被災地の人々を支え続けた「閖上復興だより」最終号発行
東日本大震災で被災した、宮城県名取市閖上の地域情報誌「閖上復興だより」。3月発行の第60号・最終号が完成した。8年半、閖上に住んでいた方々に向けて、同じ閖上の住民が復興状況などを伝えてきた。この最終号には、感謝の思いが詰まっている。
宮城県名取市内にある「閖上復興だより」の事務所。
編集長の格井直光さん(61)は、最終号の郵送の準備に追われていた。
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東日本大震災の半年後から1、2カ月に一回発行されてきた、閖上復興だより。
格井さんは、「離れ離れになった閖上の住民を再び一つにつなぎたい」と、被災した住民やNPOと協力し、住民の避難先や街の復興状況を取材して記事を書いてきた。
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「閖上復興だより」編集長・格井直光さん:
わたしたち閖上地区の人たちは、(震災直後)まだバラバラに生活していたので、何か一つ、共有できるものがあればいいなと思って始めた
格井さんも津波で閖上の自宅を失い、両親を亡くした。
試行錯誤しながら奔走してきたが、閖上の新たなまちづくりが進んだことから、第60号での終刊を決めた。
「閖上復興だより」編集長・格井直光さん:
復興って何だろうって、ずっとわからなかったので、どうしたらいいか。いろいろな言葉、応援のメッセージをいただいて、ここまで来たという感じがしている
最終号には、閖上復興だよりの終刊を聞いた読者などから寄せられたメッセージが掲載されている。
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手記を寄せた1人、伊藤恵子さん(62)。
貞山堀の西側に自宅があった伊藤さんは、津波で当時77才だった母親を亡くした。
震災後、手元に届く閖上復興だよりに励まされてきた。
伊藤恵子さん:
多くのものを失って、人も物も昔には戻らない。何年たっても悲しみは癒えないけれど、力を合わせて頑張っていこう、という人たちの思いが、この「閖上復興だより」に詰まっていた。わたしも頑張らなきゃいけないなと
伊藤恵子さん 手記:
新生閖上を今度は自分たちが力を合わせて守っていかなければ
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写真掲載から始まったつながりで復活した「ももやのカツ丼」
閖上出身の料理人・小齋悟史さん(38)。子どものころに家族で味わった「ももや」のカツ丼の写真を格井さんに送り、2012年発行の第12号に掲載された。
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小齋悟史さん:
出前で「ももや」のカツ丼をとっていたので、何気なくいつもの日常で撮った写真。僕自身、そのカツ丼を「もう食べられないんだな」と思った
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震災前、閖上にあった食堂「ももや」。カツ丼が閖上の人々に愛されてきたが、店を切り盛りしていたご夫婦が津波の犠牲となり、人気の味は途絶えかけた。
小齋悟史さん:
ちょうどここに求人が…
料理人として、「ふるさとの復興に貢献したい」と思っていた小齋さん。震災の翌年に発行された第8号に、閖上に飲食店を出店する会社が従業員を募集しているという記事を見つけた。
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小齋悟史さん:
(記事を)見た瞬間に、閖上出身だし料理人だし、これはすぐに電話するしかないと思った
味の記憶を頼りに、小齋さんは様々な人の力を借りながら、7年かけて「ももや」のカツ丼のレシピを復活させた。
今、その味は2019年にオープンした「かわまちてらす閖上」の「カツ丼ももや」で味わうことができる。
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小齋悟史さん 手記:
写真掲載から始まった人と人の繋がり。本当にありがとうございました
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小齋悟史さん:
「閖上復興だより」があってのももやのカツ丼。人生を変えるきっかけになった新聞。まさに僕にとっては格井さんは一番携わってきた人なので、感謝しかない
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「閖上復興だより」編集長・格井直光さん:
うれしい。人のためになった。ここまで思っていただいて、(夢を)実現したのだから、「閖上復興だより」ってすごいなと、我ながら思う
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8年半、閖上の今をつづってきた、閖上復興だより。
たくさんの感謝の思いとともに、格井さんは前に進む。
(仙台放送)