持った人がいる」との情報が出る中、満員電車よりも人の密度が高くなりドミノ倒しが発生。5、6人が重なって倒れたとのことです。

さらにその隣の8号車は、悲鳴がこだまするパニック状態に。

8号車にいた乗客:
小さい女の子を連れているご家族が見られたんですけど、子供がこけて、後ろから来る大人というか、たくさんの人が構わず(子供を)押したりとか、踏んだりというか。もうなんかつぶしていくような感じ。どんどん押していって、それで子供たちが痛がって泣いて。

なぜ7号車、8号車では「刃物」という言葉や混乱が広がってしまったのか?

6号車から8号車まで逃げた乗客によると、逃げる途中で「刃物を持っているぞ!」「逃げろ!逃げろ!」という声が聞こえてきたといいます。

さらに、ホームでは「けんかをしている」「暴れている人がいる」という声が飛び交い、「放火があったらしい」という声も上がったことから、最終的に「男が刃物を振り回している」という通報につながった可能性があります。

ホームに飛び出すように逃げる乗客ら
ホームに飛び出すように逃げる乗客ら

Q.なぜ今回このような情報伝達の相違が起こってしまったのか?

成城大学 山内香奈准教授:
緊急時や異常時というのは、人は情報を非常に欲する状態になります。そういった状態の時に、信頼できる正確な情報が得られないと、伝えられた情報の中で不足していたり曖昧な部分を、勝手に想像したり臆測で補ってしまうということが起きます。これを「流言」と呼びますが、このような情報が流れたと考えられます。

では、このような事態に遭遇した場合、どのような行動を取ればいいのでしょうか?

何が起きているか分からず混乱する車内
何が起きているか分からず混乱する車内

成城大学 山内香奈准教授:
まず、「落ち着いて行動する」ということです。情報の虚(フィクション)と事実の部分が混じりやすいですので、不用意に大きな声を出したりせず、危険対象から静かに距離を取ることが重要だと思います。

(めざまし8「わかるまで解説」より6月29日放送)