虐待死事件の初公判...被告は法廷で号泣
2018年3月、東京・目黒区のアパートで船戸結愛ちゃん(当時5)が虐待を受け、死亡した事件。
9月3日、この事件の裁判員裁判の初公判が開かれ、母親の優里被告(27)は涙ながらに起訴内容を認めた。
![優里被告の法廷画](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/9/8/700mw/img_9876649c41e3d2846cefade7efd3b0d571123.jpg)
検察:
今、検察官が読み上げた内容で違うところはありますか?
優里被告:
さっきのことで間違いありません
結愛ちゃんは2018年3月、東京・目黒区のアパートで衰弱した状態で死亡。優里被告、虐待を加えていた父親の雄大被告(34)が、保護責任者遺棄致死などの罪に問われている。
![優里被告(左)と雄大被告(右)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/700mw/img_63909ef03abfefcf4bc46b468756834249091.jpg)
3日の初公判に出廷した優里被告。長かった髪は肩の上で切りそろえられ、上下黒のスーツ姿。
証言台に立つと、何度もしゃくり上げるようにして泣きじゃくりながら起訴内容をおおむね認めた。
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優里被告:
雄大から報復されるのが怖くて通報できなかったです
母親である優里被告がなぜ、夫による結愛ちゃんへの虐待を止めることができなかったのか。
その理由として挙げられたのが、夫・雄大被告との関係性だった。
弁護側は夫の心理的DVの影響を主張
検察側の冒頭陳述によると、優里被告と雄大被告は2016年4月に香川県で結婚。
それから半年あまり経った11月ごろから、結愛ちゃんへの暴行が目立つようになったという。
弁護側は当時の状況について、「優里被告は雄大被告の暴行を止めようと、泣きながら結愛ちゃんをかばったものの、雄大被告の心理的DVによる支配下にあり、暴行を止めることができなかった」と説明した。
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その後、香川県から東京・目黒区に引っ越した一家。
検察側は「引っ越してから結愛ちゃんが亡くなる2018年3月までのおよそ1カ月間、1日に汁もの1杯程度の食事しか与えないようになり、体重が減っていった。結愛ちゃんが夫に顔面を殴られ、おう吐を繰り返していたにもかかわらず、虐待が発覚するのを恐れ、病院に連れていこうとしなかった」と指摘した。
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死亡した結愛ちゃんの顔や体には殴られたようなあざがあり、体重は5歳児の平均にはるかに及ばない12kgほどしかなく、極度に痩せ細った状態だった。結愛ちゃんが軟禁状態にあった部屋と浴室周辺からは、結愛ちゃんの血痕も見つかっている。
弁護側は結愛ちゃんが死亡した日の状況について、「優里被告が添い寝して楽しかった思い出を話して励ましたが、衰弱して亡くなった」と話していることを明らかにした。
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午後に行われた証人尋問では、通報を受け、駆け付けた救急隊員がこのように証言している。
救急隊員:
AEDをやるときには胸を開けますが、貼るときにあばら骨が浮いてるくらい痩せていて...
曽祖母が語った言葉とは
初公判を迎えた3日、結愛ちゃんの曽祖母にあたる女性がFNNの取材に思いを明かした。
結愛ちゃんの曽祖母:
優里ちゃんは子ども大事にする人やなっていう印象しかありませんけどね。虐待を受けてるっていう情報が少しでも入っていたら、どうにかしてやれたんじゃないかなって。それが一番残念です
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5日からは優里被告への被告人質問が行われ、判決は17日に言い渡される予定だ。
優里被告の証言から見える心理とは?
初公判で優里被告が語った言葉からは、どのような心理が読み取れるのか。
都内の児童相談所にも長年勤務した経験を持つ、心理学者の山脇由貴子さんと分析する。
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【初公判で優里被告が語ったこと】
・結愛を夫が殴ったのは知らなかった
・通報しなかったのは夫からの報復が怖かったから
・自分自身が雄大被告に怒られることに対して「怒ってくれてありがとう」
加藤綾子キャスター:
山脇さん、この供述からどんな心理が読み取れますか?
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山脇由貴子さん:
優里被告は報復されるのが怖いと言っていて、男が怖かったのは事実だと思うんですね。
ただ児童相談所が関わらなきゃいけない家庭のお母さんって、子どもよりも夫をとるという方がいらっしゃるのは事実で、夫に依存していて、失いたくない気持ちがあったというのもあると思います。
また、怒ってくれてありがとうって明らかにおかしいじゃないですか。
正常な判断力を失って洗脳されていて、虐待に加担しているうちに善悪の基準も狂っていったというふうに考えられますね
この事件の発覚から、児童虐待は社会的に大きな関心を集めている。
だがその後も、千葉・野田市、札幌、そして鹿児島と子どもが虐待されるケースは後を絶たない。なぜ虐待はなくならないのか。
山脇さん:
虐待って非常に中毒性が高い。虐待するくらいなら子どもを預ければいいじゃないかという意見もあるんですけど、虐待する人間って完全に虐待に依存しているので、子どもがいなくなっちゃうと虐待できなくなっちゃうので困るんですね。そこはアルコールやギャンブルの依存性と非常に似ているんですけど。
もう1つ、日本って児童虐待に対する処分が軽いので、虐待しても、しつけと言い訳すれば捕まらないで済むと考えている人もいるので、そこをどう強化していくかというところですよね
2020年4月に施行される改正「児童虐待防止法」とは?
政府も相次ぐ虐待事件に動きだし、2020年4月から改正「児童虐待防止法」が施行される予定だ。
この改正では、以下のようなところがポイントになっている。
・親権者がしつけ名目で子どもに体罰を加えることの禁止
・児童相談所で保護者支援を行う職員、子どもの保護に介入する職員の担当分け
・学校、児童相談所、教育委員会の守秘義務
・児童相談所の速やかな情報共有
この法律改正に、虐待を防止する実効性はあるのだろうか。
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山脇さん:
しつけ名目の体罰を禁止することは意味があると思っています。ただ、その対象が親権者と監護権者に限られているので、例えばお母さんの交際相手ですとか内縁の夫、同居男性というものが対象になっていないところをどうするかということがあります
加藤綾子キャスター:
交際相手の人が虐待するというケースが多いですよね
山脇さん:
多いのに、そのケースの処分が決まっていないというところと、どこからが体罰なのかというのも決まっていないので、まだ課題は残っていると思います
児童相談所の職員を分けることについては....
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山脇さん:
分けること自体は意味があると思っています。
今の児童相談所は、虐待をなくすために保護者を支援する役割と、強制的に子どもを保護する役割を、同じ人物が行っている。それは矛盾しているので、分ける意味はあると思います。
一方で児童福祉司の質を上げることがとても大事です。今は公務員の異動先の1つでしかないので、一般事務職も配属されますし、経験年数が5年未満の福祉司が6割なんですね。それは判断ミスが起こる材料の1つとなっています。また、児童相談所で働きたくない人が配属されれば「できるだけ虐待に関わりたくない、できるだけ保護したくない」という方向に動きます。
だから、これからは児童虐待を扱うプロを、年単位で育成していくような取り組みが必要だと思います
加藤綾子キャスター:
人の命を守る組織になりますから、プロフェッショナルな人材が集まらないと難しいですよね
(Live News it! 9月3日放送分)