ママであることに疲れたママたちへ。

子どもの休校に、在宅でのテレワーク。外出自粛が始まってから、密な家族時間を過ごすことが増えた。もちろん、これまで忙しすぎた日本人にとっては、家族との在り方を見直す貴重なチャンスでもある。

一方、一日中家事も何もしない夫が「家にいるだけで嫌」と、“コロナ離婚”なる言葉が出てきたり、子どもの学習習慣が失せていくのに焦ったり、増える兄弟姉妹間での喧嘩・・・。未知なる事態による日常の激変に、「家出したくなる・・・」「ママであることをやめたくなる・・」等々、悲鳴のような声が聞こえてくる。

そこで、コーチングをベースに15年間で、日本の全国各地、アジア各国やアルゼンチンなど、”口コミ”のみでのべ6万人を相手(主にママ向け)に、コミュニケーション講座を実施してきたライフコミュニケーションコーチ・山崎洋実さん(愛称:ひろっしゅコーチ)に、切羽詰まった「この事態、どう乗り切る?」を聞いてみた。

ぜひ、数多ある選択の中の「あくまでもひとつの知恵」として参考にしてみてほしい。以下のことを実践できないからといって、自分を責めたりストレスを溜めるのは本末転倒。今、毎日の八方塞がりな状況から少しでも「ラクになるための」マインドセットの数々を紹介する。

ママはまず「自分を幸せに」しよう。それが家族の幸せに直結する。

佐々木恭子アナウンサー(左)と山崎洋実さん(右)
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佐々木:
ひろっしゅコーチは、緊急事態宣言が出てからオンラインで、全国規模でかつての受講生たちとお話会などされていますよね、ママたちからはどんな声が上がってきていますか?

山崎洋実さん(以下ひろっしゅコーチ):
ママたちは疲れきってるよね。自分のことを、「飯炊きババア」と名乗っちゃうほど(笑)、毎日ずっと家族のご飯のことを考え続けてる。それにね、子どもの長い休みはこれまでにも経験はあるけど、夫がずっと家にいるのが初めてのことでしょ。夫の空気の読めなさ加減にも疲れが・・・(笑)。今日は、オンラインの飲み会があるのよね、と夫に言うでしょ、うんわかったよ、って返事はあるけど、「その時間子どもを見て欲しい」というメッセージは伝わらない。なんでなの、って怒りに変わっていってしまう。

佐々木:
「察してくれない」って苛立ちですよね。仕事場では先回りして考えてるはずなのに、なぜ家では夫は指示待ちなのか・・・、よく聞きます、この不満。

ひろっしゅコーチ:
夫にはね、もう具体的に言うしかないのよね。「察してくれる」生き物ではないと、諦めることが肝心。「オンライン飲み会に参加したいの。その間に、子どもの寝かしつけお願いね」って具体的にやってほしいことを明確にする。

とにかく、お母さんたちは自分がご機嫌でいられることをやっていてほしいの。自分が満たされている、その余裕が家族の幸せへとつながっていくから。お母さんが我慢して余裕がなくなっていくと、そのイライラのベクトルは人へと向かっていく。家族に言わなくてもいい嫌味を言う、普段は目につかない欠点ばかりを集めていく、理不尽な叱り方をする、結果自己嫌悪に陥る・・・全て「余裕のなさ」から始まってしまうのよ。

話す=離す、放すこと

佐々木:
自分で自分を満たす・・・。私はこの巣篭もり生活が始まるときに、ちょっとだけ贅沢な入浴剤を買いましたが、たとえばそんなことでも?

ひろっしゅコーチ:
もちろん。自分が幸せだと感じることなら、なんでもいいの。でもね、やはり「話す」ことは大事。感情を共有すること。しかも、それは家族以外の人とね。「話す」ってつまりは、「放す・離す」ことで、自分の中にある何かモヤモヤした感情なども、自分の外に出すの。外出自粛になってから、オンラインで飲み会などもあるだろうから、そういうのに参加してみるのも手だし、「ちょっとだけ話したい」って友人に遠慮せずに連絡してみてほしい。よく思うのはね、気遣いという名の遠慮をしすぎなのよね。YESかNOかは相手が決めること。だから、まずはボールを投げてみてほしいの。投げる前に「忙しいだろうから申し訳ない」って憶測して遠慮しすぎていることが多い気がする。

佐々木:
確かに・・・。家族と過ごす時間が増えて、おもしろい発見もあるのと同時に、見えすぎちゃう弊害と言いますか、特に子どもに対して、今まで欠点だとも思っていなかったことが突然気になってきたり・・・「片付けもせずだらしない」とか「いつも時間ギリギリ」とか、それがまたイライラの種になもなります・・・。

ひろっしゅコーチ:
今は近い距離で目の前にいすぎるからね(笑)。物理的に離れる時間をとってみる。30分でも1時間でもいい、家族それぞれ自由時間です、ばらばらに好きなことをしましょう、とあえて無関心の時間を設けてみる。見過ぎない。スルーする余裕をもつための、仕掛けよね。

どんな小さなことでもいい、「できた」ことを数えてみよう

佐々木:
子どもの休校以来、学習が遅れるのが不安、運動不足になるもの不安、家庭の責任が増えて、親が「なんとかしなくちゃ」と焦る気持ちです。”今こそできる!オンラインのあれやこれやの学習法”などの広告も増えて、淡々と過ごすのが難しい状況ですよね。

