「自分の夢を追うことはわがままなんだと自分を責める」——専門家がそう語るように、ヤングケアラーが最も多く口にする言葉は「しんどい」ではなく「罪悪感」だという。近年、社会問題として注目を集めるヤングケアラー問題。当事者として経験を持ち、いまは支援する側に立つ女性の声から、この問題の本質を探る。
18人にひとりが「世話をしている家族がいる」

ヤングケアラーとは、本来大人が担うはずの家族のケアや家事を日常的に行っている子ども・若者のことだ。病気や障害のある家族の世話・見守り、家計を支えるためのアルバイトなど、その負担は多岐にわたる。

2022年の富山県の調査では、中学2年生の18人にひとり、高校2年生では24人にひとりが「世話をしている家族がいる」と回答している。国はおととし、法改正でヤングケアラーへの支援を明記したが、当事者自身が自分の状況を認識できず、問題を抱え込んでいるケースが多いのが現状だ。
「当たり前だった」——気づけなかった自分の状況

富山県高岡市在住の西島咲帆さんは、3年前から県の「ヤングケアラーコーディネーター」として、市町村や関係機関と連携しながら支援の後押しをしている。西島さん自身もかつてヤングケアラーだった。

「小学校3〜4年生くらいから父が徐々に帰ってこなかったりして、母がちょっとずつしんどくなってきて」と西島さんは振り返る。母親が不安定なとき、「大丈夫だよ」「いなくならないで」と寄り添い続けた。これは「感情的なケア」「情緒的なケア」と呼ばれるものだ。

しかし当時、西島さんにはケアをしているという実感すらなかった。「“ケアをしている”という実感もない。当たり前だった。家族のことは家族でするのが普通だと思っていたので」。


転機は大学時代、恩師からの一言だった。「『あなたみたいな人をヤングケアラーという』と教えてくれて初めて知った。びっくりした。いやいや、っていう」。その後、同じような境遇の若者が集まる会に参加し、自分の経験を語ることで気持ちの整理がついていったという。
「お手伝い」との違いはどこにあるのか

8月、支援団体の関係者などを対象に県が開いた研修会では、立命館大学産業社会学部の斎藤真緒教授が「お手伝い」と「ケアラー」の違いについて解説した。
「ケアや家事があることによって、自分たちがやりたいことに時間やエネルギーが使えないということが起こっていないかどうか。大人の見守りがちゃんとあるか、セーフティネットが張られているかどうか」と斎藤教授は語る。

重い責任を負うことで、日常生活や進路、心身に影響が出る——それがヤングケアラーの実態だ。そして彼らが最も多く使う言葉が「罪悪感」であることも、斎藤教授は指摘する。「自分の夢を追うことはわがままなんだと自分を責める」のだという。
家族の問題ではなく、社会全体の問題
当事者が声をあげることの難しさも、西島さんはよく理解している。「家族にも悪い気持ちになる。家族が悪いわけじゃ全くないのに、家族のせいにされがちな社会的な風潮がある。それは違う。家族もすごくしんどい」。

西島さんが訴えるのは、ヤングケアラーは家族の問題ではなく、社会全体の問題だということだ。「『この人になら話しても大丈夫かな』と思える大人が近くにいる社会になってほしい」と西島さんは話す。誰かに話すことで気持ちが整理され、解決への糸口がつかめる——そんな仕組みを、子どもやその家族を孤立させないかたちで築くことが必要だと考えている。
子どもだけでなく、18歳からおおむね30代までの「若者ケアラー」の増加も懸念されている。高齢化に伴い、家族の在宅介護などで進学や就職をあきらめるケースは今後拡大し、長期的な貧困に陥る可能性も指摘されている。2030年には約318万人になるという推計もあり、実態把握と社会全体での支援の仕組みづくりが急務だ。
(富山テレビ放送)

