沖縄県与那原町の与那原中学校で7月、子宮頸がんについて学ぶ特別授業が行われた。登壇した産婦人科医の宮里麻美子医師は、若年層に向けた啓発活動を続けている。
子宮頸がんは子宮の入口部分に発生するがんで、国内で年間約2,800人が命を落とす深刻な病気だ。若い世代に多いのが特徴で、年代別では20代から増加し、30代から40代で発症のピークを迎える。

沖縄県における女性のがん罹患率は高く、2021年から2023年にかけて毎年400人以上が新たに子宮頸がんと診断された。罹患率は全国平均の1.4倍に達し、都道府県別では全国2番目の高さとなっている。予防や早期発見につなげるため、宮里医師は教壇から語りかけた。

「子宮頸がんというのは、お年寄りの病気ではありません。若い女性に多いがんです」
誤解が生む早期発見の遅れ
子宮頸がんの主な原因は、性交渉によって感染するヒトパピローマウイルス(HPV)だ。性経験があれば誰もが感染する可能性がある一般的なウイルスだが、正しく理解されていない側面も大きい。予防意識の低さに対し、宮里医師は懸念を示す。
「性的な行為が多い女性が(がんに)なるとか、非常に間違った考え方をしている方が多い。『私には関係の無い病気だ』と思ってしまうのかなと」

病気の発症リスクを減らす手段として、感染を防ぐ「HPVワクチン」と、異常を早期発見する定期的ながん検診がある。HPVワクチンは原因ウイルスの感染をおよそ9割予防するとされ、日本では小学6年生から高校1年生の女子を対象に公費接種が行われている。また、2年に1度の検診受診が推奨されている。宮里医師は両者の組み合わせを強調する。

「子宮頸がんの予防は、両手で子宮を守るようなイメージでいてください。一次予防であるHPVワクチンと、二次予防である子宮頸がん検診の“両方”が大切です」
奪われた日常と「第二の患者」が抱えた葛藤
授業ではがんと闘った一人の女性の足跡が紹介された。大阪府の森田真子さんは2人の子どもを育てながら働いていたが、ステージIIIの子宮頸がんと診断され、今年亡くなった。多忙により5年間がん検診を受けておらず、発見時には病状が進行していた。生前、真子さんは悔しさを滲ませていた。

「死につながる、とても怖い病気だということを、全く知らなかった。性経験があれば80%の人がHPVウイルスに罹っている確率があると、私はがんになってから知った。もし知っていたら検診だってきっちり行っていたと思う」
夫の真一郎さんも当初は病気への知識がなく、戸惑いを隠せなかった。

「初めに聞いたときは、子宮頸がんという言葉も知らなくて…(がんだと)最初聞いたときは楽観的でした。手術で治るんだなと」
真子さんは子宮全摘出の手術を受けた翌年にがんが再発、余命宣告を受けた。日々の闘病を支える真一郎さん自身も大きな精神的負担に直面した。がん患者の家族は、時に「第二の患者」と呼ばれるほどの苦痛を抱える。真一郎さんは苦しい胸の内を明かしていた。

「彼女が『生きたい』ということに伴走したいという思いも強くあるんですけど。見ていて辛いですし、俺もつらい。どうしていいか分からなかった」
真子さんの生きる意志に寄り添い続けた経験から、真一郎さんは自分や大切な人を守るための行動を呼びかける。
「がんになることって、自分だけの問題ではない。自分自身の体をケアして、大事にしてほしい。ちゃんと検診を受けることで、私の妻のような苦しい生活をしてほしくない」
予防のための正しい知識を次の世代へ

森田夫妻が残した実体験とメッセージは、宮里医師の授業を通じて中学生たちへ届けられた。受講した生徒からは「子宮頸がんは誰でもなる病気ということを初めて知った」「もし将来、パートナーが病気になったとき、ちゃんとした知識を持って寄り添ってあげたい」といった声が上がった。

沖縄県では、がん検診後の精密検査を受ける割合が他県と比べて低いという課題もある。手遅れにならないためには、定期的な検診と確実な再検査の受診が不可欠となる。子宮頸がんに限らず、あらゆる病気において正しい知識を持つことが予防の第一歩だ。宮里医師は未来を担う世代へメッセージを送り続けている。

