漁船転覆事故から1か月

9月17日、北海道根室市の納沙布岬沖の公海でサンマ漁船が転覆し船長が死亡、乗組員7人が行方不明となった事故。

事故から1か月となるが、漁師たちは今も遠くの公海に向かう厳しい現状が続いている。
サンマに頼るしかない…危機的状況はいつまで続くのか。

公海で転覆したサンマ漁船「第六十五慶栄丸」(第一管区海上保安本部提供)

10月7日、北海道根室市内の葬儀場で執り行われた葬儀。根室沖で転覆したサンマ漁船の船長・敬禮(けいれい)寿広さんの遺族や友人ら約100人が参列し冥福を祈りました。

参列者:
先輩だったんですよ。本当に優しくて世話になった。もう14~15年前になるが、うちの船に乗ってくれていた。ですからなんかね、びっくりですね。残念ですけどね、安らかにという思いです

9月17日、根室市の納沙布岬沖。日本から600キロ以上も離れた「公海」で大樹漁協所属のサンマ漁船「第六十五慶栄丸」が転覆。船内で発見された船長の敬禮さんが死亡し、ほかの乗組員7人の行方は今もわかっていない。現場の波は荒れることが多く、転覆した船をえい航することも叶わない厳しい状況だ。

「第六十五慶栄丸」(第一管区海上保安本部提供)

小さな船でうねりの大きい公海へ。危険と隣り合わせの漁師を取り巻く現状とは。

開催危ぶまれた「根室さんま祭り」

サンマの水揚げ日本一を誇る花咲港を抱える根室市。9月21日、旬のサンマを味わえる「さんま祭り」が開かれ、全国から1万6500人の来場者が訪れた。

来場者:
脂がのっていて小さくてもおいしい。3本目。おいしいです。

ーーサンマ不漁だが?

来場者:
さんま祭りあること自体感謝している

しかし、今年は一時開催も危ぶまれるほどの危機的状況で、人気の「サンマのつかみ取り」は中止。格安の箱売りも例年の半分の2キロに減らして予約販売のみという異常事態だ。

9割減…過去最低のサンマ漁獲量

背景にはサンマの深刻な不漁がある。水産庁によると漁獲量は約7060トン。2018年の同じ時期の5万4178トンに比べ9割近くも減り、過去最低となっている。

「不漁の犠牲に…」漁師仲間は危機感

花咲港も2018年より水揚げが8割も減った。魚体は少しずつ大きくなってきたが、漁師たちは…

ーーあがっているほうですか?

漁師:
あがってない方だわ。2日間船で走ったな。そのぐらいまで行かないといないのかな…

苦しみながら漁にでる状況が続く中、地元のサンマ漁船「進洋丸」の船主の木根繁さん(82)は…

進洋丸船主 木根繁さん:
(慶栄丸は)やむを得ずに行って気の毒な話。公海に行かないとサンマがいないから無理して行った。痛ましい事故だわ。サンマの不漁のために犠牲になった

漁師仲間の事故は、木根さんに強い危機感を抱かせていた。

進洋丸船主 木根繁さん:
依然としてサンマが近海に来ないからね。公海でも2区というところなんだわ。東経160度から170度ぐらいのところ。だから遠いんだ。おれらの船は公海でサンマするために作ったわけではない。サケマス流し網漁と沿岸のサンマ漁のために作った。公海に行くのであれば、もっと大きな船が必要…

「外国船との獲りあい」小さな船が公海へ向かうリスク

うねりが大きい公海へ。小さな船で向かうにはリスクが伴う。

これは公海でのサンマ漁の様子。沖合に見えるオレンジ色の無数の光。これらはすべて台湾や中国などからサンマを獲りに来た1000トンクラスの大型船だという。

進洋丸船主 木根繁さん:
外国船がすごい来ている。獲りあいだわ。向こうは800トンとか1000トンぐらいだから。こっちは200トン

転覆した慶栄丸は29トンの中型船だった。木根さんの進洋丸は200トン。
気象条件の厳しい公海に危険を覚悟で小さな船で向かい、大きな外国船がひしめく中で少ない資源を獲りあう過酷な環境なのだ。

今後、サンマは沿岸に近づくのか?

では今後、沿岸にサンマが近づく可能性はあるのか。

釧路市の水産試験場でサンマの調査を続けている守田航大さんは、花咲港で水揚げされたサンマの体長、性別に加え耳石と呼ばれる部分から年齢を調べていた。

サンマの調査を続ける守田航大さん

調べたサンマは2年目の個体。今年魚体が小ぶりな原因が年齢なのか、他に理由があるのか…

実はサンマは秋から冬にかけて日本などの沿岸に南下するとされ、寿命が2年ほどとされる以外、産卵時期、稚魚の育ち方、来遊ルートなどがはっきりとわからない謎多き魚なのだ。今後の水揚げの見通しも厳しく、回復のメドは立っていない。

守田航大さん:
今年は東経160度、今は近づいて東経152度ぐらいで獲れている状況。今年の特徴としては表面の海水温が高いとの特徴はありますが、それ以上に元となるサンマが少ないというのが(不漁の)一番の要因。資源量が低水準状態に入っているということは言える

経営体力はギリギリ「大倒産時代がくる」

2016年にロシア水域でのサケ・マス流し網漁が禁止となって以降、頼みの綱だったサンマ漁。しかし、水揚げの少なさと1回の出漁で燃料代が数百万円かかる状況が続き、漁業者の経営体力はギリギリだ。

全国さんま棒受網漁漁協 八木田和浩組合長:
サンマにかかわっている者はすべて大変。このままではバタバタと大倒産時代がくるような状況に追い込まれている。国に支援を求めたい

転覆事故に不漁。サンマ漁に出る船自体が減ってしまう可能性も危惧される中、根室の船主・木根さんは状況が好転することに一縷の望みをかける。

進洋丸船主 木根繁さん:
しけだから休もうかとも思ったが、色丹沖に魚群がいるとの情報があり向かった。期待して待っています

食卓に再びサンマは戻るのか? 漁業者の試練の秋が続いている。

(北海道文化放送)

【関連記事:日本各地の気になる話題はコチラ】