中国が4月17日に発表した今年1~3月のGDP=国内総生産は、実質で前年同期と比べてマイナス6.8%となった。四半期の成長率としては1992年の統計開始以来、初のマイナスだ。

一方、新型コロナウイルスが依然として世界で猛威を振るう中、その発生源とされる中国・武漢市ではいち早く封鎖が解かれ、喜びに沸く市民の様子が映し出された。

2ヵ月半ぶりの都市封鎖解除でライトアップされる武漢市(4月8日午前0時)

さらに中国では、早くも「アフターコロナ」に向けた企業の資金調達が活発化しているという。果たして中国は世界からいち早くV字回復の軌道に乗るのか?

中国系ベンチャー企業の資金調達情報を専門に扱う情報メディア「36Kr Japan」の顧問であり、プラスチャイナ株式会社の代表取締役、中島嘉一氏に話を聞いた。

初のマイナス成長の一方でV字回復の兆候

ーーまず、中国の今の様子を教えてください。

中島嘉一
氏:
「上班族(サラリーマンの意)」は、ほぼ仕事に復帰しています。一方、学校はまだ休校中で、在宅の教育が続いています。6月の大学入試も1ヶ月延期になりました。店舗の8~9割は営業再開している印象です。

航空の国内線は、3月こそ前年の6割程度の運航率でしたが、現在は9割を超えるまで回復しました。国際線は3月末には1日20便程度、入国者数が2000~3000人でしたが、4月14日現在では、1日あたり250便、入国者数は5万人に達し、こちらも回復しています。ただし、入国者の自主隔離は今も続いています。

武漢で再開された鉄道や航空便などを利用する人々

ーー先ほど発表された中国の1~3月期GDPは、92年の統計公表以降で初のマイナスとなりました。やはり新型コロナウイルスは、中国経済や企業活動に大きな打撃となりましたか?

中島嘉一氏:

2020年第1四半期のGDPは6.8%のマイナスと歴史的な落ち込みでした。また、全国固定資産投資は16.1%減となっています。しかし、3月末の建設業、不動産業は9割程度回復していて、2月を底にV字回復したのではないかと言われています。

「アフターコロナ」に向け資金調達が活発化?

ーー中島さんは中国系ベンチャー企業の資金調達状況を専門にウォッチされていますが、コロナ禍の中、ベンチャー企業の資金調達活動はどのような状況ですか?

中島嘉一氏:

公表された第1四半期の資金調達件数をみると、671件と前年の同じ時期に比べて4割減少し、調達額は総計1402億元(約2.1兆円)で、前年に比べてマイナス8.4%となっています。(前年の「恒豊銀行」の巨額調達を除く)。一方、1件当たりの調達額では2.1億元(約32億円)と、新型コロナウイルスの影響下にも関わらず増加傾向が続いています。

日本企業も中国系ベンチャー企業の動向には引き続き注目していて、2月にはトヨタ自動車が自動運転技術の「小馬智行」に4億ドル(約440億円)を出資、先月はソフトバンクのビジョンファンドが不動産賃貸プラットフォーム「自如」に10億ドル(約1100億円)を投資しています。今後も「アフターコロナ」に向けて、オンラインサービスやAI関連企業に引き続き投資が集まると思われます。

ーーコロナ禍の中、日本で一躍注目されている「Zoom(ズーム)」は、中国人エンジニアが設立したことでも知られています。コロナ関連で今後成長が期待されているオンラインの教育や医療などの動向を教えてください。

中島嘉一氏:

コロナ関連で伸びているのがオンライン教育ですが、「猿軸導」というユニコーン企業は、3月末に10億ドル(1070億円)を調達して、企業価値は78億ドル(8360億円)となりました。「猿軸導」の生徒数は、すでに4億人に達しています。

また、オンライン医療の分野で独走しているのが、保険最大手「平安グループ」の「平安好医生」です。「OMO=Online Merges with Offline(*)」の先駆けとしても有名ですが、「AI+医療」によって、ホームドクター、医薬品販売や健康管理などのサービスを提供しています。

(*)消費者がオンラインとオフラインの境界を意識しないサービスの提供

中島嘉一氏

「コロナ発生源」武漢にスマートシティ構想

ーー「コロナの発生源」とも言われている武漢では、「アフターコロナ」に向けた企業の動きが活発化していると聞いていますが?

中島嘉一氏:

まず、IT企業としてアリババと双璧をなすテンセントは、すでに医療分野に進出しており、国家AIプロジェクトとなっている医療画像分析や診断補助機能「騰訊覓影」など、医師向けサービスを広く展開しています。

2月末には、中国で新型コロナウイルス防疫研究の第一人者である、鍾南山氏のグループと提携しました。ビッグデータ、人工知能を駆使した共同研究室を設立し、新型コロナウイルスの制圧にあたっています。さらにテンセントは、武漢をスマートシティ化すると4月に表明し、鍾南山氏グループともさらに提携を深めています。

ーー中国ではコロナショックをいち早く経験したことで、世界に先駆けて「アフターコロナ」に向けた動きが加速していると言われています。

中島嘉一氏:

都市封鎖された武漢の市民を餓えから救ったのは、「餓了蘑」「美団買菜」「京東買菜」「毎日優鮮」などの食品・生鮮食品デリバリー企業でした。これによりデリバリーが、市民にとってのライフラインだと認知されるようになりました。また、飲食店は従業員を出来るだけ減らすため、セントラルキッチン化や一部ロボット化を行いました。今後は資金力のある中大型店が、ロボット導入を加速して無人化に向かうと思われます。

飲食店からオフィスに食事を配達するロボット

ITの2大巨頭はコロナを追い風に業績好調?

ーーコロナによって消費の冷え込む国々から、越境Eコマースで中国市場を狙う企業が増えているそうですね。

中島嘉一氏:

中国の越境Eコマースの利用者は、2018年に1億100万人、2019年に1億5400万人に達し、2020年には2億3200万人になると見込まれています。さらに世界でコロナの感染拡大が続く中、越境ECへの期待はさらに高まっています。

中国のトップ・プラットフォームである「天猫国際」には、この3ヶ月で20万を超える新商品が掲載されました。これは前年比327%のペースです。「天猫国際」には現在78の国と地域から2万2000のブランドが出店していますが、中でも新型コロナウイルスによる外出禁止令で、消費が冷え込む欧米の高級ブランドの出店が増えています。

ーー「アフターコロナ」に向けた中国企業の業績見通しをお願いします。

中島嘉一氏:

今後の見通しですが、第1四半期決算を発表したのは家電業界くらいで、まだ何とも言えません。家電業界はほとんど大幅減益、または欠損を出しています。しかしIT大手の決算に新型コロナウイルスは、それほど悪影響が無い見通しです。

例えばアリババの場合、主力の国内ネット通販事業は、3月には正常な状態に回復したようです。アリババの越境EC「天猫国際」と、オンラインビジネスツール「釘釘」は、新型コロナウイルスが追い風になり絶好調です。年間ベースではむしろ好決算となる可能性もあります。

もう1つの大手であるテンセントは、ゲーム部門において新型コロナウイルスが商機となりました。2019年12月のニンテンドーとの提携、「Switch」の新発売が結果的にグッドタイミングとなりました。スマホ用では看板ゲーム「王者栄耀」と「和平精英」が絶好調です。「和平精英」の春節期間のデイリーアクティブユーザーは1日約1億人を記録し、課金売上は数億元に達したという情報もあります。こちらも業績に不安はなさそうです。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】