ひろっしゅコーチ:
親が子どもにやってほしいと望むことこそ、「楽しい」と思わせる仕掛けをしてみるといいと思う。「やれ!」と口うるさく命じて子どもがやるなら、そんなラクな話はないわけで(笑)。「0の状態から1」始めるところまでが難しい。たとえばね、課題のプリントを、「これを家の中のどこかに隠しますよぉ」といって本当に隠すの。宝探しのゲームのようにね。見つかったら、5問だけでいいよ、最初の5問だけやってみようね、とワクワクしながら一緒にゲームを楽しんでみる。本当に5問でやめてもいいし、案外、取り掛かり始めたら子ども自身で最後まで楽しくできることも多い。最初の取っ掛かりを「楽しく」すること。子どもは楽しいことはやるし、楽しくないことには興味もない正直なものだから。

その前にね、人の特徴として、どうしても欠けている部分ばかりが気になってしまうんだけど、

どうか、「できない」ことより、「できた」ことに目を向けてほしい。手抜きの納豆ごはんだけどちゃんと食べさせたな、とかお風呂に入れたな、読み聞かせはしてないけど寝かすことはできたぞ、とか、お母さんたちは1日のうちに、本当にたくさんのことをやってあげられているのに、それを自分で認めてないのよ。

「緊急事態だから」・・・と自分に言い訳をしよう

佐々木:
3月上旬に子どもが休校になってから、突発性難聴になってしまって・・・。無自覚だったのですが、思う以上に日常が激変していることにストレスを感じてるんだなって身体が教えてくれたというか・・・。

ひろっしゅコーチ:
今は本当に、何もがんばらなくていい。お母さんたちは頑張り屋さんで、そう言ってもがんばっちゃうから、頑張り方を変える時期だと思えばいいのよね。「ちょっと手抜き」することを頑張って。(笑)。自分にコントロールできることと、できないことをまずは区別してみる。ウィルスとの見えない、終わりもピークもわからない状況自体は、私たち自身にはどうすることもできない。それに、家族の、特に子どもの感情も自分でコントロールしようとすることも手放す。

ちょっとくらい片付かなくたっていいじゃない。ご飯も手抜きでいいじゃない。子どもがまだ小さければ、お皿を洗うのをやめて、100圴でかわいい紙皿を買って使ってもいいじゃない。「今は緊急事態だから」とどんどん自分に言い訳していいのよ。本当に経験したことのない緊急事態なのだから。

この状況がいつまで続くかわからない。だから、低空飛行で淡々と過ごしながら、この期間が明けたら自分の力を発揮できるように、ちょっとしゃがんで筋肉を緩ませていると思えばいい、ずぅっと力を出し続けて、ずぅっとピークを高くもっている必要なんてないもの。

佐々木:
低空飛行で十分だ・・・と割り切れたら、ラクになりますよね。子どもたちもストレスがたまっていて感情的になり、その様子を見てつい叱ってしまうという話も耳にします。

ひろっしゅコーチ:
まずは、お母さんが自分を満たして、少々のことはスルーしてあげられる余裕をもつこと。それに、怒っちゃったとしても、それで自分を責めないこと。理不尽に叱りすぎたら、後からフォローすればいい。これまでの愛情の貯金は簡単には減らないから。「怒っちゃいけない」と自分を縛らないであげてほしい。緊急事態だから、ね。感情はぶつける(投げつける)ものではなく、伝えるもの、と思っていればいい。理不尽に叱りすぎてしまったら、「お母さんも余裕がなくて言いすぎてごめんね。本当は、こういうことを伝えたかったの、、、ごめんなさい」と真摯に謝り、後からフォローできるから、大丈夫!怒っちゃいけない、って思い過ぎないで。

最後に、未知なる事態を過ごしながら思うのは、日本のみならず世界がどうウィルスと対峙していくのか、それぞれの国がどう対応していくのか、ニュースを通して知ることができる。個人の暮らしは政治と密接に切っても切れない関係で、大人も子ども同じようにこんなに影響を受けたことはない。家族で、特に子どもたちと、大マジメな話を積極的に語り合えるチャンスになるといいなと思う。

インタビュー後記

ひろっしゅコーチは、普段とにかくエネルギッシュに話す人だ。『テレビ寺子屋』も6年連続12回登場している常連で、初対面の観覧客相手にもどんどん隣同士で感情を共有する時間をとり、その語り口はひろっしゅ劇場さながらだ。しかし、今回はとても”穏やか”だった。

コミュニケーションのプロ・ひろっしゅコーチですら、8月までの講座が全て休止になり、対面で話す機会を奪われて自分自身の余裕がなくなり、大学生になったばかりの息子に、言わなくてもいい嫌味を言ってしまって「やはりこの状況はストレスなのだ」と自覚をしたのだという。何もできない自分もOK,時にダメな自分もOK,そう思い直すことで、「低空飛行で過ごせばいい」とパンと割り切れるものがあったそうだ。

インタビュー中に、何度も「これを正解と思わないで」と繰り返していた。人と人との間をつなぐコミュニケーションに万能薬があるわけもなく、一つの正解を探すことも実践できないことにも落ち込む必要もない。要は、自分がハッピーになりそうなことはやってみればいいし、ハッピーから遠ざかりそうになったら、違うことを試してみればいいだけのことだ。

さて、私自身は、夜、くたくたで寝落ちしそうなときに、まずは「小さなできた!」を振り返ってみることにしよう。

そして、今回はママ側の視点に立ってみたが、何も大変なのはママだけではない。突然、在宅を命じられているパパも、休校で居場所のなくなっている子供達の声も、引き続き聞いていきたいと考えている。家族の中でストレスのぶつけ合い、分断が狙いなのではなく、「みんな大変・・・だけど、どう乗り切る?」の知恵を少しでも集めたいと思う

【聞き手:フジテレビアナウンサー 佐々木恭子】
【表紙デザイン:さいとうひさし】