やんばるの森に生息しないはずのウサギが…いる!
沖縄県のやんばるの貴重な生態系を脅かす存在が外来種だ。森に捨てられ野生化してしまった犬や猫は希少な生き物たちの脅威となっている。こうした中、やんばるの森である動物が確認され、関係者に衝撃が走った。
1月やんばるで撮影された写真。毛を濡らし草むらに身を潜めるのは、本来やんばるの森に生息しないはずのウサギだ。
NPO法人どうぶつたちの病院沖縄 長嶺隆理事長:
森の中で万が一繁殖を始めて安定的に増えてしまうとすると、やんばるの植生、森に大きなダメージを与える恐れは十分あると思います
外来種のウサギが繁殖した地域ではウサギが草を食べつくし、土壌がむき出しとなるなど大きな被害が出ている。
世界の侵略的外来種ワースト100にも名を連ねるウサギ。その脅威を考える。
ウサギを撮影した生物の教師、知花史尚さん。1月11日、やんばるの森で固有種の研究をしていた時、複数のウサギが森の中を走るのを目撃した。
知花史尚さん:
ノネコがまたいたのかなと、ノネコも非常に厄介ではあるんだけど、まさかウサギとは思わなくて。かなりショックですね
ウサギが目撃されたのが、国頭村の東西を結ぶ県道2号線。道路わきの茂みの中を3匹ほどが逃げていくのが目撃された。知花さんから一報を受けた県や環境省などの関係者は、その後すぐに罠を設置し、これまでに4匹のウサギを捕獲した。
ウサギに対する裏切り…許せない
うるま市にあるどうぶつたちの動物沖縄には捕獲されたウサギがいる。体長40センチほどのおとなのアナウサギ。人工飼料を食べたり、トイレで排泄をする習性があることからペットとして飼われていたとみられている。
NPO法人どうぶつたちの病院沖縄 長嶺隆理事長:
(捕獲された時は)ダニやノミにたかられたりして、森にはハブだとかカラスとかウサギにとって危険な動物が沢山いますし、突然森に捨ててしまうというのは、ウサギに対する裏切りですよね。とても許せないと思います
獣医師の長嶺さんは、ウサギはやんばるの生態系にとって大きな脅威となりかねないと警鐘を鳴らしている。
NPO法人どうぶつたちの病院沖縄 長嶺隆理事長:
世界中で起こっているウサギによる植生の破壊が起きる恐れがあります。その原因がウサギのもつすごい繁殖力ですよね
ウサギの雌は早ければ生後4か月で繁殖が可能で、1回で4匹から10匹の子ウサギを生む。多ければ1年に4回出産するウサギもいて、爆発的に増加していく。
NPO法人どうぶつたちの病院沖縄 長嶺隆理事長:
なんとなく4匹って少ないように感じるかもしれませんけど、実際に県内に3万頭以上いると言われるといわれるマングース。これは1910年に、那覇でわずか17頭だけ放されたんです。これが100年の間に爆発的に増えて3万頭。ウサギでもまさかという事が起こりうるという事ですね
ウサギにより壊滅的な状況に追い込まれた地域も
実際、人間に捨てられ繁殖したウサギによって壊滅的な状況に追い込まれた地域がある。石川県の七ツ島大島は、数多くの野鳥が飛来する「海鳥の宝庫」と言われ、国指定の鳥獣保護区に指定されていた。
しかし、1984年、雄雌2匹ずつ、4匹のウサギが持ち込まれたことによりその数は300匹にまで増殖してしまった。
当時、根絶に当たった有識者は被害の状況をこう振り返る。
根絶に関わったウサギの専門家 山田文雄さん:
植物が大好きでそれを食べつくしてしまったり、このウサギは土の中にトンネルを掘ってそこに営巣をする。ウサギの数が増えれば増えるほど、土を掘りだす量も多くなりますから、それで植物を枯らしていったり、風雨で土が流されて行って海にいく
ウサギが増殖したことにより鳥の飛来が極端に減ったため、県や環境省などは駆除に乗り出したが、ウサギの根絶に至るまでは30年もの歳月を費やした。
また、ウサギには特有の病原体があるため、もしもやんばるで繁殖した場合、固有種であるオキナワトゲネズミなどへの感染の恐れも懸念される。
NPO法人どうぶつたちの病院沖縄 長嶺隆理事長:
非常に県民の安易な行動というのが、時としては次世代に渡さないといけない自然すら壊してしまう。動物もかわいそうな思いをしている。(今回捕獲されたウサギは)誰も引き取る人がいなかった場合には、安楽死しなきゃいけない可能性があるんです。それぐらい深刻なことをしてしまったという事を認識してほしいです
人間の身勝手な行動により脅かされる動物の命と、貴重なやんばるの自然。世界自然遺産の登録に向けた機運が高まる中、改めて県民のモラルの向上が求められている。
(沖縄テレビ)