福島県いわき市出身の弁護士・諸橋仁智(もろはしよしとも)さんは、各地で講演活動を続けている。自身が歩んだ“どん底からの再出発”を語ることで、同じように悩む人に「人生はやり直せる」と伝えたいからだ。
父の死で狂い始めた歯車
「元々ヤクザの経歴があって、そこから一念発起して弁護士になったという経歴です」
諸橋さんはそう語り、自身の過去を隠さない。
勉強だけはよくできる子どもだったという。
しかし中学生のときに父を亡くし、人生の景色が“白黒に見える”ほどの喪失感に襲われた。

東京大学を目指すほどの秀才だったが、浪人生活の中で夜遊びが増え、覚せい剤に手を出し、母とも絶縁。
孤独の中で出会った雀荘の“アニキ”に居場所を感じ、ヤクザの世界へ踏み込んだ。
“シャブ漬け”の8年、そして逮捕
ヤミ金の取り立て、覚せい剤の密売…。そんな生活が8年続き、心身は限界に達していた。
薬物の影響で渋谷のスクランブル交差点で交通整理をしているところを保護され、強制入院。その後逮捕され、留置場で初めて「ホッとした」と感じたという。

留置場で出会った一冊の本。極道から弁護士になった女性の物語が、諸橋さんの人生を変えた。
「どん底からでも頑張り次第で可能性あるじゃんと感じたんです」
2005年12月、懲役1年6か月・執行猶予3年の判決。
裁判官から「君ならできると思いますよ。頑張ってください」と声をかけられたことが、再出発の背中を押した。
母を喜ばせたい 猛勉強の日々
「よし、やろう」
帰りの車窓を見ながら、初めて“逃げずに向き合う”決意が生まれた。
翌年には宅建、その後司法書士試験にも合格。「母を喜ばせたい」という思いが強いモチベーションになったという。

司法試験の合格発表では、貼り出された一覧に近づき、自分の番号を見つけた瞬間の高揚を「一生忘れられない」と振り返る。
判決から7年、ついに弁護士となった。
弁護士としての現在
3年前、浅草に法律事務所を構えた。
かつて自分が逮捕された警察署に、弁護士として面会に訪れたとき「弁護士になったんだな」と実感したという。

現在は刑事事件を中心に、裁判後の生活まで見据えた支援を重視している。
「裁判で終わりじゃなくて、そのあとも見据えてアドバイスしたい。出所後も手紙をやり取りしたり、お祝いをしたり。他の先生はやらないけど、僕はやってあげたい」
“居場所”をつくること
講演会では、つながりの大切さを繰り返し語る。
「良いつながりができて縁を持つことが、人生で幸せだと思えるもの。ここが自分の居場所だと思えることが重要なんです」
自身が居場所を求めて迷い続けた過去があるからこそ、今は誰かの居場所になりたいと願う。

「発信することで、当時の僕みたいに“やり直せるんだ”と思ってくれる人がいたら一番うれしい」
刑務所で講演することが目標だと笑う諸橋さん。人生の底を見たからこそ、確信している。
「失敗しても、絶対にやり直せる」
(福島テレビ)
