“アベノマスク”vs“アサヒノマスク”?

安倍首相が“1世帯に2枚の配布”を表明し、各世帯への配達が始まった布マスク、通称「アベノマスク」。首相の方針表明から、20日以上経ってもこの話題は尽きず、アベノマスクが届いた国民の間でも評価が分かれている。さらに妊婦向けに配布した別のマスクでは袋に虫が混入するなどの不良品がみつかり、政府のマスク不足対策は、突っ込みどころ満載ともいえる様相を呈している。

そんな中、安倍首相の記者会見での一言をきっかけに、別の布マスクが「アサヒノマスク」として脚光を浴び、22日にそのマスクを製造している地元の首長が首相官邸に“乗り込む”事態となった。

発端は、17日の安倍首相の記者会見での以下のやりとりだった。

朝日新聞記者
「最近では、布マスクや星野源さんの動画でも批判を浴びているのですが、この間の一連の新型コロナの対応について、御自身でどのように評価されているか」

朝日新聞記者の質問を受ける安倍首相・17日
 

安倍首相
「今、御質問いただいた御社のネットでも、布マスク、3300円で販売しておられたということを承知しておりますが、つまりそのようなこの需要も十分にある中において、我々もこの2枚の配付をさせていただいたと、こういうことでございます」

朝日新聞記者が、政府による布マスク配布政策についての自己評価を求めたのに対し、安倍首相が「御社も布マスクを2枚3300円でネット販売していた」とあえて言及し、布マスク配布の効果に疑問を呈してきた朝日新聞の姿勢を揶揄したことが物議を醸したのだ。

以来このマスクは、SNSなどのネット上で“アサヒノマスク”という異名がつき、「3300円はぼったくりだ」といったバッシングまで寄せられるようになった。

しかし、このマスクは「繊維のまち」として知られる大阪府泉大津市の老舗メーカー『大津毛織』が手がけるこだわりの高性能日本製マスクだったのだ。1つ1つ手作業で作られ、不織布をはさんでいているため通常の布マスクよりもウイルスを通しにくく、肌にも優しい上、150回洗って使えるなど費用対効果も高いという。

製造元「繊維のまち」に飛び火 地元の市長が官邸へ

ところが安倍首相が会見で「2枚3300円」と発言したことで、金額ばかりが注目されマスク自体の魅力が伝わっていないとして、この布マスクを製造する地元・泉大津市の南出賢一市長が22日、地元の維新議員を伴って首相官邸を訪れ、木原稔首相補佐官と面会した。

布マスク姿で官邸入りする大阪・泉大津市の南出市長

「国が1世帯2枚配っているマスクの件で、たまたま安倍首相とマスコミの方のやりとりが、泉大津のマスクに飛び火をしてきていまして・・・今やっているプロジェクトのことを正しくお伝えしたい」

このような思いで面会に臨んだという南出市長は木原補佐官に対し、このマスクは、マスク不足解消のため市が地元の繊維メーカー数社に製造・販売を呼びかけた「マスクプロジェクト」によって生まれたものであることを説明した。

その上で「地方のものづくりの力をどんどん生かしていただいて地方が先導的に機動性を持ってこうした取り組みを広げながらマスク不足難を解消していくことにぜひ支援をしていただきたい」と要望した。

これに対し木原首相補佐官は、安倍首相からの「決してマスクが高いと言っているわけではなく、それだけ価値のあるものだ。日本のものづくりの技術が結集されたものだと認識している。ともに頑張っていきましょう」というメッセージを南出市長に伝えた。

“総理もつけて!”泉大津産のマスクを手渡し・・・

そして南出市長は「総理にもぜひ着けていただきたい、地方と国が一致協力しているというメッセージを出していただきたい」と持参したマスクを渡した。木原補佐官は「ぜひ着けるようにします」と応じ、安倍首相の分と自らの分あわせて4枚の布マスクを6600円で購入したという。

面会を終えた南出市長は記者団の取材に応じ、次のように語った。

「今回のマスクによって間違った方向に議論が行ったんじゃないかなと思ってるんですが、総理と思いは同じなんです。やっぱりマスク不足の解消をいかにして迅速に対応していくかと言う思いは同じだなと」

南出市長によると、英知を結集して作られたこの布マスクに関し、誤ったメッセージが広がったことに地元では「大変残念だ」「悲しい」といった声があがり、現場のモチベーションが下がってしまう事実があったという。しかし南出市長は「批判をしようと思って来たのではない。国難の時期に、こういった話が違う方向に展開されるのはよくない。むしろ地方と国が一致団結をして、この国難を乗り切ろうというこの一致した部分が国民の皆さんに伝われば」と、今回の騒動をプラスにしていく意欲を語った。

“ぜひ地方に声をかけて”国難こそ国・地方の連携を

木原首相補佐官と面会する南出泉大津市長

そして南出市長は、地元産のマスクの魅力をPRすることにとどまらず、政府と地方の連携の重要性についても言及した。例えばアベノマスクをめぐっては、“洗ったら縮んでしまう”“ウイルスを防ぐ効果は期待できない”などとの指摘があるが、南出市長は「繊維の技術をもった街が全国各地にある。国が一律で配るというやり方もあると思うが、こういうときこそ地方に声をかけて欲しい」と訴え、次のように述べた。

「国難になると、機動性のある取り組みが必要です。そのときに、国の財源を待って地方が取り組むのであってはスピード感に欠けてしまいます。こうした機動性のある取り組みについては、後ほど財源が伴うというような仕組みがあると、地方はもっと思い切ったことが出来るし、地方独自の取り組みが様々生まれてくると思う」

 “国難のときこそ、「地方の力」「ものづくりの力」を生かして欲しい”という市長の訴え。新型コロナウイルス対策に苦闘する政府にとっては、こうした地元の声を受け入れ、積極的に活用する柔軟さも求められているのかもしれない。

(フジテレビ政治部 阿部桃子 大築紅葉)