ついにイランと中国を超え、世界で7番目となった。トルコの新型コロナウイルス感染者数だ。トルコで初めて感染者が確認されたのは3月10日。周辺国と比べると随分遅いと感じてはいたが、その後はあれよあれよという間に増え続け、わずか1か月あまりでついに中国を超えてしまった。

冗談じゃない!

カラル紙一面(4月21日)
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4月21日付のトルコの全国紙カラルは「冗談じゃない、中国を超えてしまった」との見出しで感染者の増加に歯止めがかからない状況を伝えた。

カラル紙:
トルコの感染者数は、初の感染者発覚後39日目にして中国を超えた。感染のピークに差し掛かっている今、専門家は「怠慢が今までの努力をゼロにしてしまう可能性がある。リスクは依然として高く、感染者の増加率低下などの前向きな統計に油断せず危機感をもって行動すべきだ」と警告している。

感染者数が中国を超えたことについてトルコでは衝撃的に受け止められ、政府はもちろん多くのメディアがさらなる警戒を呼びかけ始めた。

感染者数が急増した“理由”

なぜトルコでこれほど増加したのか? 連日会見を行っているコジャ保健相は、次の3つを主な理由として挙げている。

1、検査件数が多い
トルコでは検査、そして治療も基本的に無料だ。感染者数に比べ死者数が少ないのもそのためだとコジャ保険相は主張する。

2、帰国者数が多い
政府は国外在住のトルコ国民をこれまで積極的に帰国させている。チャーター機を用意し、到着後は学生寮などで2週間の隔離観察を行うが、こうした帰国者に感染者が含まれるケースが多いという。

3、人口が多い
トルコはエジプト、イランと並び、中東で人口が8,000万人を超える大国。感染拡大の規模も人口に比例するとしている。

新型コロナウイルス対策を指揮するコジャ保健相

マスク無償配布と販売禁止

これまでトルコ政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、様々な対策を講じてきた。

・65才以上と20才以下の外出禁止
・週末の外出禁止(全員が対象)
・65才以上への自宅への食材無償配布
・マスクを申請者へ週に5枚ずつ無償で提供(※注)
・それと同時にマスクの販売を禁止
・コロナ関連検査および治療の無償化

(※注)外出禁止の65才以上と20才以下はマスク提供の対象外

感染者が少ない頃からこうした対策をとってきたものの、感染拡大が収まる様子はない。政府は国民の不安を取り除くため病床数と人工呼吸器の確保に躍起になっている。驚いたのは既存の空港の滑走路の一部に仮設病院を作る計画だ。空港は2019年まで国際空港として使われ、現在は貨物とプライベートジェットなどの使用に限定されているイスタンブールのアタチュルク国際空港。これを決めたのは、強権的な手法で知られるエルドアン大統領だった。

広大なアタチュルク国際空港。枠で囲った部分に”野戦病院”を建設中

工事は既に開始され、エルドアン大統領は4月6日、イスタンブール市内にこれとあわせて2つの大きな仮設病院を45日以内に完成させると明らかにした。まさに野戦病院さながらだ。また、欧米で不足している人工呼吸器を5月末までに5,000台用意し、全て国産で賄うという。

人工呼吸器にはしっかりとMADE IN TÜRKİYE(トルコ産)と書かれている。

ラマダンに伴う感染者数拡大の懸念

イスラム諸国では4月24日前後からラマダン(=イスラム教の断食月)が始まり、イスラム教徒には日中の断食などが義務づけられる。通常、ラマダン期間中は日没後にモスクの併設施設やレストランなどに仲間と集まったり、自宅に親戚や友人を招待して「イフタール」と呼ばれる断食明けの食事をするのが慣習とされる。しかし、他のイスラム諸国同様、ここトルコでもソーシャルディスタンスの観点から、こうした人が集まる行為は禁止される。モスクでの集団礼拝は既に各国で禁止されていて、ラマダン期間中も続けられる。とはいえ、1年で最も人々の往来が増え、イスラム教徒の信仰心も高まるこの時期、トルコのみならず各国の規制にどこまで効果があるかは不透明だ。

こうした中、トルコ政府は国外59カ国に滞在する約2万5000人の自国民をラマダン前に帰国させる計画をぶち上げた。チャーター機を195便も飛ばすという。実に大胆だ。帰国後は2週間隔離されるため直ちに家族に再会できるという訳にはいかないが、新型コロナウイルスに感染していなければ、5月下旬のラマダン明けの祭りには間に合うことになる。

国民にとっては「政府による寛大な措置」と映るかもしれないが、ただでさえ歯止めがかからない感染拡大が今後さらに加速する恐れがあると心配するのは私だけだろうか。

【執筆:FNNイスタンブール支局長 清水康彦】