佐賀県のブランド牛「佐賀牛」。その肉用子牛が不足し仕入れ値が高騰する現状に苦しむ肥育農家は、店頭価格への影響を懸念しつつも「安く売らない。選んでもらえるブランド価値をつくる」ことが必要と訴える。
全国的に“肉用子牛”の価格が高騰
佐賀・多久市で開かれる肉用の子牛の競り。「佐賀牛」ブランドにふさわしい子牛を見定めようと月に一度、主に県内の畜産農家が集まるが、その現場にいま異変が起きている。

その異変とは子牛の価格だ。今年(2026年)7月までの佐賀県内の子牛の平均価格は去年より20万円ほど高い80万円台で推移。全国的にも同じ状況が続いている。

JAさが畜産センター 野中浩一 所長:
(肉用子牛の)価格は高止まりの状況が続いている。牛がいない状況をつくらないように無理してでも買っている人は買っている

高値となっている大きな原因が子牛の減少だ。この日の競りでは去年の同じ月より60頭ほど減ったという。
子牛の出荷頭数が減少
和牛の生産者は大きく「繁殖農家」と「肥育農家」に分かれる。

母牛に子牛を生ませて生後9カ月前後まで育てるのが「繁殖農家」。その子牛を競り落として2年近くかけて育て上げ、成牛を出荷するのが「肥育農家」。

佐賀県内では2万頭を超える成牛が「佐賀牛」などとして出荷される一方、子牛の出荷頭数は6000頭足らずとなっている。
肉用子牛の減少 背景、原因は?
子牛が減少している原因は少々複雑だ。

物価高騰による節約志向やコロナ禍による飲食店の休業・廃業が相次ぎ牛肉の需要が低迷。
このため「肥育農家」の子牛の購買意欲が減退し、2023年には全国的に子牛価格が下落した。
ロシアのウクライナ侵攻などによる飼料価格の上昇も「繁殖農家」の経営を圧迫し、廃業や事業縮小が増えたという。
「価格が高くて1頭も買えなかった」
「佐賀牛」の生産者で、唐津市で牧場を営む肥育農家の宮崎陽輔さん。毎月、県内外の市場で40頭ほどの子牛を買い付けている。

肥育農家 宮崎陽輔さん:
(佐賀は)もともと子牛はすごく少なくて取り合いなんですよね、肥育農家の中で

この日の競りでは、あまりの高値に宮崎さんは手が出なかったという。

肥育農家 宮崎陽輔さん:
(1頭も)買えなかった。ちょっと高いなと思って。子牛が足りていない人たちが大変な思いしながら買っているんじゃないかな

宮崎さんは子牛を仕入れるために県外にも足を運んでいる。
肥育農家 宮崎陽輔さん:
おとといまで(仕入れで)奄美に行っていました。どこでも頭数が減ってますね。減りつつあるじゃなくて減っている
店頭の「佐賀牛」価格への影響を懸念
県外の市場で必要な頭数を確保できたとしても、仕入れ値がかさむ現状に宮崎さんはプレッシャーを感じている。

肥育農家 宮崎陽輔さん:
私たちの佐賀牛が評価されるように売っていかないと

店に並ぶ「佐賀牛」への影響は、今はまだほとんどないものの、JAさが畜産センターの野中浩一所長は「一般消費者には高値で購入できない価格帯で販売するしかない状況がいずれ来るんじゃないか」と今後の懸念を口にする。

肥育農家を苦しめているのは子牛価格だけではない。餌代の高騰に加え猛暑対策も経営を圧迫している。
「安く売らない…ブランド価値を」
宮崎さんは経営面の難しさを口にする。
肥育農家 宮崎陽輔さん:
安く売ると消費者の人はもっと食べてくれると思う。でも安く売ってしまうと(採算が)合わない
2年ほど前、子牛は今よりも30万円ほど安値で取り引きされていて、それが子牛不足に影響しているという。安く売ると採算が合わないのは子牛の繁殖農家も同じだと宮崎さんは現状を分析する。

肥育農家 宮崎陽輔さん:
生産農家(繁殖農家)が(採算が)合わなくって辞めてしまい、頭数減って(価格が上がった)のが今なので、(肥育農家が)子牛を安く買いすぎてもだめだと分かっているんですよ

宮崎さんは、40年以上続くブランドを守り、その価値をさらに高めようと決意を新たにしている。

肥育農家 宮崎陽輔さん:
私たちももう安く売らない。選んでもらえる価値をつくっていくのがこの先必要。20カ月も育てて赤字だなんてやっていられない

県内で子牛を育てる繁殖農家が5年間で約2割減少。
JAからつは県の支援を受け、佐賀産の子牛の新たな生産拠点を設立し、育てた子牛を競りに出すほか、繁殖農家の担い手確保に向けて研修生の受け入れも目指しているという。

